ウルフパッカー

コーポレートガバナンスとアクティビズム。投資銀行でM&Aに従事

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最近の記事

株主提案権とは何か

 2014年のスチュワードシップコード制定以降、株主提案の数が激増している。2014年においては25社しか株主提案を受けていなかったが、23年には90社まで増え、株主提案の数も149件から344件まで急速に増えている。 株主提案権の概要 株主提案権は、株主が一定の事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る)を株主総会の目的(議題)とすることを請求する権利(議題提案権)、議題につき株主が提出しようとする議案の要領を招集通知に記載または記録することを請求する権利(議

    • 株主代表訴訟(shareholder derivative suit)とは何か

       ストラテジック・キャピタルは2016年にJDLに対して賠償総額約3.5億円の株主代表訴訟を起こした。これまでの日本では、株主代表訴訟はオリンパス事件や東芝の不適切会計事件など、役員が不正を起こしたときに実施されてきたが、アクティビストが株主代表訴訟を起こすケースは実は多くはない。他方で、社外取締役が形骸化しつつある日本において、株主が社外取締役を訴えるケースは今後増えてくるだろう。  なお、ストラテジックキャピタルによるJDLへの代表訴訟については、JDLはその後MBOする

      • ダルトン・インベストメンツとは何者か

         2024年9月17日、ベインキャピタルはトランコムに対してMBOを仕掛けた。このトランコムに対してアクティビズム攻勢を仕掛けていたのがダルトンである。ダルトングループは18.%の株式を保有する主要株主であり、本MBO後も株主として残る(以下図)  このダルトンとは何者なのだろうか。ロサンゼルスに本拠を置くダルトン・インベストメンツは1999年に創業された。ダルトンは2000年半ばの第一次アクティビストブームの際にスティールパートナーズなどとともにアグレッシブな株式提案をし

        • 役員株式報酬と指名・報酬委員会

          1.役員株式報酬の概要 会社と株主には構造的な利害関係(いわゆるエージェンシー問題)が生じているが、会社の業務執行に携わる経営陣の報酬を株価や業績に連動させ、企業価値の最大化という株主の利益と一致させることにより、エージェンシー費用を削減することができる。このような背景から、日本でも自社株を用いた報酬制度を導入する動きが加速している。  株式報酬には主に以下のような種類がある。 (A)ストックオプション  役員はY0時点でストックオプションを受け取る。Y3時点でオプションを

        株主提案権とは何か

          取締役の役割と社外取締役の形骸化について

          1.取締役会の役割 取締役会の権限については、会社法にて以下のように規定されている。 (取締役会の権限等) 第三百六十二条 取締役会は、すべての取締役で組織する。 2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。 一 取締役会設置会社の業務執行の決定 二 取締役の職務の執行の監督 三 代表取締役の選定及び解職  代表取締役の選任は置いておくと、取締役会の役割としては主に、『意思決定機能』と『監督・助言機能』という2つがあることになる。どちらに重点を置くかは会社によって異なるが、前者

          取締役の役割と社外取締役の形骸化について

          日本のコーポレートガバナンスとアクティビズム

          1. 戦後日本企業のコーポレートガバナンス 日本のコーポレートガバナンスは長らく欧米と比べても相当遅れてきた。「従業員重視」「護送船団方式」「株式の持ち合い」が戦後日本企業の特徴であり、株主軽視の経営が行われてきたといえる。機関投資家の多くも投資先企業に対して『サイレント・パートナー』(物言わぬ株主)の関係であり、「投資先企業の経営に関して不満があれば、その企業の株式を売却することで不満は解消される」といういわゆる『ウォールストリートルール』が形成され、アクティビストが参入で

          日本のコーポレートガバナンスとアクティビズム