初学者が学習にAIを活用するときに気をつけること
TL;DR
今やAIの時代で、さまざまな方面に活用されています。当然、IT関係でも活用され、学習にも有効。ただ、学習者がどこまで理解しているかは把握していないので注意が必要という話。
研修講師から一言、それまだやってないから
背景
前職を辞めたのち、縁あってIT関連企業の新卒・中途向けのプログラミング研修の講師の案件を何回か請けました。
で、今年の研修ではテキストなどを学習したChatGPTベースのAIチャットが導入され、受講者が自由に利用できるようになっていました。
講師側はそのやりとりを確認できるようになっており、自分はサブ講師ながらどういう質問がされて、それに対してAIがどう回答しているかを一通り目を通しました。
他の講師の方がどうしていたかは知りませんが、これはこれで受講者の理解程度を把握する材料になるので確認していたのですが…。
AIは全てを知っているが、受講者の理解度は知らない(あたりまえ)
講師として受講者に接する場合、自分が気をつけているのは以下です。
相手がどの程度理解しているか反応を伺う(顔色や声の調子など)
一度に多くを言わない(と言いつつ、つい言ってしまうが)
(サブの場合)メイン講師がどこまでをどう説明しているか
1点目は、質問してきた受講者もわかったつもりだったり、あるいはどこがわからないのかがわからないなんてこともあるので、相手の自己申告を参考にしつつ、実際にどこまで理解、把握しているかを探っていきます。
2点目は相手の性格、経験、スキル、理解度によります。ただ、あまりに一度に多くのことをインプットしても一杯一杯になったりするので、相手によっては段階を踏んでヒントを出していきます。
3点目は当然、まだ話してないことについて先走ったり、あるいはセカンドオピニオンを求められているわけでもないのにメインの講師と違う説明をしてしまうと受講者が混乱してしまうので避ける必要があります。
で、AIはこれらを一切考慮してくれません。まあ、1点目と3点目は現時点の技術では厳しいですけど。2001年宇宙の旅みたいにAIが読唇術まで使うような時代になれば別かもしれません。
AI回答のイマイチな点
以上は講師視点で考えた問題ですが、実際のAI回答を見ていて感じた問題点は以下です。
研修はテキストが決まっているが、講師によって教え方は異なる。
その辺の情報はAIにはわからないので、講師とは違う教え方をする。講師にはまずAをやって、Bをしてから、Cをするみたいな段取りがある
しかし、AIは知っていることをすべてまとめて出してくる。現時点では説明していなかったり、わかりにくいのであえて説明していない内容も回答に入っていることがある。
もちろん、いわゆるハルシネーションの問題もある。
AI活用学習の利点と欠点
大前提だが、別にAIを学習に使うべきではない、とか言うつもりはあありません。
ただ、AI活用にも利点と欠点があると言う当たり前の話です。
AI活用の利点
この前やってた研修ではAIチャットの稼働時間が決まっていたので24h265dというわけにはいきませんが、AIは疲れることもなくこちらの質問に答え続けてくれます。
また、ハルシネーションの問題があるとは言え、基本的には十分な知識があり、必要なことを教えてくれるでしょう。
この辺は人間の講師ではなかなか難しい部分もあります。先日の研修では2人のメイン、サブ講師で50人からの受講者の対応をしてましたから。それもあって、AIチャットが導入されたという側面もあります。
AI活用の欠点
人間の講師でもその人による面がありますが、一般的には受講者の理解度を会話から引き出して様子を探りつつ、相手に応じた回答をします。
また、現状のAIは一連のやり取りの情報を継続的に保持しているわけではないので、前に出てきたことを忘れたりします。
ま、人間でも忘れることはありますが、例えば、3ヶ月の研修の間の情報の蓄積を元に回答したり、あるいは去年の同じ研修ではこうだったなみたいな蓄積もあります。
これを防ぐためにはプロンプトを工夫するなりして、対話的なやりとりにするか、ポイントを絞って質問するかとなります。が、自分のわからないところがわからないという受講者も割と多く、そういう方にはちょっと難しいかと思います。
この辺を解決するには、AIチャット内でAIに問い合わせを投げる前に必要に応じて情報を追加したり、内容を加工したりする必要があるのではないかと思います。
まとめ
漠然とした質問はしない
なんにせよ、質問内容はポイントを絞り、前提を明確にした方がよいです。そうでないと、裏でなんらかの調整をしていない限りはAIは網羅的な回答をしがちです。間違ってはいないが、質問者がわかっていることもわかっていないことも気にせず、まとめ的な模範回答を返すと思ってください。
それを避けるには前提や理解している点、理解不足な点を明確にする必要があります。が、初学者にとってはなかなか難しい点もあります。
ですので、例えば学習内容で疑問に感じた点を自分はこう思うがどうだ?という訊き方をした方が良いように感じます。
そうしないととりとめのない答えが返ってきがち。
AIはどんなに同じ質問を繰り返しても怒ったりはしないので、質問力を鍛えるのに使うのがよいかと思います。
実際、AIを活用している人の多くは成果物をAIでつくるというだけでなく、いわゆる「壁打ち」を推奨しているかと思います。
補足:活用実績
あくまである1クラスの事例ですが、50人程度の受講者の内、一度でもAIチャットを利用したのが半数程度。その中でも、ヘビーに使っていたのは5人程度だったでしょうか。
拙い記事でございますが、サポートしてもよいよという方はよろしくお願いします。著者のやる気アップにつながります。