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RPAは銀の弾丸ではない

一部で盛り上がっているRPA(Robotic Process Automation)。1年以上かかわってきて感じたことを簡単にまとめてみます。一言でいえば、それなりの労力と気合を入れれば有効活用もできなくはないですが、生半可な努力では中途半端に終わります。

RPAとは

すごく大雑把に言えば、人間がパソコンで作業していることを、ロボットにやらせようというものです。ここでいうロボットはドラえもんとか先行者とか鉄腕アトムとかペッパー君みたいなものではなく、パソコンの中で動くアプリケーションです。
つまり、パソコンのアプリケーションで別のアプリケーションを決められた手順で動かすものです。特定の業務に特化したものと、汎用的なものの2種が存在しています。

つくるのは簡単、つくるだけならね

アプリケーションを操作する手順はツールによっていろいろな呼び方がありますが、ここではRPAのプログラムと呼びます。プログラムを作るのは、これまたツールによって違いはありますが、一般的なプログラミングの知識があれば可能です。Excelのマクロとか昔ならBASICとか、その程度のものです。あるいは、まったく同じことを常に行うだけの簡単なものであれば、プログラミング経験や知識がなくても、人間の操作を記録することでプログラムを作ることもできます。
ですので、つくるのは簡単といえば簡単です。ツールの営業さんも、だいたい「経験なしでも簡単にできる」とか言うことでしょう。
最低限の動くだけのものならね。
ちょっとした作業を反復してこなすだけで、使い捨てするのであれば、それで十分でしょう。しかし、それをある程度汎用的に使えるように作りこむとすれば、それなりに経験や知識が必要です。効率的にプログラムを作成するには、さらに経験や知識が必要になるでしょう。ツールの値段はそれなりにしますので、その元を取るためにたくさんのプログラムを作るとすれば、それなりに手間暇がかかります。

作って終わりではない

単に手間暇がかかるだけであれば、それは甘受すべきものかもしれません。しかし、RPAのプログラムを手間暇かけて作って、それで終わりではありません。そのプログラムで操作するアプリケーションとか、Web等のシステムは、頻度は別として変わっていきます。もう完全にメンテもされてないような古いシステムであれば別ですが、いろいろどこかしら変わるでしょう。
そうなったら、RPAのプログラムも手直しが必要です。
以前、実際にあった話ですが、急にプログラムが動かなくなったので調べてみたものの、何が変わったのかさっぱりわかりません。Webで動くシステムでしたが、別に画面の中身が変わったわけでもありません。でも、エラーになるのでよくよく見てみると、ブラウザのタイトル表示の内容が「ABC-DEF」から「ABC-DEF」に変わったのです。これ、フォントによってはさっぱりわかりません。
それだけではなく、例えば画面上のボタンの名称が変わったとか、あるいはツールによっては色が変わったとかで、すぐに動かなくなります。
もちろん、知識と経験があれば、多少の変更があっても問題ないように作りこみことは可能です。手間暇かければ、ね。でも、いつかはその許容量を超える変化に耐えきれずに、手を入れざる得なくなります。

それでも動かない、時もある

まあ、そこも覚悟して手間暇かけ、予期せぬ変更に備える人材も確保したとしましょう。その手間暇かけて、万全の対策を施したはずのプログラムが、やっぱりうまく動かない時があります。ある意味、根本的な問題です。
人間はマウスやキーボードを操作したりするのですが、RPAツールは物理的なものではないので、あたかもキーボードやマウスを操作したかのようにパソコンの内部で動いています。が、それがまれにうまく動かない、ということがよくあります。まれによくあるというと矛盾を感じますが、実際問題として、まれなのによくあるのです。
そういうところまで対処しだすと、もう手間暇は無限大です。動くだけのプログラムが10行でできるとして、今まで書いたようなあれこれにたいおうしだすと、2倍、3倍、10倍とどんどん膨らんでいきます。
また、人間だったら今日はちょっとアプリケーションが遅いなとかいう場合も柔軟に対応できますが、ロボットは石頭ですから、そう柔軟にはいきません。ちょっとしたことで止まります。

効果を出すためには

最近、とあるコンサルの方の講演を聴きました(もちろんWebで)。RPAで効果を出すためには、経営トップでバリバリ推進する人がいて、それなりの組織をつくってやる必要があると言ってました。自分もそう思います。そんな体制を用意できますか?用意できずに中途半端に取り組んでも効果なんて出ませんし、かってのExcelマクロやAccessデータベースの二の舞です。
間に対人間用のUIを挟んだ状態で思ったように動かそうとしても、どうしても無理があります。
もう手を入れることもできないアプリケーションやシステムを操作するといった限定的な活用はあり得ると思います。でも、皆が今の形のRPAをつかって効果を出すというのは無理だと思います。
では、どうするか。やはりAPI、REST、マイクロサービスといったところを活用するのが正しいと考えます。人間向けUIを介するから不安定になるのですから、初めから機械向けのMI(Machine Interface)を介すれば問題ありません。そうでなければ、どこまでも手間と世話のかかるものになるでしょう。

まとめ

・RPAでなんでも解決できるわけではない
・RPAは簡単だが、効果的に活用するには知識も経験も気合も覚悟も必要
・導入は終わりではなく始まり、どこまでも手間がかかり続ける
・UIとUIをつなぐのは限界がある

拙い記事でございますが、サポートしてもよいよという方はよろしくお願いします。著者のやる気アップにつながります。