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経営者はローコードの夢を見るか?

奢れる物も久しからず。ただ春の夜の夢の如し。

見果てぬ自動化の夢

noteのエンジニアリング系記事のまとめでNoCodeの話が出てました。
いや、昔から好きですよね、自動化。背景としては技術者不足の問題が昔からあり、それを手っ取り早く解決する術として、昔から色んな技術が生まれては消えていきました。ExcelやAccessといったもののマクロ、簡易言語、JavaScriptやVBScript、あるいはPerl、Ruby、Pythonといったスクリプト言語といった一般的なプログラミング言語よりも敷居を下げたもの、VisualBasic、Delphi、PowerBuilder、Oracle Developper等々のRADツールから、MDAなんていうモデルを作るとコードが出てくるとか、デザインパターンとかDIとかプログラミングのパターンをまとめてプログラミングの手間を省く考え方や手法やツールから、最近はRPAとかNoCode、Low-Codeとか。
そんなわけで、Googleトレンドで日本のローコード、NoCode、RPAのトレンドを調べてみました。

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Googleトレンド(ローコード、NoCode、RPA)

カタカナと英単語が混ざってますが、なぜかLow Codeとノーコードはあまり出てこないようなので削ってあります。と言っても、RPAに比べるとローコードもNoCodeも大差ないです。
この文章ではカタカナ表記に統一しておきます。

ノーコードとは

Google先生に聞いてみると以下のページが最初に出てきたので、そちらをみてください。
ノーコード(NoCode)開発とは?特徴とおすすめの開発ツール
簡単に抜粋すると、以下のようになっています。

ノーコードとは、ソースコードの記述をせずにWebサービスやアプリなどのソフトウェアを開発できるサービスを指します。

注目される理由として以下が挙げられていますが、まあ、皆さんの期待はこんなところかと思います。

・非エンジニアでもWebサービス開発が可能であること
・エンジニアに依頼する費用・時間のコスト削減
・急を要する場面での開発やアップデートが容易
・さまざまなサービスや業務のオンライン化

多くの従来型日本企業は技術者が育つと技術の仕事から外して管理の仕事をさせた上で挫折させ、お払い箱にするため技術者が育ちません。なので慢性的に技術者が不足する状況が30年近く続いている上に、少子高齢化で若者が少なくなっているのがさらに不足に拍車をかけています。伝統工芸や製造業の職人が減っているのと根は同じですね。従来型日本企業というか、日本社会は技術立国、技術が大事とか口ばかりで技術者を蔑みますし、口では感謝とか言いつつ平気で医療従事者やエッセンシャルワーカーを差別する文化ですから昔から全く改善されません。

そんなわけで、最近流行りのRPAとかノーコードとかは「誰でも簡単に作ることができる」というのが売りになっています。要は技術は大事、技術者は大事、技術者を育てようとか言いつつ、では時間をかけて育てようという発想にはならず、手っ取り早く誰でもできるツールを使って、現場で作れば技術者なんか要らんよね、というのがRPAとかノーコードに対する経営層の思惑です。

少しだけ経営層を擁護しておきます。日本でも終身雇用とか年功序列とか、経営側の思惑もあって崩れつつあるものの、まだまだそれにしがみついている中年層が多く残っています。今度のコロナ禍でこの辺りまた変わってくるかもしれませんが、今回の話から逸れるので置いておきます。人員の流動性もまだまだですので、不足しているから増やそう、余ったので減らそうとはいかないので、なかなか人を増やせないのが現実です。俄然、既存の人材を活用しよう、技術者が不足しているなら余裕のある非技術者を連れてこよう、という発想になるのは仕方ないです。

「誰でも簡単」はうそ

で、誰でも簡単に作れますという売り文句の各種ツールを使ってみると、それはうそだと分かります。

いや、確かに簡単に作れるようなものは簡単に作れます。でも、そこまでです。上に書いたまとめ記事で紹介されていた記事にもありましたが、現実の建築物で2階建てで作ったものを30階建てにしようなんてことはあまりないですが、ことシステムなんてものは最初に作った2階建てをあっち直してこっち直して、なんとか30階建てにしようとするものです。もっとも、現実でもモジュール交換できるビルなんてものが存在しますが、あまりにコストがかかるので交換したことがないなんて話もあります。

閑話休題。過去にも簡単にできるというツールは山ほどあり、そこに幾万の屍とガラクタが積み上げられてきた歴史があります。なので、ノーコードやローコードだけがうまくいくわけがないし、RPAも同じです。それはなぜか。

まとめ記事に紹介されていたnote記事にもありましたが、簡単だと言っても結局、それなりに使えるものを作るにはそれなりのスキルが要ります。プログラミング的な知識というか、結局は物事を整理・分解し、再構築するスキルが。そういう意味では、必ずしもプログラミングスキルが必要なわけではなく、大事なのは論理的な思考力です。自分もそれなりの数の技術者を見てきましたが、それができる人は所謂IT技術者でも少ないです。まあ、自分の狭い世界の話なので、世の中にはできる人がたくさん居るとは思います。

ノーコードは入口に過ぎない

ここまで貶しているようなものなので、ノーコード不要論者かと思われているかもしれませんが、所詮はノーコードもRPAもツールに過ぎないので、使い方の問題です。

最初からどこまでできるか理解した上でできる範囲だけ使う、必要なら別のツールで作り直すくらいの割り切りができるならば十分です。やりたいことのプロトタイプとして使うのもよし、数あるプログラミング言語の入門にするもよし。要はゴールではないということです。

この業界、「○○は銀の弾丸ではない」というフレーズが頻発しますが、要はどんなスキルも言語もデザインパターンも道具にすぎないので、その使い方なんて必要に応じて覚えればよく、大事なのはプログラミング的な考え方や、論理的な思考です。どんなに良さそうなものでも、一長一短あるので、これだけ覚えれば全てOKなんてものはないので、なんでも使えるものは使う、必要なら覚える、必要ないものは使わない、というのが鉄則。だから銀の弾丸はないのです。

幻滅期を超えたものだけがホンモノになる

RPAは幻滅期に入ったと言われて2019年秋。所謂テクノロジーの「ハイプ・サイクル」です。大雑把にいうと、テクノロジーは盛り上がると過度な期待を持たれた後、現実の前に急激に関心が失われ、その後、安定するというもので、黎明期、流行期、幻滅期、回復期、安定期に分けられます。もちろん、黎明期のまま消えたりとか、幻滅されたまま終わったりとかするものもたくさんありますし、そもそも黎明期にすら入らないものもあるでしょう。

RPAも幻滅期に入ったと言われて1年半。誰でも簡単に使えるという売り文句に釣られた経営層も、現実にぶち当たって幻滅している頃です。簡単に作れる範囲のものは簡単ですが、ちょっとシステムが変わったり、不安定な動作をなんとかしようとすればそれに伴いかかるコスト、リソースは急激に増えていくので、こんなはずではなかった…ということになります。

ここで使えないとなればそれで終わりですし、もうちょっと頑張って技術者を育てたり、あるいは本格的なシステム構築に舵を切ったりすることで効果を上げることができることもあります。

そんな中、ツールベンダも単に簡単にできます、という方向から方針転換を始めています。日本企業はまだなんとか簡単です路線で行きたいようですが、グローバルなベンダはもうそういう方向はやめ始めてますし、RPAという言葉をやめた会社もあります。

ノーコードやローコードも同じように進んでいくと思います。

拙い記事でございますが、サポートしてもよいよという方はよろしくお願いします。著者のやる気アップにつながります。