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日曜大工

結婚して家を建てた。ちょっとした棚は自分で作るようになった。子供のオモチャ箱や絵本の本棚。色々作るうちに大工道具も少しずつ増えていった。本格的なモノではなく、自分が使いこなせる小ぶりの道具を選んでいる。出来上がる作品よりも、作っていく過程のほうが楽しみだ。

離婚した。壁に貼り付いている棚、スペースに合わせて作った棚、大きくて自分で運べないモノは置いてきた。道具はあるので、また作ればいい。作るのが好きなんだから、チャンスが増えたと思えばいい。


冬の間は、毎年引きこもっている。仕事もしないで何をしているかというと、もっぱら家のかたづけと修繕。大したことはできないが、手すりをつけたり、スベりの悪いふすまを削ったり。実家に戻ったので、年老いた両親のためにね!……とカッコつけたいところだが、実は一番多いのはこれである。↓

わたしが連れて来たばっかりに……の傷。板を張ったり、ふすまを張り替えたり。↓

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あ、拡大して見ないで!ここは上から貼って、ごまかした場所だった。

あと、部屋のドアにこんなのつけたり。↓

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あら、行っちゃうの?


ここから先は昨シーズンの話。

実家に戻って荷物を片づけていくうちに、いくつかのカゴが不要になった。娘の部屋からも出てきて大小7個。まだまだ使えるし、捨てるのはもったいない。

ひらめいたのは、トイレの棚。壁に作り付けの物入れがあるが、芳香剤の買い置きや洗剤ぐらいしか入らない。母はタオルの替えを大量に置きたいらしく、どう見ても洗濯機の隣に置かれるはずの青いプラスチックのラックに、異様なほど似合わないレースを巻き付けて入れていた。こいつを何とかしたい。

言い方を間違えると母の機嫌が悪くなる。しかも「作ってやる」などと上から言ってはいけない。絶対に「いらない」と言われるはず。あー、めんどくさい。でも作りたい。

「余っているカゴが7個あるので、きっちり収まる棚を作ります。つきましてはトイレに置かせて頂いて、タオルの替えを入れてはいかがでしょうか」というようなことを申し上げた。日本語がおかしい。母は「そう。あら、そのカゴいいね。1個ちょうだい」と言い、棚の高さがひとつ分低くなった。


さぁてと。がぜん楽しくなる。わたしはこういう限られたスペースに、入る物が決まっているモノを作るのが好き。なるべく安く、材料をムダにしないで、しかも手間まで省きたい。パズルを解くように考えるのがおもしろい。

カゴは取っ手をはずして横向きに使おう。冬はパネルヒーターを隣に置くので、カゴの幅+余裕だと板の厚さは1㎝ちょっとでギリギリ。カゴの短い辺がそのまま奥行きだな。壁につけて置くから後ろの板はいらないね。ひとりでゴニョゴニョ言いながら寸法を計ってメモする。あとは作りながら考えよう。

ホームセンターに板を買いに行く。幅と厚さは決まっている。あとは長さと枚数だが、財布と車が口を挟む。長いほうがムダがないけど車に入るかが問題。暗算しながら、独り言を言いながら、売り場を何度もウロウロしてようやく決まった。

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桐の集成材、3枚。財布に優しい。「軽くて加工がしやすい」とお墨付きである。


娘が休みの日曜日まで待った。「あんたも使うんだから、一緒に作ろう」と言うと「べつに入れるモノないから任せるよ」だって。あっそう。

カゴが6個になったので棚板は7枚。カゴ全部の高さの合計と、板の厚さ7枚分と、指の入るスペース6つ分を足したのが側板の長さになる。が、この時点でその寸法を把握していない。こんな作り方をする人はいないだろう。設計図を先に描いてしまうと、途端につまらなくなる。

2枚が側板になるが、それぞれから棚板2枚ずつは取れるはずだ。それを切ってから考えよう。わたしはノコギリが一番好き。そのために作っているようなものだ。外は吹雪。トイレの前を作業場とする。「じゃま」って言うなー!

切るのを失敗するわけにはいかない。財布に「これ以上はムリ」と言われている。左右対称のはずが同じものを2つ作ったりしちゃうので、気を抜けない。時々なぜそんなミスをするのか、自分を信じられない時がある。

側板用から2枚ずつ、もう1枚の板から残り3枚の棚板を切り出す。長さが微妙に違うような気がするのは気のせいだ。側板2枚はピッタリ同じ。ほら上手い。

側板の上にカゴを倒してくっつけて並べてみる。棚板7枚もまとめて置く。残りの長さを計って6等分すればカゴの上のスペース分になる。こういうアナログな作業が好きなのだ。ちょっとスペース大きいかな?でもなるべくムダを出したくない。切らなくてもいいや。

印をつけてボンドで仮止めし、ビスを打つ。桐は柔らかいので下穴も不要。集成材でも木目がキレイで、いい匂い。ペンキもいらない。はい完成!

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あまった板は階段上の棚になった。完璧!

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わたしがいつも大切にしているのは「楽しむ」ということだ。モノひとつ作るにしても、過程を楽しみたい。作って楽しくないモノは、使う時だって楽しくない。たった一度の自分の人生、気づくのが遅かったけど、今からでも、少しでも楽しく生きていこうと思う。

トイレの棚を作ってから1年が過ぎた。下2つの大きなカゴにはトイレマットが1枚ずつ入っている。床に敷いてないけどいいのか?あとのカゴは、お掃除シート以外は全てタオルが入れられた。タオルこんなにどうするの。そして見つけてしまった。レース…。

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いつか上に掛ける気だな。そうはさせないぞ。


そうそう、作った時、娘に褒めてほしくて出来上がりを見せた。「へー。いいんでしょ」えー、それだけ?

今まで言ってなかったけど、わたしの娘、大工です。平日大工なので日曜大工は手伝ってくれません。



仕事が始まるまで、あと少し。家の修繕も、もうそろそろ終わりです。




あーっ!

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