見出し画像

生命の在り処

今から20年近く前でしょうか。
フジテレビで「笑う犬の冒険」というコント番組が放送されていました。私はその中の「テリーとドリー」というコントが好きでした。
それは「生きてるって何だろ?生きてるってなぁに?」という歌に乗せてネプチューン堀内健が原田泰造に熱湯をブっかけたりして痛めつけ、「生きている」ことを実感させるというものでした。

学生時代に微生物学を専攻していた私は、このコントの如く「生きているとは何か」について考える環境にありました。コントと少し異なっていたのは、その問いかけの対象が自分自身ではなく自然界に向いていたという点です。

例えば「ウイルスは生きているか」という問い。

新型コロナウイルスについて意識しない日はもはやありませんが、この問いかけに対する答えを明示するのは簡単ではありません。
細菌と異なり細胞を持たずあらゆる代謝を行わない。宿主の力がないと自己増殖出来ない。そんなタンパク質の構造物は「生きている」と言えるのか否か。

分子生物学者である福岡伸一氏の言葉を借りますが、「生命体を構築する要素が絶えず入れ替わり続ける、動的な平衡状態こそが生きているということ」であると私も思っています。※詳しくは福岡伸一著「動的平衡」参照

そのような立場に立つとすれば、自発的に自身の構成要素を循環出来ないウイルスは生物とは言えません。私もどちらかと言うとウイルスは生物ではないと思っています。
ですがこの答えが絶対的なものとも思いません。
「いやいや固有の遺伝子を持っていて、宿主が必要とは言え増殖するんだから生物と言えるだろう」という意見も有って然るべきだと思います。

新型コロナウイルスによって様々な価値観のパラダイムシフトが起きつつあるご時世ですが、ウイルスがある意味身近になった今だからこそ、20年前にコント番組で発せられた「生きてるってなぁに?」の答えを考えてみる良い機会ではないでしょうか?

よろしければサポートの程お願い致します。頂いたサポートは記事執筆の糧として使用させて頂きます。