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足先から鍛えるバランス

 バランスをとるために必要な体の部位はどこだろうか?
 膝?腹筋?背筋?体幹?股関節?そう、それらもバランスをとるうえで重要な部位だ。でももっと下。もーっと下の足に着目してほしい。足の先には、「指」がついている。バランスを鍛えようとしたとき最初に目を向けるべきは「足の指」だと思う。

 この指だけど今私が「ウエイトリフティングで最も重要な部位は?」と聞かれれば「足の指」と答えるくらいに注目している箇所。外からは見えない靴の中で、どの体の部位よりも精密にうごめく指こそバランスのための第一歩だ。

そもそも足の指、動かせる?

 そんな大切な足の指だが自在に動かせる人はどれだけいるか?大人も子どもも関係なくグッパグッパと閉じたり開いたり、指の間でものを挟んで持ち上げたりできるのか?やってみると意外とできない人はいるはず。
 ウエリフ教室に通う小学生にやってもらったところ、1人はスラスラできたがもう1人は親指だけしかうまく動かせない様子だった。
 足の指が全く使えない子は全国的にもたくさんいるらしい(ちゃんとしたデータで見たことはないが)。使えないということは普段から使っていないということ。しかしできなくても日常生活に影響はないので特に矯正させることでもない。実際に裸足で動く機会がどれだけあるだろうか。ほとんどの人は家の中くらいでしか裸足にならないと思う。

 ウエリフ以外のスポーツでも足の指はバランスの要として考えられることが多い。しかしそれを指摘できる指導者がまだまだ少ないのが現実だ。靴の中で指がどう動いているかまで目を向けるのはなかなか難しいことだ。

体操経験者の強さ

 「体操競技経験者は強い」とウエリフ関係者なら聞いたことあるだろうか。実際に経験者が実績も残してるので事実であると言えるでしょう。しかしこう考えたことはないか?「なぜ体操競技経験者はは強いんだ?」。高度な身体操作、柔軟性、どれもウエリフに必要な要素だ。もちろんこれらも大切な要素だが、本当に注目すべきは体操競技は「裸足」でやっているという点だ。
 見落とされがちな「裸足」という要素。これがウエリフのスタートダッシュを大幅に短縮していると私は考える。まだ体幹が安定していない初心者や年少者が鋭い動きでもブレないという選手は、もしかしたら足の指が発達しているかもしれない。
 とは言え裸足のスポーツは意外と多い。しかしその中でも体操競技がよりフィーチャーされるのは先ほど言った高度な身体操作、柔軟性が足の指とちゃんと連動して教えられているからだと思う。体操の経験もない素人目線なので当てずっぽかもしれないが、体操競技で目がいくのってやっぱり手や足の指先だと思う。高難度の技に挑戦するだけが体操競技ではなく、いかに美しく観客に見せるかという、フィギュアスケートのような美的な側面も体操競技の魅力だと思う。人の目がいくところを練習で教えてないはずはないと思のだがどうだろう?

足の指とバランスの関係

 足の指の使い方だが極端な例を出すと逆立ちを想像してほしい。支えのない逆立ちだ。逆立ちのとき真っ先にバランスをとるために動かす場所は手なのだ。足という人もいるかもしれないが、手のひら、指を精密に動かす事によってバランスをとる。もう少し具体的な言い方をすると手で地面をつかむイメージだ。
 逆立ちが極端な例と言ったのは手と脚の先にある大きな関節、肩関節と股関節の役割が大きく違うということ。股関節は上半身すべてを常に「支える」という目的があるが、肩関節には体の部位を「支える」という役割はほぼない。そういう意味で逆立ちの場合、手でバランスを取ることが必須になってしまう。
 しかし立っているときに足の指までバランスをとるのに使えたら、さらに安定力が増すと考えられないだろうか?地面をつかむ力が強くなる=バランス感覚が強化されると思ってもらっていい。

足の指が使えないと起こること

 「靴を履けば関係ないのでは?」と思う人もいるかもしれない。その意識の差こそジュニア期の運動能力の差、果てには腰痛などのケガの要因のひとつにもなる。
 体重は主に足裏の母趾球、小趾球、踵に分散している(三点バランス理論という)。私はそれプラス足の指が分散率をコントロールする役割を持っていると考える。しかしその3点だけでもバランスをとること自体は可能のため、足の指は使われず退化していくことになる。

 こちらのインタビューを参考すると足の指を使わない「浮き指」が問題になってきているらしい。これはランニングの記事だが日常生活の歩きや他の運動でも足の指を使うべきだ。

 実際に片膝をついてもう一方の脚は立てたままにする。立てた足を少しずつつま先立ちにしてみる。すると膝が内側に入っていくことがわかるだろうか?(脚の筋肉が発達している人はならないかも)。これは人体がそういう構造になっているのでしかたない。
 普段から浮き指になりつま先に体重が乗っていると、少しずつだが膝が内転していることになる。膝が内転した状態で負担がかかっていくとまず膝に痛みがくる。次に骨盤が膝の内転によって前傾すると腰痛が発生なんてことになる。足の指と腰は離れて見えても、少しの歪みによってその歪みが連鎖していき別の箇所に痛み、ケガが発生する。

 デスクワーカーなどの大人もなりやすいが、とくにジュニアの時期から足の指を使わないことを覚えると、子供はすぐにその状況に順応してしまう。今は大丈夫でもその先10年、20年後を考えると正しい運動を教えることがいかに大切なことかがわかる。

最後に

 そんな私も実は小学校高学年から中学の終わりまで「剣道」をしていた。そう、裸足のスポーツ(武道)だ。今にして思うと他の人よりも足の指を使うことが多かった。こればっかりは家庭環境やどんなスポーツを経験するかで変わっていくことだが、体のどんな場所でも使われなければどんどん錆び付くということ。とくにコロナの影響か小中学生の運動能力は年々低下しているらしい。こんな時代だからこそ正しい運動を正しく指導できる人が求められているかもしれません。


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