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新型コロナの不確実性とリスク

米月間雇用統計は通常、米国の経済状況を明らかにするものであり、経済の現状と方向性に関する見立てを調整する、内容豊富でタイムリーな概況データです。

しかし、新型コロナウイルスの影響を受けて、今回は違うのです。

3月の米雇用統計は非農業部門就業者数が前月比70万人以上の減少との結果でした。しかし、新型コロナ関連の雇用削減の本格化はまだこれからで、発表された失業保険申請件数は600万人以上となり、このデータがあったとしても失業がどれほど深刻化、長期化していくかは定かではありません。

前例がないのは新型コロナの度合いだけではなく、そのほぼ全ての側面を取り巻く不確実性に関してもになります。また、不確実性は、それ自体が経済を蝕んでいくリスクになり得ます。

通常であったら、死亡率やリセッション (景気後退)、弱気相場などの特定の事柄について過去の確率が十分にわかっており、将来のリスクを、ある程度は予想することができます。

しかし、現在はリスクを有意なレベルで測定できるほど、現況に関する根本的な性質が分かっていません。

サイコロの目が公正か、何面あるかが分からないまま、7が出る確率を計算するようなものです。

現在、少なくとも4つの明確な不確実要因があります。

1. コロナ・パンデミック(世界的大流行)の深刻さや拡大の度合い。

2  . 対人距離を確保するソーシャルディスタンス措置の範囲と期間。

3 .  同措置の経済的、財政的な影響。

4 .  政策対応。

これらは、相互に作用する。感染力が強ければ強いほど、ソーシャルディスタンス措置は厳格化する必要があり、結果、経済的な副作用も一段と拡大し、より積極的な政策対応が必要となります。

人間は不確実性を嫌い、誰よりも自信を持って予測する人に傾きがちですが、今は過度な自信には懐疑的にならざるを得ない。

ワクチンや疫病研究に長年取り組んできた英ケンブリッジ大学のゴードン・ドーガン教授は最近、このような言葉をブログに投稿していました。

「私のような専門家の価値とは何か。私は感染や疫病、ワクチンについて恐らく大半の人より知識があるだろう。世界中で疫病について調査したり、ワクチンを開発・設計したりしてきた。だがこの疫病について次に何が起こるか分かっているだろうか。どの専門家が正しいのだろうか。世界保健機関(WHO)だろうか。政治家やその科学者やモデル作成者のチームだろうか。実際のところ、私たちはみな自分の持つ情報を基に推測しようとしているにすぎない」

不確実性は現実世界にも影響を及ぼす。

全米経済研究所が公表した論文によると、自己隔離の期間が予想より長引けば、政策に従う意欲が薄れていくことが明らかにされた。

また、一時的な隔離措置を最大化するには、措置がいつ暖和や解除されるかについて国民の期待をうまく管理する必要があると発表されています。


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