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イカの日に寄せて───イカのリゾット(光属性)


全世界のイカをこよなく愛する紳士淑女のみなさま、ごきげんよう。イカの日お慶び申し上げます。


『毎月10日はイカの日』



今月こそ、今月こそはイカの日当日に祝祭メニューの記事を書くぞー!
エイ、エイ、オーウ!
セイ、セイ、ヤーッ!!!

と数日前から気合い入れの儀式を執り行っていたにも関わらず(なおこの儀式は三日三晩続いたと言われている……)、昨日の夕方急用が入ってしまったため、記事を書くどころかイカメニューを作ることすらままならなかった。残念無念であります。

まあ仕方ない。甥っ子の急な発熱とあらば、取るものも取りあえずマッハで駆けつけるのがばっちゃの名誉あるお役目であるからな……

(甥っ子は幸い例のアレではなく、今日は微熱がまだあるもののだいぶ元気になりました。よかったよかった)


ということで、1日遅れちゃったけども今夜はイカメニューで晩ごはん。今月はイカのリゾットにチャレンジしてみることにした。


リゾットは日ごろからよく作っているお気に入りメニューのひとつ。ごはん炊くより早くできあがるし、具材もなかなか幅広いし、大好きなワインのお供にも最高だ。わが国のお米だって、洗わずに炒めてから短時間で煮込むことで、アルデンテな歯ごたえも楽しめる。ごはんは固めが好きな私にはうってつけのメニューだ。

だがしかし……今回はイカの日を祝う一皿。

ここはひとつ、ちょっとだけ材料にこだわってみるのが、イカの日を祝う者としての最低限の礼節でありましょうや。


今回は、買うのもはぢめて、扱うのもはぢめて!なタイのお米を使ってみることにした。

一度やってみたかったのよね、タイ米でリゾット作り。よーしこいつでイカスミリゾットに初挑戦だー!


……と息巻いていたのだけれど、なんとこんな時に限って行きつけのサンクチュアリ・ロピアに生のイカが全然売ってない……。かろうじて見つかったのがヤリイカである。私がイメージしていたスルメイカと比べるとかなり小ぶりであるため、「ちょ、待てよ……ヤリイカって墨袋ついてんだよね???」と鮮魚コーナーでスマホ検索をしてしまう程度には動揺した(己の無知という恥部を包み隠さず発信してゆくスタンス)。で、調べたらちゃんと墨袋ついてたんで、ラスト1パックだったヤリイカをすぐさま買い物かごにぶちこんだ。いつもならスルメイカもヤリイカもたんまり売ってるのに、なぜこんな時に限って……


( ゚Д゚)ハッ!!!!!!


も、もしや……私が知らないだけで、実は『毎月10日はイカの日』ってもう一般常識だったりするの???みんな毎月10日は朝いちばんにイカを仕入れに来てらっしゃるってことなの???

何ということ!出遅れた!
来月は開店前に並ぶっきゃねえ……!!!


で、このヤリイカのぬらぬらしたボデェに指を突っ込んで足ごと内臓を引き抜き、背骨としか思えないスケスケの板も取り外す。引き抜いた部位は目玉の辺りを切り離して足と内臓に解体し、足に塩振ってもみもみして水洗い=吸盤除去。内臓は墨袋をブチ撒かないように注意しつつ、小皿に取り分けておく。身は一口サイズに切り分けておく。

小鍋にオリーヴ油とにんにくみじんぎりを入れて火にかけ、にんにくの香りが立ってきたところで、タイのお米を洗わずにぶちこむ。油で透き通ったお米が再び白くなったところで、臓物・墨袋・白ワインを投入。続けて全体が浸るくらいの水を入れたら中強火に火力を上げながら全体を軽く混ぜる。ここでイカの身と足も投入。あとはお米がいい感じの歯ごたえになるまで、適宜水を足しながらしばし煮込む。

まだちょっと固すぎるかなーくらいのタイミングで、今回はミニトマトも入れてみた。イカスミによって漆黒の帳を纏った米には、鮮やかな紅こそが相応しかろうと思ったんである(厨二的嗜好)。イカにトマト味って合いますしね。

で、あとはアルデンテになるまでガンガン強火で煽ってゆくだけ。お米の歯ごたえがばっちり!なタイミングで水分がほぼ蒸発してれば大成功だ。イカからめちゃくちゃいい出汁が出るので、味つけは塩こしょうをほんのちょっと振れば充分。

触れなば落ちん、といった風情になったミニトマトをぶち壊さないように細心の注意を払って……お皿にホイ。仕上げに乾燥バジルをぱぱっと振ったらできあがり。





驚 き の 墨 感 ゼ ロ ! ! !



「オイオイオイ待ってくれよワカナ!これがイカスミリゾットだって?墨感の欠片もないじゃアないか!」
「オオゥ、ジョージ!僕にもさっぱり分からないのさ。だって僕は確かに墨袋を入れたんだぜ?」
「HAHAHA、まさか!こいつときたら漆黒どころか、二日酔いの朝にトイレから出てきた君の顔色そっくりだぜ?」
「信じてくれよジョージ……!僕は間違いなく墨袋を入れた!それもヤリイカの身一パイ分に対して、4パイ分の墨袋を入れたんだよ!」
「オーノォウ……ワカナ。冗談はその顔だけにしてくれないか?」


いやあの……ぶっちゃけね、調理中から戦慄を覚えてはいた。あまりにも鍋の中身が黒くならなさすぎて、脳内で寸劇が始まる程度には動揺いたしましたわよ。だってnoteの凄腕料理人の皆さまは、「イカスミはちょこっと入れるだけでたちまち鍋の中身を永遠とわなる闇へと誘わん……」って言ってたもん……!言ってた……もん……!ぐすっ……!!


まあ、嘆いてみても黒くならなかったものは仕方あるめぇ。調理に使った白ワインを添えていただきます。


見た目が当初のイメージから完全にかけ離れてしまったものの、お味は文句なし!絶妙なアルデンテに仕上がり、パラリとした舌触りとかすかな歯ごたえの米粒に、たっぷりと染み込んだイカの香り……どちゃくそめっちゃんこおーいしーい!!!イカを臓物まで使って調理するのは記憶の限りでは初だったのだけれど、まったく生臭さを感じない。それでいて、調味料をほとんど使わなかったにも関わらず、米粒を載せた舌先から腹の髄までズシンと響く重低音のようなコクと旨みが楽しめる。お米がサラリとした口当たりなので、ぷりんぷりんに煮上がったイカの食感がより際立って迫ってくるようだ。彩り要員で入れたミニトマトのジューシーな甘みとかすかな酸味も、実にいいバイプレーヤーぶり。にんにくの香ばしいパンチ力がそれらをまとめ上げてくれていて……そこに流し込む白ワインの爽やかさがまた素晴らしくて……ああ……我ながら完璧だ。


しかしながら、こうなってくるといっそう黒くならなかった現実がより強大な悲壮感を伴って胸に迫ってくる。

一体何が敗因だったのだろうか。
万物を永遠とわなる闇へと容赦なく導くはずのイカスミ……言うなればこの世の暗黒物質ダークマターと呼ぶに相応しい存在と交わってなお、驚きの白さ……


( ゚Д゚)ハッ!!!!!!


たった今理解した……
私は今宵、リゾットを調理する傍らで……自らも認識できない潜在意識の領域下において


光属性の呪術スペルを完成させていたのね………!!!


アッハッハ、なーんだ☆そういうことだったんだァ!いやーすっきりしたァー。もう色が黒くなんなかったのなんてどーでもいいわ。

だって、食べれば味は同じだもの!!!


フウーッ、おいしかった。ごちそうさまでした。



ヤリイカの残りはトマトソース煮込みにしたので、後日これで赤いリゾットを作ろうかな、とにやにやしている。ジャスミンライスもまだたくさん残ってるしな。パエリアなんかにも挑戦してみたいなー。


イカスミリゾットもいずれリベンジしたいと思う。


だって光属性と闇属性、両方使える方がかっこいいから!!!




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