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平民金子展「ごろごろ、神戸。」もうひとつの世界 に寄せて(2019年4月1日発行のフライヤーより転載)

 今から約十数年前、まだSNSもなかったころ。当時のインターネット界隈はウェブ日記が全盛であり、なかでも「はてなダイアリー」は最も多くのユーザーを有したサービスだった。そこでは「平民新聞」という日記を知らない者はいなかった。  作者の名前は平民金子(へいみん・かねこ)。日記に掲載される地に足のついた低い低い視点の写真と、「毎晩夜通しおきていて、なんにもしてやしない」ような人々と微かな光を分かち合うような、そんな文章を大量に執筆していた。  携帯電話のメモリに、架空の友達の

    • 山でレコードを拾った。

       誰でもレコードを拾ったことがあるだろう。  いや、「誰でも」というのは、いま、この「レコード手帖」を読んでいるような人たちのことで、レコードに興味がない人は、道にレコードが落ちていても特に気にすることはないから、たぶん拾うこともない。じつはレコードは、けっこういろんなところに落ちている。そしてレコードが好きな人は、だいたいどこかでレコードを拾うものだ。ところが、先日、とても意外な場所でレコードを拾った。  私は山登りや渓流釣りによく行くのだけど、とある山岳渓流でフライロッ

    平民金子展「ごろごろ、神戸。」もうひとつの世界 に寄せて(2019年4月1日発行のフライヤーより転載)