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淡々と声を上げる

とある日の試合。ちょうど目の前で、応援する自チームの選手が相手チームの選手にホールディングで倒される場面があった。席からよく見える場所で、スタンドは非難の声。

これ自体は、サッカー観戦では良くある光景。ブーイングにより自チームの選手を守る意識もあるし、審判に対するアピールの意味もある。相手選手を怯ませる、という感情も否定はしない。

ただ、やりすぎ(言い過ぎ)はアカンと思う。

ピッチが近いということは、向こうにも声は聞こえている。観衆の大声援に紛れてるかもしれないが、ブーイング(Booo!!の発声)と、明確な「言葉」を投げつけるのは別だ。

隣人は、立ち上がり、拳を挙げ、文字にするのは躊躇われるほどの激しく汚い言葉を30秒ほど、相手チームの選手に投げつけ、そして座った。

めちゃくちゃ嫌だった。

まず自分の感情を書き留めておく

確かにしつこいホールディングだった。ファウルなのは間違いない。私も、「オイ!」ぐらいは言う。やめろ!卑怯だ!やりすぎだ!フェアにボールを奪えよ!という気持ちを込めて「オイ!」と叫ぶ。

観客からブーイングが起きた時は、みんな闘ってる、選手を守ろうとしてる、と感じた。ゴールを決めた瞬間のワッという歓声や、良いプレーに一斉に拍手が起きる時と似た、一体感のような気持ちだ。

その後ファウルも取ってくれたし、選手も痛んでないし、ボールをセットしてプレー再開。さぁ行こう!という気持ちに切り替わる。サッカー観戦はこの感情の起伏の繰り返しだ。

隣人の言葉を受け流すかどうか

ニュアンスが難しいが、ふだん、一体感を持ちながら、同じチームを、同じ観客席から応援するファン・サポーターが発した言葉だからだろう、自分の愛するクラブが、他チームに対して悪意を撒き散らしているような、自分がその一員になってしまったような、なんとも言えない嫌な感情が沸き起こってしまった。耐えきれず、まだ前半20分ぐらいだったが、私は席を立った。

今日のゲーム展開だと、まだまだブーイングが起きる場面は起きそうだ。そのたびに隣人が誹謗中傷で選手を傷つけるとしたら、自分も、そちら側の一員だと脳が錯覚してしまいそう。「そんなファンがいるクラブ」として、自分の愛するクラブを嫌いになってしまうかもしれない。

それが嫌で、今日はもう帰ろうと思ったのだ。

帰る以外に、なにかできることはないか

いちばん勇気ある行動は、本人に「そんなことは言わない方が良い」と指摘をすることだろうけど、そんなことをしたらめっちゃ怒られそう。あの勢いで直接罵られるのは嫌だ。でも、「こういうことが起きた」と記録を残して、今後の対処を検討してもらうことならできるかも?

そう思い、コンコースにいるスタッフさんに声を掛け、

・自分の席の隣に誹謗中傷のようなブーイングをする人がいること
・自分が言われた訳ではないが、聞いているだけでツライこと
・せっかくなので応援したいが、席には戻りたくないこと

を伝えた。

すると、一緒に遠目から私の席を確認し、隣人の席を特定したうえで、他の席が用意できるかどうか担当に確認し、別の席に案内してくれた。私はタイムアウトまで声援を送り、勝利を見届けることができた。

声を挙げることで、変えていくこともできるかも

私の権利をしっかり保証してくれたことも嬉しかったが、原因となる対象をしっかり確認してくれたことも頼もしかった。直接対峙するのは怖いけど、受け入れる(我慢して隣に座り続ける)ことはできない。だから席は立つけれど、自分の権利(試合観戦)を放棄するのもオカシイ気がする。

なんとなく、「言いつける」みたいで卑怯な気持ちもあった。でも、だからといって自分が受け入れたりとか、自分の権利を放棄するのもオカシイ。だからそんな時はこんなふうに、淡々と声を上げるだけでも良いのかも。

いちばんは、そんな、直接は言えないような言葉を、大衆に隠れて投げつけるような人がいなくなることだけど、たぶんそれはなくならない。でも、なくならないから諦めるんじゃなくて、言い続けることが、大事なんだと思う。

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