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ベンチャーデットを使いこなせ! #スタートアップ投資TV #融資相談室

スタートアップの融資を支援しているINQの若林( @wakaba_office )です。

また、スタートアップ投資TVというYouTubeチャンネルで、スタートアップ向けに投資に関する情報を発信しています。
https://www.youtube.com/@Startup-TV

本記事は「【最新の資金調達】支配権を失わないベンチャーデットを使いこなせ!【融資相談室】」という動画の内容を書き起こしたものです。

Gazelle Capital 株式会社の近藤絵水さんを司会に、株式会社Fivot 代表取締役の安部匠悟さんをゲストに招きベンチャーデットについて語っています。

ベンチャーデットとは

近藤さん:最近スタートアップ業界で「ベンチャーデット」という言葉を耳にしますが、ベンチャーデットとは何なのでしょうか。

若林:広い意味でいうと、スタートアップ向けのデットファイナンス(融資)のことです。もう少し狭い意味では、エクイティのラウンドに合わせてワラント(新株予約権)などを融資に付けて行う一般的な公庫などの融資と、エクイティファイナンスとの中間的なリスクの取り方でスタートアップを支援するデットファイナンスをベンチャーデットと呼びます。

近藤さん:中間的な位置付けが新たに生まれ始めてきているということですね。

若林:そうですね。今回はスタートアップ向けのデットファイナンスを広く展開している、株式会社Fivotの安部さんにお越しいただきまして、詳しく聞いていきたいと思います。

ベンチャーデットの市況感

近藤さん:ベンチャーデットについて話題になっているポイントとして、市況感があると思います。エクイティも含め厳しい状況という話を以前の動画でもさせていただきましたが、ベンチャーデットの市況感について、安部さんはどのように感じていますか。

安部さん:エクイティの環境が少し悪化しているという状況において、かなりニーズが高まっているのは間違いないと思っています。国内でも、私たちを含めてたくさんのプレイヤーが参戦し、黎明期を作り上げている状況です。日本でも市場が興り始めていると感じています。

若林:欧米でもベンチャーデットのプレイヤーがかなり増えてきていまして、2018年には1.8兆円くらいの市場だったのが、2021年には3兆円まで一気に拡大しています。欧米でもこのような動きが出ていることを考えると、日本国内でも少しずつベンチャーデットファンドが立ち上がって、プレイヤーが増えて、盛り上がっていくのではないかと考えています。

スタートアップがベンチャーデットを利用するメリット

近藤さん:ベンチャーデットを利用することで、スタートアップにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

若林:スタートアップ側にとって、エクイティと比較したときのメリット・デメリットと、公庫や保証協会付きの融資のような一般的な銀行融資と比較したときのメリット・デメリットとを比べた方が分かりやすいと思うので、それぞれについて安部さんに聞いてみたいと思います。

エクイティと比較したベンチャーデットのメリット

若林:まず、エクイティと比較したベンチャーデットのメリットとして、どんなものが考えられますか。

安部さん:弊社が顧客のニーズを受けながらデットファイナンスを提供している中では、大きなメリットの1つとして株式の希薄化を防ぐというものが挙げられます。エクイティを放出すると起業家に対してオーナーシップが下がってしまうので、デットファイナンスであればオーナーシップを希薄化させることなく追加資金を受け取ることが可能です。

若林:デットファイナンスによってランウェイを伸ばしたり、場合によってはダウンラウンドを避けたりという形で次のファイナンスに使っていくための資金に使えるというメリットは、確かにありますよね。

近藤さん:株式を希薄化しないことで議決権を渡す必要がないというイメージを抱いているのですが、正しいでしょうか。

若林:そうですね。ベンチャーデットは融資なので返済しないといけないのですが、融資の対価として株式を渡しません。そのため、例えば業況が悪くなったからといって、いきなりベンチャーデットの方から役員が来るというようなことはありません。エクイティはイグジットまで関係性がずっと続きますが、ベンチャーデットは返済すれば関係性を終了できるというのもメリットだと思っています。スタートアップにとって柔軟なファイナンス手法として、ベンチャーデットが活用できるのではないでしょうか。

他にも、例えば『Flex Capital』さんの場合、さまざまなデータを使って融資審査をされていると思われます。エクイティの場合はDDに入って投資委員会を作るということになってくると、『Flex Capital』さんから融資を受けるよりもかなり時間がかかると思われます。『Flex Capital』さんの場合はスタートアップのデータ受領から最短で1週間、他のプレイヤーでも2週間〜1カ月ほどでデットを提供できる、その審査期間の短さもメリットの1つだと認識しています。

画像の図を見ていただくと、エクイティで資金を調達した段階では実感しにくいのですが、期待されているリターンというものがあり、一般的には15%以上といわれます。期待リターンを比較すると、ベンチャーデットはエクイティより低い傾向があります。一般的な融資でいうと、例えば公庫の融資だと2%前後だったり、プロパーだともっと低いこともあるかもしれませんが、ベンチャーデットはリスクをとって機動的な分、金利は少し高くなるもののエクイティよりは調達コストは低めとされています。

エクイティと比較したベンチャーデットのデメリット

近藤さん:ベンチャーデットにはさまざまなメリットがありますが、デメリットもあるのでしょうか。

安部さん:エクイティと比較すると、ベンチャーデットは融資の金額が低くなりがちです。そのため赤字で経営されているスタートアップだと、ベンチャーデットだけで運用していくのは難しいと考えられます。ベンチャーデットは最終的に返済する必要があるため、その返済のためにエクイティもしっかりとっていただいた上で、その金額に対して数十%をデットで調達するというのがセオリーになると思います。

若林:アメリカのシリコンバレーバンクでは、直近のエクイティファイナンスの金額に対して20〜35%くらいの融資枠を設定すると聞いています。

近藤さん:エクイティとベンチャーデット、どちらかではなく、併用することでそれぞれの価値が最大限に発揮されるということですね。

若林:はい。資金調達の代替手段といいますか、選択肢が拡張されるイメージだと思います。

安部さん:エクイティで資金調達した後に、ベンチャーデットでさらにオプションを増やすイメージですね。エクイティで資金調達後、今は資金ニーズはないのだけれど、将来的に必要になるかもしれないタイミングを見越してしっかり資金を取っておくことで、機動的にベンチャーデットのオプションを発揮できるようにするというのがデットファイナンスのベストな使い方だと思っています。

銀行融資と比較したベンチャーデットのメリット

近藤さん:ここまではエクイティと比較したベンチャーデットのメリット・デメリットについて解説いただきましたが、銀行融資と比較したメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

安部さん:銀行はどうしても画一的な融資の審査基準にならざるを得ない部分があります。一方、ベンチャーデットなら、より柔軟な審査基準を設けたり、さまざまなデータを活用したりして、スタートアップに対しデットで資金供給できる角度を見つけてあげることができます。フレックスに資金提供できる点は、銀行融資と比較したベンチャーデットのメリットといえるでしょう。

若林:民間金融機関からの融資であったり、保証協会付きの融資であったり、公庫の融資であったりは、創業初期にスタートアップにとっては本当にありがたい存在で、どのスタートアップでも活用するべきです。一方で、融資枠というものが制度で決まっていたり、お金を貸せない業種、例えば金融業やベンチャーキャピタル、補助的貸金業(先にサービスを提供し、後から費用を回収する事業)などがあったりします。公庫などの対象にならない企業・業種に対しても、審査をして問題なければ資金提供ができる柔軟性が、デットファイナンスにはありますね。

銀行融資と比較したベンチャーデットのデメリット

近藤さん:では、銀行融資と比較したベンチャーデットのデメリットには何があるのでしょうか。

安部さん:どうしても金利が高くなってしまう点がデメリットになると思います。制度融資と比べて、私たちのようなデットのプレイヤーがスタートアップのリスクを取りに行くので、リターンを高めに設定せざるを得ないという事情があります。

もう1つデメリットを挙げるなら、貸付期間が短期設定になりがちという点です。例えば公庫の場合は10年くらいの期間で融資することもあると思うのですが、ベンチャーデットの場合は数カ月から数年ほどになるのが一般的です。

若林:確かに、貸付期間の短さはデメリットになると思うのですが、組み合わせによっては必ずしもデメリットになるとは限らないと思います。長期の場合はなるべく低金利で公庫や商工中金などから借入をして、数カ月のランウェイとか、少しだけトラクションを伸ばしたいときとかはベンチャーデットで、デットファンドに少しリスクを取ってもらって、借りたお金をエクイティで資金調達ができたら短期間で返済するというような形で組み合わせると、理想的ではないでしょうか。

ベンチャーデットを上手く使うポイント

近藤さん:起業家の皆さんがベンチャーデットを上手く活用するためのポイントを教えてください。

安部さん:ベンチャーデットは基本的に、エクイティラウンドと一緒に活用するのがベストだと思っています。しかし、例えばエクイティラウンドの資金調達額が5億円必要な際に、5億円を全てエクイティで調達するのではなく2億円分をベンチャーデットで調達することで、ベンチャーキャピタルの人々を空腹にしてあげるという効果が期待できると考えています。

ベンチャーキャピタルとしては、5億円というリードをしっかり取って投資をしたい思っているところに、あえて2億円をベンチャーデットで調達することで「3億円で十分です」と伝えます。これにより、ベンチャーキャピタルが投資しようと思っていた残り2億円分を別の機会に追加投資してもらうような交渉ができるようになる、ということです。このような活用は戦略的で、効果的なベンチャーデットの使い方だと思います。ベンチャーキャピタル業界からは怒られてしまうかもしれませんが。

近藤さん:起業家としては要所要所で、長期なのか、中期なのか、エクイティなのかそれぞれのメリット・デメリットを理解した上で選ぶのがベストということですね。


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最後までお読み頂きありがとうございました。


注釈

 本記事は2024-01-25時点で発表されている情報を解説したものです。以後制度が変更になる可能性があります。

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