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学校へ行かないという選択

有名大学に合格した不登校の生徒

 こんなことがありました。

  その生徒は理解力にすぐれていましたが、新しいことに直面したときの対応において、不安が過度に行動に影響してしまうようなところがありました。
いわゆる自信がなかなか持てない生徒です。

これまで多くの生徒を見てきましたが、こういう生徒は実は学力の伸びは抜群に良いです。ただ自信があり学習内容に楽しく取り組めているときは良いのですが、自信がぐらつくと勉強が手につかなくなるというような事が起こりがちです。

進学校へ合格したのは良かったのですが、周りの輪になかなか溶け込めないうちに学習内容面の理解で少し足踏みが起こったのを機に学校へ行けなくなってしまいました。

結局いろいろと思い悩んだ後、その進学校をやめて通信制の高校へ転籍しました。その決断は本人にとって相当大きなものだったと思います。
しかし、環境を変えないと自分がどんどん追い込まれるということから行った本当に勇気ある決断だったのだと思います。

そしてその数年後、彼は有名大学へ見事合格しました。

 学校へ普通に通っている生徒の保護者の方は、漠然と子どもは小学校中学校高校大学へと順調に進学してくものと考えている方が大半だと思います。
 まさか途中で学校へ行けなくなるという事態になるとは思っていないため、たとえば通信制高校や大検などはコースから外れた人がやむなく選択するもので自分には関係ないと感じていると思います。

 しかし通信制高校や大検などの通常の進学とは少しコースが違う進学ルートは確実に以前よりずっと進化しています。そこから有名大学へ進むということもわりとあります。
でもこのことは、残念ながら学校というものがごく普通の生徒にとっても今や通いにくくなっているということを示す証拠になってしまっているのかも知れません。 

そして学校へ行かなくても、やろうと思えば道は色々あるのです。

いつまで経ってもなくならない不登校

 私たちが青雲学院を始めたのは今から20年以上前ですが、当時から学校へ行けないという生徒は割といて、学院にも通っていました。

またそれよりずっと昔にさかのぼり、私が講師として生徒を指導することを始めた頃でも、学校へ行けない生徒がいました。講師時代も不登校の生徒を結構指導した経験があります。

 その中には単に短期間行けないという生徒から、保健室など別室への登校措置を受けて通う生徒、休みの期間が中期を超えて長期になり年間丸々お休みしてしまう生徒もいました。

さらに休みが長くなり、中学校へはほとんど行ってないまま卒業するというような生徒もいました。

たとえば、あなたが会社を経営していたとします。
その社員が会社が辛くて通えないという事態が起きたとき、社長であるあなたはどうしますか?

原因を究明して対策を打ちますよね。
そしてそれが防止できなければ、労務管理的には大きな問題がある会社だということになります。

 しかし学校へ通えない生徒が何十年もこんなにずっと増え続けているにもかかわらず、その学校という辛い場所は一向に変わりません。
気が付いていない方が多いと思いますが、国がやっているのは実は「学校へ通えない生徒」への対応だけです。病院と同じでそれぞれの症状への対症療法をしているというのが真実です。
不登校の生徒に対してカウンセリングをしたり、場合によっては生徒が病的傾向があるというような話にしてしまったりして、それで終わりです。

 これは言ってみれば「学校制度の運用失敗」だと思います。
 本当は学校の制度自体を生徒が通いやすくなるものへ抜本的に変えなければいけないのに、それはどうしてもしようとはしないのです。
だからいつまで経っても不登校はなくならないままなのではないかと感じています。

塾へは通える生徒たち

 これは不登校の子どもを持って初めて気づかれることになる方が多いと思いますが、不登校の生徒が家に引きこもっているだけなのかと言えば、実はそうではないのです。
 学校へ行けないというだけで勉強の意欲はあったり、塾へは普通に通えたりします。休んで逆にやる気が出るということもよくあります。

 もちろん学校へ行けない理由が、周りの生徒との対人関係にある場合には、集団塾の場合にはほとんど通う事ができません。
「あの子学校へ来ないのに塾へ来ている」というような事をささやかれてしまったり、そうでなくても本人は、そう言われると思ってしまうからです。

 青雲学院は、創立時には少人数指導中心の塾でクラス指導方式でしたが、生徒のニーズに対して非常に柔軟な対応をしていましたので、不登校の場合は周りの生徒との関係をよく把握して顔を合わせないようにするなど個別対応をして、そのような問題は当初から回避していました。
 その後個別指導進学塾となった後は、更に進んで不登校生徒への対応は完全にその生徒の状況を確認しての個別対応になりましたので、場合によっては登校時間をずらして登塾時に他の生徒の顔を見る事すらないようにして特別対応をおこなったりして対応をしてきました。 

だから学校へ行けない生徒も普通に塾に通ってきます。
そういう生徒がうれしそうに学習を楽しんでいる姿を見ると、「学校って一体何なのか」ということを思わずにはいられません。

 ただこのような特別対応をできない一斉指導の集団塾しかご存知ない方は、あるいは塾にも通えないということになっているのかも知れませんが・・・

現在青雲学院ではさらに進んで、不登校対応専門のオンライン個別を開講していますので、不登校でお困りの方のお役に立つことができると考えております。いつでもお気軽にご相談ください。

学校へ行かない。それがどうした。

 普通に学校へ通える生徒でも学校生活をエンジョイできている生徒もいれば、ときには辛さを我慢して嫌々通っている生徒もいるでしょう。
学校制度は昔から統率と秩序がそのベースにあるため、どうしてもそのやり方に違和感をもったりすることは起こります。
 
またよく言われるいじめ問題もこのような閉鎖空間では起こり易くなります。
とりわけ同調圧力が強烈な日本の社会を反映するかのような学校の中では、自由な発想をする者ほど過ごすのが辛い事態も起こり易いのかも知れません。

 指導経験から見て言わせてもらえば、一般の方が漠然と思っているのとは違い、「学校へ行かない」ということは、大人になれば実はどうってことはありません。
事実青雲学院に通ってきた不登校の生徒さんはその後積極的に活躍している方が多く、学歴的な面においてさえ、ずっと学校に通った人に結果的には遜色のない経緯をたどられる人もいました。
 言ってみれば「学校へ行かない。それがどうした」っていう感じではあります。

本人がどうしたいか。それを尊重していい。

 いわゆるパンデミック騒動以来学校の保守的で責任回避的な面が表に出ることが多くなっている気がします。
学校がピラミッド式の組織である以上、間違いを起こしてはいけないという思考がベースになってしまうのはよく理解できますが、生徒という人を育てる組織が、肝心の生徒ではなく組織の存続や対面を優先すれば教育機関としての大事なことを置き忘れてしまうことになります。

 最近間違いなく学校へ行かない子どもたちは激増しているように思います。現場の感覚としては、以前なら普通に通っていたような子どもが学校へ通うのを放棄する事例が起こってきている気さえしています。

 一般社会が正常化した後もいつまでも学校行事を中止しつづけ、よくわからない新しい習慣を押し付けて、会話さえ制限するような場所に行きたいとは思わないのではないかと、外部の私たちは感じてしまいます。
もちろん現場の先生方が日夜頑張っていることはわかっていますが・・・

「学校へ行きたくない」と言ったら・・・

 もし「学校へ行きたくない」とお子さんが言ったらどうすればよいでしょうか。

「学校へ行きたくない」という場合には本当にいろんな理由があります。
だから一概に決めつけてしまうのが最もまずいやり方です。

まずは本人に話を聞くのがスタートです。
ただ注意すべきことがあります。
本人はこういう場合ほとんど理由を言いません。
これは当然のことで、中学生や高校生の年齢でまだ世の中のこともよくわかっていない若者が、世界を敵に回して他人と違うことを自分だけ始めるわけですから、合理的な理由を恥ずかしがらずに親や先生に言えるはずはないのです。

だから理由など聞かなくていいのです。
とにかく「行きなくない」なら休ませればよいです。
そして温かい目で見守ってください。
学校へ行こうが行かまいが、目の前にいるそのお子さんは間違いなく保護者のあなたが愛する人物であることは間違いないのですから。

そして私の経験から言わせてもらえば、
どんな状況でも温かく見守りつづけられたお子さんは、紆余曲折があってもいずれ必ず社会で生き抜く力を身につけてくれるものです。
どうか保護者のあなただけはご本人の味方であり続けてください。

「学校へ行かないなんて考えられない」ではなく、
「この子は今『学校へ行かないという選択』をしているのだ」
そういう感覚で見守っていれば、意外に事態は好転するものです。






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