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終着駅へ行ってみた⇒ゆいレールVol.1

沖縄は鉄道ファンには埒外の場所だった
ゆいレールは重要な役割を果たしている
沖縄本島の人口密度は奄美大島より高いが人口のバラつきがある
鉄道は地域経済に貢献する公共施設だ
しかし、倒錯した計画で本土の赤字ローカル線のような道を辿る危険性もある
沖縄滞在がゆいレールの乗車と言う
筆者が語る沖縄観光の隠れた名所論


化外の地

鉄道ファンにとって沖縄は長年化外の地だった。

失礼な物言いだとわかってはいるが
レールを中心とする旅情に重きを置いた人々には埒外の場所だ。

激烈な地上戦闘と戦後の混乱により沖縄県営鉄道は壊滅した。

ゆいレールというモノレールが開業するまで五十年以上日本で唯一旅客鉄道の存在しない場所が沖縄県だった。

1945年の終戦から1972年の沖縄返還までのアメリカの施政下にあった。日本復帰後の後の三十年間も鉄道は再建を果たせなかった。

様々な事情はあったのだろう。
鉄道が地方の経済や産業を牽引するという発想は前世紀の古典的な振興策に過ぎない。

沖縄本島は鹿児島県の奄美大島より人口密度が高い。

沖縄本島の面積は1207㎢(※1 国土地理院 2020年1月)であり、

一方奄美大島の面積は712㎢(※2 国土地理院 2015年10月)とある。

人口についてみれば、
沖縄本島の二十六市町村の人口は135万4千391人
(※3 令和4年住民基本台帳に基づく人口,人口動態及び世帯数調査)
である。
本島に付属する島嶼部を含めた面積1248㎢で除すると

人口密度はおよそ1048人/㎢。

奄美大島の人口は五市町村の人口5万1千308人
(※4 令和4年住民基本台帳に基づく人口,人口動態及び世帯数調査)
である。
瀬戸内町は中心部の古仁屋は大島にあるが町域の半分は大島以外の島嶼であるため単純比較は難しい。
あえて瀬戸内町域をすべて大島に含めた面積821㎢で除すると

人口密度はおよそ73人/㎢となる。

沖縄県北部地域は中部、南部と比べれば人口密度が低く未開発の地域が多いといわれる。

本島内の北部八市町村の面積は765㎢(※5 国土地理院 2020年1月)
である。
人口は12万4千701人
(※6 令和4年住民基本台帳に基づく人口,人口動態及び世帯数調査)

人口密度はおよそ162人/㎢である。

中心都市の名護市を含めた人口密度とはいえ、沖縄本島でも地域間で人口のバラつきは顕著である。

沖縄本島中部・南部の人口集中は、鉄道を敷設しても採算を確保できるという目算が立つ。

那覇近郊の都心部では市内交通の手段として、鉄道は有効な方策である。
その事実は1980年代初頭から認識されていた。
県民の意識も鉄道再興へ徐々に収斂されていった。

ゆいレールと二十一世紀

それなのに何故ゆいレールの新設が二十一世紀まで時間を要したのであろうか。
路線の策定や概算費用の算定、建設主体や工期の決定、用地の買収と、新線建設は莫大な時間を要する一大プロジェクトである。

性急に事を進め、建設行為に主眼をおいた経済効果のみを追求すれば、本末転倒の結果をもたらす。

全国各地の公共事業で惨劇は繰り返された。

しかし、必要な公共施設を整備することは政府や地方公共団体の使命だ。

お役所が庶民に税金の納付を強制できる理由はただひとつ、公共の利益に合致するからだ。

権力機構や既得権確保のため財政を維持しているなら契約違反である。

ゆいレールの延伸や輸送力強化も、倒錯した計画を実施すれば、本土の赤字ローカル線が辿った険路と同様の道筋を描く
危険が増すばかりだ。

沖縄は温暖なイメージとは裏腹に、気候的には過酷な土地柄で、家屋の建築基準も暴風雨に堪えうる強靭な抗堪性を要求される。

鉄道も同様に高コストを負担しなければならない。

沖縄の鉄道は、のんびりしているように見えて着実に歩みを進める沖縄県の県民性を合わせ鏡のようにして、ゆっくりだが着実に歩みを進め完成に至った。

私は仕事で一年か二年に一度は沖縄を訪れていた。

計画は少しずつ現実になり、工事が進んで完成するまでの様々な現象や過程を
コマ送りの画像のように、脳裏に焼き付けていった。

完成から一ヶ月後ある日、初めてゆいレールに乗った時の感動は今でもしっかりと脳内のスライドに刻みこんである。

メモリーが故障するか本体が壊れるまでは、万全の体制で保管している。
沖縄県民と関係者の次ぐらいに開業を待ちわびる日々を送り完成を喜んだ私は、今でも一年か二年に一度は用事もないのに沖縄へ帰っている。

地元ではないけれど帰るという言葉以外に適当な言葉がうかばない。

帰沖

沖縄に帰ると、最前列の二人になれるまで空き席を待ってゆいレールに乗る。

展望席の乗客となって運転手さんが忙しく立ち回る術を育ての親のような眼差しで眺める。

毎日の多忙な業務を注視する迷惑な客と思われたくないが、順調に運行されている事実が確認できることがうれしい。

沖縄に滞在する理由の半分を占めるゆいレールの乗車では、迷惑な客にならぬように細心の注意を払いながら展望席の乗客となる。

ゆいレールが廃止されない限りは、あと五十年くらいは展望席の取り合いに参加する予定だ。

オチオチ病気にかかる訳にもいかない。
てだこ浦西駅のその先へどんどん延伸し、辺戸岬までつながる縦貫鉄道が完成する日まで健康に留意する所存である。

 


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