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海上自衛隊「金曜カレーのウソ」

【カレーは金曜日!】はメディア向けの作りばなしです!
 【曜日感覚を失わないためカレーは金曜日!】
 典型的なあと講釈です。
解説しているのが事情を知らない広報担当者
 カレーは金曜日の真実

 ハッキリいってカレーは金曜日以外にも食べます
 マスコミが誤って報道したおかげで
金曜日以外にカレーを作り辛くなった』というなら真実です。
 金曜日以外に取材に来ているのに『カレーを作って』というのは
他ならぬ『マスコミ』です!
 


🍛カレーは伝家の宝刀

 解説します
 現在金曜日の昼食はカレーが定番です。
 完全週休二日制が定着する以前は、土日に当直に入る『不運な隊員』以外が食べる週末のご馳走でした。
 半ドン(土曜の午前中だけ出勤し昼から外出できる日)の土曜日はカレーが昼ごはんだったのです。
 カレーは海上自衛隊にとって『伝家の宝刀』です。しかし秘仏ではないため刃こぼれしない程度に頻繁に登板させられます。
 特にマスコミが取材に来ると『月曜日でも木曜日でも急遽カレーが登板します。』

🍛質問【なぜカレーはヘビーローテーションするの?】

 答え【カレーは少人数で大量に調理できる手抜き料理だから】
 そして【手数が少ないのに隊員が喜ぶメニューだからです。】

 海上自衛隊の調理室では週末最後の出勤日に厨房(烹炊所と呼ぶ古参調理員もいます)を丁寧に清掃します。
 大掃除の規模ではなくても中掃除という日課です。
 カレー当番以外の調理員は午前中から掃除に励みます。
 また、週末は代休を消化する隊員が多く、数モノの食品(※コロッケやハンバーグなどひとり何個っていう食品)より給食数の変化に機動対応できるからです。
 そんな事情もあってカレーは週末に重宝されたのです。

🍛カレーとお休み 切ってきれない間柄

 金曜カレーが当たり前になったのは完全週休二日制が定着した1993年からです。
 それ以前は『カレーを食べたら休日』です。馬鹿者若者に『週末という解放感』を仕込んだ主犯がカレーです。
 海自がカレーを特別視する遠因です。『カレー=休日』という心理的な側面が三つ子の魂として脳裏に深く刻みこまれています。三十三子や五十五子となった中毒患者海上自衛隊員は生物学的に消滅するまでカレー中毒です。

🍛カレーを食べると休みだという錯覚が招く・・・

 船乗りには週末が丸々お休みになる「大引(おおび)き」はまれでした。
 平成初期の若年隊員は3~4日に一度当直勤務です。週末も航海している場合は当然休日なし。一か月や二か月休みが取れないのはザラです。
 海外派遣や遠洋航海になると半年単位で休みが一日も無くなります。
 『ブラック企業』が裸足で逃げ出すような環境です。
 小生も年間120日以上ある休日が消化できず、代休が50日を超えることもザラでした。
 自衛隊は労働基準法の適用外です。半年休日を与えなくても処罰されません。民間企業なら新聞沙汰です。
 若いころは一晩熟睡すれば回復しましたが、加齢とともに一日や二日休んでも体力は回復しません。それが半年です。
 そして艦艇勤務は熟睡と縁が薄いのです。一日中、昼も夜も騒音の中に暮らしているのです。寝室だって決して無音にはなりません。

🍛海外派遣=休みなし カレーで機嫌を取る?

 海外派遣では休暇を取れなくても寄港地があれば、史跡見学や勤務外の上陸などでストレスを発散します。
 しかし情勢が不安定な地域では港外で燃料や食料を補給し、上陸できずに活動を続ける場合もあります。
 若年隊員に艦艇勤務が人気薄なのも当然です。
 それゆえ食事の充実は、数少ない楽しみを提供するアイテムです。
 結果『カレー選手大活躍』となります。

🍛問題【手抜き料理のカレーがなぜご馳走?】

答え【発信力の高いエライ人ほど海軍カレーが食べれなくなるからです】  
 
若い時代「汗で濡れた上着がタオルのように絞れる」
過酷な環境で勤務していたエライ人にとって数少ない楽しみがカレーだったのです。
 頭も身体も酷使し、カロリー不足と戦っているのに【とんかつやエビフラ
イ・ハンバーグ】
は好きなだけ食べれません。不足する満足感とカロリーを主食のライスで埋めます。
 カレーライスはメインディッシュですが汁物です。カレーソースは他の汁物同様に盛り放題、お替り自由なです。
 そのカレーが娑婆で食べていたカレーより
「コクがある。」
「旨味や甘味、辛味、酸味が豊富」
なのです。マズイ食べ物であるはずがない!
 【カレーこそ偉くなった昔の若者を支え育て励ました戦友です。】
 海自隊員がカレーライスを必要以上に美化しノスタルジーを感じるのはそのせいです。

🍛我が船のカレーが一番

 そして多くの乗組員が「ウチの船のカレーが一番美味しい」と喜んで食べます。
 大量に作ったカレーが毎週「神隠し」にあい絶滅します。
 調理員は「俺の作るカレーが一番美味しい」と勘違いし、自信を深めます。やりがいは俄然高まります。
 さらにレシピを試行錯誤し、技量に磨きをかけるのは当然です。
「手抜きする」不心得者もゼロではありません。
 でも口々に「美味しい」と最大の惨事賛辞を送ってくれる【カレー大明神】を不味く作るには並外れた鈍感力か勇気が必要です。
 結果としてどの船の調理員もカレー作りに研鑽します。

 基本的な作り方は同じでも、それぞれの隊員が研究し努力を惜しまない食べ物です。レベルを持続するのは当然です。
 そして海自のカレーライスは船乗り特有の文化と調和し、様々なアレンジを経て、独特の進化を遂げたのです。

※この文章は「美味しい海軍カレーのレシピ 海尾守」の抜粋再編集版です。Amazon kindle の電子書籍でご覧いただけます。またkindle Unlimtedにも登録しています。興味がございましたらご一読ください。


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