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#4『キング』昭和三年六月号から読み解く大正末期・昭和初期ごろの語彙


書き溜めていたが異体字を記載するのが面倒だったのでアップできず、前回からかなり時間がたってしまった。異体字のテキスト化はIMEパッドに書いて検索しているのでそこそこ手間がかかる。

現状デフォルトのOCRでは現代のテキストでさえ精度が微妙だ。一方、近代のテキストは異体字を含んでいるため精度がさらに悪化してしまう。なのでこういった人間の手作業は仕方ないのかもしれない。
今後、AIOCRの導入も考えてみたい。Googleが無料のを出してるっぽいので

●基本事項


・基本的に文法は近現代的な熟語に付随して古典文法に則った動詞化とその活用が行われる。

・漢字の送り仮名が少なく、漢字に対し多く読みがある場合が多い。

※現代語に相当するものは逐語訳ではなくニュアンス的に現代語に当てはまると私が考えるもの。ただの逐語訳だと実際に現代の実際の口語表現、文語表現ともにそぐわないと感じたため。なお必要なものは逐語訳を近代語の方に乗せる
※頻出かつダブるものは最初に取り上げ、それ以降は省略する
※表現を取り上げる際は「このフレーズ、近代だとどう言うのかな?」という疑問に答えるため先に現代語を載せ、後ろに近代語を載せる
※表現を取り上げる際は現代語、近代語ともに現代の漢字を用い、カッコつきで異体字verを載せる。仮名遣いは現代は現代仮名遣い、近代は歴史的仮名遣いを用いる
※異体字を取り上げる際は先に現代語のちに異体字を載せる
※表現、異体字ともに現代でも使うであろうものでも普及していないものは注目して取り扱う


※動詞・形容詞を取り上げる際は終止形に適宜直してから表記する(基準は私が気持ち悪いと思うかそうでないか)
※ここまで厳格に書いてるように見えるが実際は適当に書いている。わずかな違いしかない異体字に関しては取り扱わないこともある。

・凡例    △異体字  ・表現  ★そのページを検査したときの感想、補足


会話形式の広告

●広告欄 p10 「マーシー」の広告

△剤→劑
△変→變

・あなた→貴女(あなた) (指されている人物は男)
・~する人がいる、~する人はいない
 →~する者がある、~する者は無い
・ドクター→ドクトル(小説などで有名な言い方かと思う)

★これは女学生と男子の大学生の会話の一部を創作して商品を宣伝するタイプの広告。今では胡散臭い広告の筆頭だが当時は有効な広告の一つだったりするのだろうか。語尾に「~ワヨ」「かナ」とカタカナが入るのが面白い。現代のおじさん構文みたいで情趣がある。


新井石禅の講演集と三つの広告

●広告欄 p11 新井石禅の講演集の広告

・尊敬、慕うこと→渇仰
・もたらす→齎す
もたらすに漢字があったのは知らなかった。
・たちまち→忽
古文・漢文で出てくるから取り扱う必要性は低いが念のため掲載。

★当時の有名な曹洞宗の僧侶の法話を集めた本の広告。この人が歴史的に意義のある行為をしたかどうかは不明。


●広告欄 p12 フリー広告欄


△与ふ→與ふ
△鉄→鐵

・絶え間ない、ひっきりなし→引も切らない


★「見る」というマ行上一段活用の動詞に古典文法の過去の助動詞の「き」の連体形がついている。他の動詞はほとんどが古典文法に準じている一方、今までの広告欄での「見る」に接続する助動詞は現代国語文法の「た」が多かった。しかし、ここでは古典文法の助動詞が使われている。このことから昭和三年当時は古典文法と現代国語文法が混合されて使われていることが分かる。詳細には、現代国語文法が体系化される以前から少しずつ現代国語文法が使用されている例と言える。(私は近現代の国語の歴史を深堀りしたことがないので内実はよく知らないので申し訳ない)

★鉄道員養成講座の広告だが、やはり面白いのは「日本青年活躍の舞台は全国内地は勿論朝鮮満州樺太の遠きに及ぶ。」という部分だ。租借地、植民地があると原材料の確保、産業の発展ができるというだけでなく良い働き口も増えるということがあるのだろう。人手がますます必要ということで鉄道員は当時一級の堅気の仕事だったと推察できる。


●終わりに

近代の国語の文法体系は古典で熟語は現代とほぼ同じ、それがどのように現代国語文法の体系にフェーズしていったか少し気になったので今後調べていきたい。
おまけで気に入った語彙を日常生活で使ってみるとどうなるか考えてみる

・「きみが渇仰してるVtuberの名前はなんだったっけ?」


※近代語の遊び方:普通の会話の中にバチボコに硬くて渋い近代の熟語を混ぜ入れてジェットコースター並みの落差をたしなむ。


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