半袖の強者

辺りを見渡すといつの間にか人々の服装が段々と分厚くなる季節になってきた。
信号待ち1つでも、なんだか待ってる時間が億劫になる寒さとなってきてしまった。

日本列島が「寒気」という日本人が好まない魔法に包まれたある日。
仕事に向かう道中で信号という信号に引っかかってしまい、長袖に上着を羽織っていても寒さを感じるいや〜な1分半が駅に着くまで3回あった。

こういう時、私は決まって同じく信号に引っかかった人たちを人間観察して勝手にこんな人かなぁとか妄想を膨らませる。
寒さを紛らすためにせめてもの時間潰しである。

この日は途中から同じタイミングで同じ信号に引っかかったクロスバイクに乗ったお兄さんがいた。
季節に似合わず、半袖の白Tで少し日焼けをした風なお洒落な感じの人だった。
ただ、意識せずとも目に入ってくる横顔は言葉にしなくてもひと目でわかるほど寒そうであった。
ではなぜこのお兄さんは半袖を着ているのだろうか。

信号待ちの間に考えを巡らしていく。
真冬でもめちゃくちゃ寒くても半袖しか着ないけど、中身はそれに似合わずめちゃくちゃ繊細で典型的な気は優しくて力持ちタイプって感じだろうか。

1分半もすれば、あっという間に信号が青に変わる。
自分なりの簡単な結論を出す。
たぶんこの人はシンプルにいつも通りの格好をしてきたら、分かりやすく季節の変わり目に服装をミスった人なのだろう。天気予報は見ないタイプの。

なんとなく自分で納得解を見つけて、冷えた身体に反してなんだかほんの少しだけ心が温まった気がした朝6時半だった。

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