ずっと食う

普通しか停まらない駅の電車を待つ間の話をしよう。

この日は帰りに乗ろうとした電車が目の前で行ってしまい、12分次の電車を椅子に座ってぼーっと待ちぼうけていた。

ルーティンのようにイヤホンをリュックから取り出して、1日仕事を頑張った自分にどのアーティストの曲を聴こうかという贅沢な悩みの時間が訪れる。
両耳が「ご褒美をくれ!」といわんばかりに音楽を欲している。

すると、2つ席を空けて男性が1人座った。
おもむろにカバンから食べ物を取り出す。
パンを食べている。
クリームパンだろうか?彼はわずか3口で平らげてしまった。

思わず辞書に載っている意味のような二度見をしてしまった。
でもまあ、ここまでは別におかしくもない光景のように感じられる。

sumikaの心地良いサウンドが疲れた身体に染み渡ってゆく。私はそんな贅沢な音楽をBGMにその男性にバレない程度に見入ってしまう。
どうやら耳から流れる「フィクション」に反して目の前の現象は「ノンフィクション」のようだ。

続いて、スナック菓子と思われるものを直食い。
まるで、カレーを飲み物として平らげるように一瞬で口の中に運ばれていく。

さらに、畳み掛けるようにバナナ。それも1本の個包装ではなく、房から2本むしって。ここまで来れば呆気に取られるほかない。

とどめにコーヒーを一気飲みしたところで待ちわびた電車が到着。
恐らく同じようにこの電車を待ちわびたであろう乗客と一緒に乗り込む。

すると驚くなかれ。なんとその男性は電車に乗る気配が全くないのである。
冒頭にも言ったが、この駅は普通しか停まらない駅である。この電車を逃すとまた10分次の電車を待たないといけない。

彼は駅のベンチでゆっくり食事をすることに悦を感じるタイプの人なのであろうか?

仕事終わりにまさかの仕事に関するものではないことで?(はてな)が残る夜となった。

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