「夢の実現列車」
お花見シーズンもすっかり終わった公園のベンチでなにやら話し込んでる二人は、やっぱり「雅夫くん」と「光治くん」ですね。
ちょっと二人の話を聞いてみましょうね♪
雅夫:隆、覚えてるか。
光治:うん覚えてるよ。江戸で社長してるって言ってたな~
雅夫:社長辞めて漁師になりたいんだと。
光治:ほう、いいじゃないか。
雅夫:ところがさ、あいつ泳げねぇんだと。
光治:え! あいつ "金づち" か?
雅夫:そうなんだとよ、だからオレ言ってやったんだ。「そんなこと気にすることはねぇ。ちょっと考えてみろ、パイロットやってる奴で空飛べる奴なんか一人もいねえぞ!」ってね。
光治:あはは、そりゃそうだ。
雅夫:なぁ光治、この頃はリスクだけ考えてなんにもできねぇでいる奴、多くねぇか?
光治:確かにな〜 「まずやって見る」って奴、少ねぇな〜
雅夫:そうだろう「夢はある、やりたいこともある、でも…… 」って、絶対言うんだよ。
光治:たしかにな~ みんな「でも……」って、口癖になってるな。「なんだ、はじめる前からもう言い訳か?」って突っ込みたくなるよ。
雅夫:だろう「こうしたい」や「こんな風になりたい」ってのは、本気じゃねぇのさ! みんな『環状線』に乗ってるんだよ。それに気付いてねぇ。
光治:環状線? なんだそりゃ?
雅夫:だからさ、自分の枠の周りをグルグル回る、山手線みたいな物に乗ってるんだよ。電車は動いてる訳だから、どこかにむかっているような感じはするよな。だけど目標にむかっている訳じゃねぇ、自分の作った限界という枠の周りをグルグル回ってるだけなのさ。
光治:なるほど……
雅夫:取りあえず動いてるし、なんとなく目標に近づいてる感じはするわな。だけど環状線だから、やがて元に戻ってしまう。
光治:あぁ、それわかるわ。他人事とは思えないな……
雅夫:だろ。だからオレは一念発起して、環状線を降りて乗り換えたのさ。 『夢を実現する列車に』だよ! 現状打破だよ! マンネリからの脱却! わかるか?
光治:おいおい、なんだか哲学的になってるぞ。
雅夫:茶化すんじゃねぇ、いいかよく聞け。「したい」とか「なりたい」を何万個集めてもダメだ! 大事なことは「する」と決断して列車を乗り換えることだ。
光治:うん、そうだ。その通りだ! その通りなんだが…… う〜ん、ちょっと待て雅夫、お前の場合乗ったの「列車」じゃねぇだろう?
雅夫:何の話だ?
光治:だからさ、違うものに乗ったから、今オレと一緒にここにいるんじゃないのか?
雅夫:いやぁ〜 ま、細かいことはあんまり気にするなって。
光治:細かいことか? まゆみちゃん、カンカンだろう。
雅夫:ま、女に『男のロマン』は理解できねぇさ。
光治:おい雅夫、お前のはロマンじゃねえ。若い女の子食って、ただの浮気じゃねえか!
雅夫:人のことが言えるか光治。お前が今ここにいるのは、お前が会社の女の子つまみ食いしたのがバレたからだろう、このみちゃんに。
光治:違うだろう。おまえがさっきこのみに「男はみんな同じだ。こいつだってこの前の飲み会で…… 」とバラしたからだろう。
雅夫:事実だろう、それは。身から出た錆、自業自得だ!
光治:「・・・・」
雅夫:「・・・・」
雅夫:まだ夜の公園は寒いな…… 酒がすぐさめるよ。
光治:居酒屋でも行くか?
雅夫:そうするか♪
やれやれ、いい年したおバカが二人でなにやってんだか…… 困ったもんです。
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