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【ポイント騒動】


 ここは仙台駅から地下鉄で10分、雅夫くんが同居してるまゆみちゃんのマンションです。

 今日は雅夫くん、いつになく早いお帰りですね。


まゆみ:ただいま~ 雅夫帰ってるの?

雅夫:うん、今日はおとなしく帰ってきたよ。

まゆみ:どういう風の吹き回し。ま、いいけどさ。そんなことよりねぇちょっと聞いてよ。

雅夫:どうしたんだ?

まゆみ:今、タクシーで帰ってきたのね。いっぱい買い物したし、疲れてたからさ。

雅夫:ま、たまにはいいんじゃない。

まゆみ:それが、ちょっとショックでさ~

雅夫:なにかあったのか?

まゆみ:ほら、ポイントカードあるでしょ。

雅夫:それがどうした? 忘れたのか出すの。

まゆみ:ちゃんと出したわよ。そうじゃなくて、問題はタクシーの料金だったの。

雅夫:ん、遠回りでもされた?

まゆみ:じゃなくて、ちゃんと聞いてよ。

雅夫:だったらちゃんと話せよ。

まゆみ:んもう、だからタクシー代990円だったのよ。

雅夫:なんだ、安かったじゃないか。いつもは1070円か1150円だろう。よかったじゃないか、安くて。

まゆみ:よくないのよ、それじゃ。

雅夫:なんでだよ、安いほうがいいじゃないか。

まゆみ:だって、ポイント 1点しか付かないのよ。この前48点だったから「今日は絶対満点だ! 500円のクオカード貰える」って思ってたのに。なのに、もうちょっとってところで運転手さん「 ピ!」ってメーター止めるもんだから。

雅夫:だって、ドライバーさん気をきかせて止めたんだろう。そうじゃないと 1070円になってた訳だし。

まゆみ:いらないわよそんな気遣い。あと80円で500円もらえたのに……

雅夫:いやまゆみ、ちょっとそれは違うだろう。あと80円で貰えたのは1点だろう。

まゆみ:だってもう1点貰えば50点になるのよ。そうすると500円のクオカードと交換できるのよ、だから500円貰えたのよ。なんでこんな簡単な計算わかんないの?

雅夫:だから、それは違うだろうって。たまたまポイントが48点だったからの話じゃないか。

 よく考えてみろよ「50点で500円」ってことは、「1点が10円」ってことだろう。80円使って10円買うのと一緒じゃないか、70円の損だろう。

まゆみ:なんで10円なのよ、あと1点あれば50点になるのよ。80円使っても500円貰えるんだから、420円得するじゃない。なんで70円の損なのよ、なんでこんな簡単な計算できないの?

雅夫:ダメだこりゃ。はいはいわかりました、バッカじゃねぇの。


まゆみ:なにその言い方。「バカ」って言った! 今言ったよね「バカ」って。すんごく気分悪っ。

雅夫:あぁ言ったよ! バカにバカって言って、なにが悪い。

まゆみ:ふん、なによわからず屋。あんたこそバッカじゃないの、浮気したくせに。

雅夫:おい、今その話してるんじゃねぇだろう。

まゆみ:なに大きな声出してるの。すぐ怒って大きな声出すんだから、自分が悪いくせに。浮気したの、あなたでしょ。

雅夫:今、その話してるんじゃねぇだろう。ポイントの話してるんじゃないか。

まゆみ:だから大きな声出さないで! ちゃんと聞こえてるわ。自分に都合が悪くなると、すぐ怒って大きな声出すんだから! あんたなんかキライ、出てって!

雅夫:あぁなに言ってんだよ、出ていけだと!

まゆみ:「大きな声出さないで!」って言ったでしょ!

バカ!  浮気者! だーいキライ! もう顔も見たくない! 早く出てってよ!

雅夫:あぁそうですか、わかったよ。出ていきますよ。出ていけばいいんでしょ! 出ていけば!



 まいったね…… 頭きて飛び出したから、スマホは忘れる…… 財布は忘れる…… なんとも情けない……

光治:で「ここで途方にくれてる……」と。

雅夫:「そうなんです……」 って、え? 光治なんでおまえ? え?

光治:ははは、まゆみちゃんから電話きたんだよ。「 おまえが財布もスマホも持たないで出ていったけど、どうしよう」ってね。

雅夫:光治…… 助かったよ。

光治:一緒に帰ろ、雅夫。大丈夫「私も言いすぎた……」って、まゆみちゃんも言ってたからさ。

雅夫:うん、本当、光治ありがとう。

光治:いいってことよ。友だちじゃないか、俺たち。


 やっぱり友だちって、いいですね。え! 雅夫くんがその後どうなったかって? そんなの、あたしゃ知りませんよ。

 まぁ、うまく仲直りしてるでしょう。きっとね。




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