見出し画像

【新テニミュ】中学生と高校生が隔てられた舞台と、手塚国光の存在【レボライ配信】


1.新テニスの王子様


 みなさんこんにちは。

 みなさんは、新テニスの王子様を知っていますか?
 私は知ってます。

 テニスの王子様が完結したのちの物語。
 U-17合宿に呼ばれたキャラクターの面々と高校生達が血湧き肉躍る戦いののち、一丸となって世界大会に出場する……といったお話です。
 主人公の越前リョーマはもちろん、手塚国光、幸村精市、そして跡部景吾。今まで敵だったキャラクター達が仲間になる。オールスター戦、というわけです。

 さて、今回はそんな新テニスの王子様がミュージカルになった、しかもそのライブが配信される、と聞きさっそくU-NEXTに登録。ライブの配信を購入しましたので、感想をレポートしていきたいと思います。

 なお、数度視聴しましたが、さすがに歌詞を全て覚えることは不可能だったため、歌詞パート『』は正規歌詞ではなく意訳で表現させていただきます。


2.レボリューションライブと鬼十次郎


 そもそも私は、新テニスの王子様のミュージカルを見たことがありません
 数日前に書いた記事の通り、テニミュというものをきちんと見たのは3rd全国青学vs立海前編のBlu-rayが初めて。
 ですが、今回はちょうどよく「配信」していることもあり、本編ではなくライブを見ることに。

 テニミュは本公演ののち、曲目だけのコンサートがある、ということは事前情報にて知っていました。まさか本公演を見ずにコンサートを見ることになるとは思っていませんでしたが、ちゃんと楽しんで見ることができました。

 なんといっても、本公演は「生演奏」。宝塚歌劇に親しんで久しい私にとって、生演奏であるということだけで嬉しく思います。宝塚歌劇と出会った頃は、宝塚しか知らなさすぎるあまり、ミュージカルは生演奏が当たり前と思っていましたから……。そうでないと知った時は少しショックだったものです。
 この生演奏がまたかっこいい。センターステージ中央に配置されたブロックでの演奏。空間を裂くようなギターソロ。演出がカッコよくて仕方がありません。この演奏を聞くためだけに現地に行きたい!と思ってしまったほどです。

 そして、私が特に紹介したいのは、鬼十次郎と遠山金太郎のデュエットソングです。
 鬼十次郎は、実は高校生メンバーの中でいちばんのお気に入りです。彼の芯の強さと、溢れ出る優しさは高校生の中での彼の存在を浮き立たせています。
 そんな彼にどんな楽曲が提供されているのか。楽しみだった私の前に前半突如提供される鬼十次郎メドレー。一曲目は桃城武vs鬼十次郎。この歌もとてもいい。花道を渡った中央のステージで繰り広げられる熱いラリー。しかし、本番はこの後にあったのです。
 鬼十次郎vs遠山金太郎。遠山金太郎の動きは激しく、エキセントリックで、心からテニスを楽しんでいる。鬼十次郎が『俺とのテニスで苦しめてやる』と歌った後に『鬼とのテニスは笑いが止まらん』と返す彼の笑顔がとても素敵です。
 苦しめてやる、といっていたはずの鬼十次郎が段々と遠山金太郎のテニスに引っ張られて本来の優しさを見せ始め、そして「天衣無縫」のデュエット(桃城武もきてくれます)に繋がる。
 『試合大好き、勝つの大好き!』という歌詞がとても明るく、見ていてこちらも笑顔になります。鬼十次郎の怖さ、厳しさ、それが段々と優しさや高校生らしい姿に変わっていく、曲の楽しさに合わせて変幻自在に表情を変える役者さんの凄さを目の当たりにしました。

 正直なところ、本編を見なければ役者さんの演技力や演出方針はあまりわからないだろうな、と思っていました。しかし、鬼十次郎のメドレーでそんなことはないと自分の考えを改めました。
 たったの三曲のメドレーだけで、鬼十次郎の演技の姿勢が見えてきます。桃城武と試合をしていた時の「圧倒的な力を持つ高校生」の演技、そして遠山金太郎との1曲目でその演技が少しずつ和らぎ、「天衣無縫」の歌では人が変わったような表情を見せる。
 そして、それが重要な要因となります。
 なぜなら、このライブでは高校生と中学生に隔たりがあります。あえてそういう演出となっているのだと思います。高校生と中学生が肩を並べることはなく、基本的には向かい合っている。しかし、唯一そうではない存在がいます。それが鬼十次郎です。
 メドレー後に、七人の高校生と共に歌う鬼十次郎。彼だけが、他の高校生と違い正面ではなく中学生の側に立ってくれるのです。役者の演技力だけではなく、その後のライブの構成に繋がる大切な鬼十次郎という存在を前半3曲のメドレーで描いた演出の妙も見えてきます。

3.中学生と高校生に与えられた隔たりと、手塚国光

 
 高校生と中学生を、隔てて描いている
 これが感想の中心的な部分になります。

 前述した鬼十次郎以外の高校生は、中学生の前に立ちはだかる存在として描かれています。兄弟であるはずの越前リョーマと越前リョーガの曲でさえ、『遊び場ではなく戦場で再開した』と歌われ、二人は横並びではなく背中合わせの存在として演出されています。

 特に、越前リョーマvs徳川カズヤ、跡部景吾vs入江奏汰、越前リョーガvs亜久津仁。これらの演出における高校生たちの強さの演出は物凄いものがありました。
 あの越前リョーマ相手に『態度がでかい』と言い放つ。あの跡部景吾が地面に這いつくばり、亜久津仁は『テニスを教えてやろうか? ボールをラケットで打つくらいお前にもできるだろ』とことん揶揄われる。そんな演出は新テニスの王子様でしかできないでしょう。

 また、迫真の平等院鳳凰vs徳川カズヤ。この試合の音楽の勢い、重厚感は、中学生たちに付け入る隙を与えないかのようです。中学生たちなど歯牙にもかけない姿は、まさに「強者」を思わせる演出です。

 高校生たちの最後の歌も良いです。『子どもは家でいい子にしてな』という歌詞から、『いざ世界へ 世界が俺たちを待つのではなく、俺たちが世界を待っていた』と歌い上げる。彼らが見ているのは中学生ではなく世界。格の違いがそこにはあります。
 その歌をあえて序盤に歌うのではなく後半に歌う。歌そのものの盛り上がりが大きく、トリに相応しいという意味ももちろんあるのでしょうが、加えて、それまでの楽曲を聴くことにより「高校生たちの圧倒的強さ」が増大する。いちばん最初にこの歌を歌ったのでは台無しです。最後に歌うからこそ、この歌に込められた意味に重みが生まれる

 さて、そんな隔たりの中、唯一そことは異なる存在として描かれた男。それが手塚国光です。
 中学生たちの歌を振り返ってみると、『鬼のおっちゃん、手え抜くなよ』と挑発する遠山金太郎。『絶対折り合わない二人だけど、なんだかうまく行きそう!』と笑う切原赤也と白石蔵之介。『俺の城を破壊できるか!』と歌い上げる丸井ブン太など、さまざまなポテンシャルで高校生に挑む姿が歌われています。
 その中で、手塚国光だけは常に異質です。
 誰もが中学生を歯牙にもかけない中、手塚国光だけは『君こそが真の部長だ』とむしろ見上げられる存在かのような歌われ方をします。そして、そっとテニスラケットを抱きしめ、『テニスが愛しい』と心からのテニスへの思いを吐き出すのです。彼だけは、中学生たちの中で圧倒的に別の存在としてこのコンサートでは演出されているように思います。
 中学生たちは高校生たちを見ている。高校生たちは世界を見ている。そして、手塚国光はテニスを見ている。
 先ほど高校生たちを中学生とは「格が違う」と書きましたが、手塚国光はこのコンサートで圧倒的に「次元が違う」存在です。彼の歌がそうさせているのですが、やはりその歌をチョイスし、振り付けや演技込みで彼を別個の存在として引き立たせているのは演出です。
 手塚国光は、漫画ではU-17合宿から自主的に去り、ドイツへ向かいます。その展開をどうにか歌だけで伝えようとしている。それが伝わってきました。


4.最後に細々とした感想を


 今回の越前リョーマは、なんと言っても少年らしい演技で可愛らしかったです。ラストの「じゃ、サンキュ」の言い方のぶっきらぼうなところが、まさに中学生、という感じでした。9日の公演の越前リョーガとの歌の部分の彼は弟のような可愛らしさが全開で、こちらまで微笑ましくなってしまいます。
 ただ、歌に関しては声が低くてところどころ出しづらそうでした。少しだけキーを調節してあげて欲しかったですね。

 また、三船コーチの歌は素晴らしい。私は9日の配信を買ったので、少し声が詰まってしまった部分も見てしまったのですが(トークでそんな話もしていたような記憶)それを含めても誰よりも上手です。なんと言っても低音の伸びや響きが違いました。
 テニミュでもったいなく思うのは、どうしてもミュージカルの経験のない若者にとって低い歌声が出しづらく伸びにくい部分です。海堂薫の歌は特に常に低くて、どの役者さんも出しづらそうにしています。低音がもっと伸びれば、聴きやすくなる歌も多いのに……と思っていたところ、三船コーチが投下され、私は「なんて聴きやすいんだろう。ミュージカルってこうだよなあ」なんて思ってしまいました。
 彼の歌に感化されて、若い役者さん達の歌の技術が向上するきっかけになれば素敵だな、などと思ったりしました。

 全体的に、高校生達の歌は特に中学生達と比べると上手だったように思います。平等院鳳凰の歌声や、遠野篤京の癖のある歌い方と正当な歌い方のスイッチングなんかは見事でした。

 さて、今回のレポは以上です。
 すでにBlu-rayの発売時期を調べたりしてしまいました。多分買ってしまうと思います……テニミュというジャンルが怖いです。
 次回は関東大会 青学vs立海のレポが書けたらと思っています。
 それでは。

レボライのBlu-rayはアニメイトで予約できるそうです。
こぞって予約しましょう。
https://www.animate-onlineshop.jp/products/detail.php?product_id=2153364


この記事が参加している募集