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私立医学部の世界 〜前編〜

はじめに

第二回は私立の医学部生活について赤裸々に話したい。
おそらく長くなると思うので2部または3部編成でお付き合い願いたい。

非医師・非医学部生の方向けに、イメージがつきやすいように話していきたい。(医学部生の方にも共感していただけたら嬉しい)

本来であれば医学部受験についてから話すのが筋だろうけど、なんせ私が医学部を受験したのは約10年前であり、その時の知識を大言壮語に話してもなんの役にも立たないので、今回は比較的記憶の新しい大学生活について話していく。

あえて私立医学部と書いているのは、国立医学部と私立医学部は全くの別物であるからだ。周りを取り巻く環境から進級状況、学費など何をとっても全く異なる。
私が所属していたのは私立の医学部であるので私立について書いていく。

医学部は1学年100〜130人ほどで構成されており、留年や休学があるので入れ替わりは激しいが、基本は6年間同じメンバーで過ごす。それはまるで小さな集落のような環境だ。
誰が誰に手を出した、誰と誰は穴兄弟だ、などの噂は一夜にして一瞬に広まる。
非常に狭いコミュニティで、井の中の医大生として生きていく。

お金事情

まずはじめに、やはり私立医学部を語る上で欠かせない話題は金銭面だろう。

学費は安いところでも6年間で1850万円、高いところは4550万円もかかる。
入学金だけでも150万円ほどかかる。
国立医学部の学費より桁が一つ多いのだ。

特待制度や奨学金制度があり、実際使っている人も多い(自分も使っていた)が、やはり卒後の縛りなどがあり必ずしも良い制度とはいえない。

こうした大学(私立医大)に集まる学生は、文字通りボンボンとお嬢様しかいない。
学生駐車場を一周するだけでも東京モーターショーに匹敵する車種に出会える。
暇な時(授業をサボって)は指を加えてよく高級車を眺めに行ったものだ。

ポルシェ、レクサス、ベンツ、BMW、アウディ、ボルボ、、、
ちなみに私は6年間一度も車を持っていなかったが実際はそこまで苦労しなかった。

親は開業医や有名企業の社長、投資家などがほとんどで私のようなサラリーマンの親を持つボンは少なかった。

中でも一番のお金持ちの同級生は、父が社長、母が美容外科の開業医でロールスロイスとブガッティの2台持ちだ。
あまりにも次元が違いすぎる。

第一回の自己紹介でうちは比較的裕福な家庭と述べたが、私立医学部に入ると下層も下層、惨めなほどの域になる。
宇宙サバイバル編を目の当たりにしたクリリンのような気分だ。

しかしやはり穏やかな性格の人が多く、周りのことは気にしない人が多かったので肩身の狭い思いはせずに生活できた。(無神経なだけだったかもしれないが)

大学1年生

入学してまず最初の一大イベントは部活の勧誘である。
医学部はサークルではなく部活がメインになる。

東日本に所属する医学部対抗の東医体、西日本に所属する医学部対抗の西医体という大会が年に一回あり、両者の頂点が戦う全医体というもので全医学部の頂点を決める。

全国の医学部はこの大会に向けて全身全霊をかけて?部活動に励む。
(実際は本気で取り組む人は一部で大半は飲み会や男女関係の構築に励む)

各部活が勧誘のためにお昼休み・放課後と毎日大教室にやってきて必死に勧誘する。
放課後はしゃぶしゃぶや焼肉などをただで食べられるので一年生はこの約2〜3週間はお客様気分を味わえる。

ある程度部活が絞られていくと、今度は本格的な個別勧誘が始まる。
高級焼肉店に連れて行ってもらったり、テニス部では先輩からラケットのプレゼントがあったりなどその競争は競争は終盤戦に向けてどんどん激化していく。

晴れて部活が決まると、今度は学年のオリエンテーションが待っている。
1年生全員で日帰りや泊まりで遠足に行き、ひたすら仲を深める企画がある。

私の学校では、初日の夜に「オスとりゲーム」という非常に狂った企画があった。
これは、男子が椅子取りゲームの椅子役になるのだ。
膝の上に女子が座るという、男子にとっては願ってもない企画である。
私の記憶にも深く刻まれている。

当然のことながら数年後保護者からクレームがあり、現在はこの企画はなくなってしまったそうだ。

長かったお楽しみ期間が終わると、徐々に勉学が始まってくる。
1年生のうちは教養がメインになるので、他学部とそう大きな変化はない。
ただ、早くもここから少しずつ医師としての自覚(洗脳)を芽生えさせるのだ。

実習と題して朝7時前から病院の前で一時間以上挨拶をするために立たされたり、看護師長(王下七武海的存在)に100人超の列をなして頭髪チェック(髪の長さや色を厳しく見られる)が行われたりする。

1年生の後半では、ついに基礎医学が始まる。
医学には基礎医学と臨床医学があり、臨床医学はよく病院で耳にする内科学や外科学など、基礎医学は文字通り臨床の基礎になる科目である。

1年生に始まる基礎医学で最も重要な科目はやはり解剖学である。
臓器だけではなく骨や筋肉、神経など想像の域には収まらないほど多量の知識を詰め込む。
これらはしっかりやらないと、2年生で始まる解剖学実習(実際のご献体が相手)で苦労する。

1年生の時から進級は厳しく、この時点で留年の素質があるか(大体留年する人は毎年同じ人が多い)わかってくる。

基本的には二期制で夏休み前と年度末前にそれぞれの科目の試験が毎回ある。
この時期になると自習室・図書室・大教室・付近の喫茶店は医大生で埋め尽くされ、朝9時から夜9時まで2週間ほど缶詰になるのが風物詩である。

本試験は一発で受からなくとも追試(1教科3,000円)があり、それも落ちると追々試(1教科5,000円)がある。

追々試は2教科までしかいけないなどのルールがあり、追試で3教科以上落ちると留年が確定する。(科目数は10〜15教科と記憶している)

晴れて本試験で進級が決まれば1ヶ月以上の春休みが与えられ、大学生活を謳歌できる。

一方進級会議というものが3月の中旬にある。
追々試まで行った輩はこの会議に挙げられ、数日後に進級の可否が発表される。
春休みなんてものはない。



よく勘違いされるのが、医大生は忙しくてバイトなんてできないと言われることが多い。
全くもってそんなことはない。

私を含め多くの医大生がバイトをやっていた。
多くは塾講師や家庭教師が多かったが、飲食やサービスの類をやっている同級生もいた。

これはあくまで私見だが、ここでごく一般的な社会経験をしているか否か、これは今後医大生活、ひいては医者人生のクオリティに大きく左右すると思っている。


今回は長くなってしまったのでここまで。
次回は大学2年生から始めていきたい。

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