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003 労災の給付が受けられない?通勤編

労災保険の給付を受けることができるのは、業務上または通勤途上が原因のケガなどです。
ケガの状況によっては、業務時間内や通勤途中であっても労災からの給付を受けられない場合が存在します。

今回は、通勤途上のケガについて話してみます。

労災保険でいうところの「通勤」とは、住居と就業場所を合理的な経路及び方法によって往復する行為をいいます。そのほかにも単身赴任先から自宅への往復もありますが今回は省きます。
で、言い換えると、仕事に行く際、または仕事から帰る際に、真っ直ぐに目的地へ向かっている最中にけがしたら労災保険の給付を受けられるけど、道を逸れたり、遠回りしたら給付は出ないかもしれない、ということです。

例えば、会社から家に帰る途中に同僚と居酒屋で2時間ほど飲んで、その後帰宅中に転倒してケガをしたとします。この場合、おそらく労災保険の給付を受けられません。なぜなら、自宅へ帰る途中に通勤経路を外れており、また、2時間ほどの飲食時間が日常生活必要な行為とは認められず、その後通勤経路に戻ったとしても給付の対象となるのは困難だからです。

では、次の場合はどうでしょう。
独身者のAさんは、家に帰って夕飯を食べることもあるけれど、ほとんどが帰宅途中にある定食屋さんで済ませていました。ある日、定食屋さんで30分ほどで夕飯を食べて、その後帰宅途中にケガをしたとします。この場合は、労災保険の給付を受けられる可能性は高いです。なぜならば、通勤の途中に逸脱や中断があれば通勤とはなりませんが、日常生活上必要な行為(日用品の購入など)をやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、逸脱または中断の間を除き、合理的な経路に復した後は再び「通勤」となるとされているからです。
Aさんが、夕飯を外で食べることは日常生活上必要な行為と考えられます。ところが、Aさんには家族がいて毎日夕飯を自宅で食べている場合は、どうでしょう?ひょっとしたら、認められないかもしれません。
つまり、同じような通勤であったとしても、その時の状況によって保険給付が認められたり、認められないことがあるのです。

なお、Aさんが夕飯を外で食べることが、日常生活上必要な行為と認められるとしても、定食屋さんの店の中で転倒してケガした場合は労災保険の給付を受けられません。あくまで、通勤経路上で転倒してケガをしなければ「通勤途上」とは認められないです。

労災保険の「通勤」の考え方(基準)は有りますが、それが絶対的基準ではなくて、多少基準から外れていたとしても、その時の事情や状況によって通勤と認められる場合もあります。
もし、行政側にダメと言われても諦めずに調べてみましょう。
行政の処分が「不支給」だとしても、不服申し立てを行うことができる制度があったり、その後裁判所にも訴えることが可能です。


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