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1996年9月7日(土)《BN》

【道:前田 法重・中島 一州・原田 公司・大塚 仁・中尾 智史・本田 仁】
「いやー、でも男は辛いですよね」
「別に辛くはないぞ」
 思わず漏らした原田 公司の言葉を聞いて、前田 法重は軽く突っ込みを入れた。ここは居酒屋『道』。本日も美味しい料理とお酒を求めてたくさんの客が訪れている。前田と秘書官のメンバーたちもそれが当然のように飲み会を開始し、当然のように大量のアルコールを消費している。先月の4日にお亡くなりになった俳優の渥美 清さんに対して9月3日に国民栄誉賞が贈られた。超有名な映画「男はつらいよ」シリーズ主演の他、たくさんの作品に出演されており、作品を見たことがなくとも、渥美さんを知らない人はいないと言えるほど有名な人である。
「何作かしか見たことないんですよね」
「俺もっす。テレビでやってるやつをいくつか見ました」
 作品の視聴について大塚 仁が言葉を発し、その後で中尾 智史も自分の状況について口にした。作品を見る方法としては、映画については放映期間中に映画館で見るのが王道であるが、そうでない場合は録画されたビデオを知り合いか、レンタルショップで借りる、もしくはテレビ放送がある時に見るという選択となる。「男はつらいよ」シリーズは確かに名作であることは認めるが、20代の若者が借りてまで見るかといえば余程のファンでなければそうではないと考えられる。また、テレビで放映があったとしても、その裏番組次第では見たくても見れない状況になる。もちろんビデオに録画すれば済む話ではあるが、見たい番組が重なるとそれも難しい状況であると言わざるを得ない。
「俺は結構見てるけどね」
「俺も見てる方だとは思います」
 この中では年長の中島 一州と、前田がある程度の作品には目を通していることを口にする。やはり少しだけとはいえ年齢が上の方が視聴割合は高いようである。
「それはともかく話を戻しますが、原田さんに何か辛いことがあるんですか」
「お前は、俺を何だと思ってるんだと問い詰めたいよ」
 冷静な口調で疑問に思ったことを口にした本田 仁に対して、原田はため息混じりに突っ込みを返したのであった。

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