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1996年6月26日(水)《BN》

【冒険者組織職員室:大西 誠ニ・小林 みゆき・山口 可奈・大田黒 佳美・吉川 美穂】
「冒険者が住める社宅というかそういうのがあれば」
「あと、病院とかスーパーも欲しいですね」
 深く考えている表情を浮かべながら小林 みゆきが発した言葉の後で、山口 可奈が自分の考えを続けた。ここは午後の冒険者組織職員室。現在各職業の教官4人と、副長官である大西 誠ニが何やら話し合いを行っている。現在話しているのは熊大跡地である冒険者組織地区の再開発計画についてである。現在南地区の最南端エリアに『冒険者組織本館』があり、食事処として『南地区レストラン』が存在している。そして北地区には元々教養部があった場所に『冒険者組織別館』があり、『生協』、『図書館』、『北食』は熊大が移転した後もそのまま営業を行っている。南地区の工学部、理学部関連の地域、北地区の法学部、文学部、教育学部関連の地域はそのまま建物が残っているだけで、現在ほとんど利用されていない。そこでこの余った土地の再開発として冒険者関連の施設を建設予定であるのだ。そこで、今後も冒険者組織を運営する上でどのような施設が必要であるかについて、現在意見を出し合っているのである。
「社宅は北地区の旧教育学部エリアが良さそう」
「病院とスーパーは南地区ですかね」
 どの施設をどこに作るのかについて太田黒 佳美が意見を述べ、それに吉川 美穂も言葉を続ける。冒険者の福利厚生の一環として冒険者用の社宅を作る意見は以前からある。もちろん冒険者は法外な報酬を稼いでいるので、金額的な補填というわけではなく、探索に集中できる環境の提供という意味合いが大きい。その意味でスーパーの誘致も検討されており、現在南地区への店舗展開についてニコニコ堂他、スーパーを運営している企業との交渉が進められている。また、探索には危険がつきものであり、現在は怪我をした冒険者を熊大病院へと運んでいるが、南地区に熊大病院の一部施設を移管することによって、いざという時に迅速に対応できるようにしておきたいのである。
「だいたい皆んなの意見は理解した。特に私から反対することはないので、この内容で話を進めてほしい。足立には私から報告しておく」
 一口残っていたコーヒーを飲み干した後、大西はこう言葉を発して立ち上がり、静かに職員室を後にしたのである。

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