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「アセクシャルである私」と「娘」

まだまだ男社会と言える、ドライバー業界。
この業界に「女性」として20年もいると、色々な事があった。
最近は女性ドライバーも増えて、バリバリ仕事をこなす頼もしい女性も沢山いる。

私がこの業界に入ったばかりの頃は、まだまだ女性は少なく色眼鏡で見られたり、逆に「女のくせに」「女なんか使えない」というような態度をあからさまに取られることも多々あった。
特に私はバラ積みの仕事が多かったので、尚更女性は少ない現場が多く、好奇の目で見られたり、「女なんかよこしやがった」とはっきり言われた事さえあった。

その度に、心の中で「そのセリフ、よ〜く覚えとけ。帰る時には後悔させてやるから」と思い、奮起していたものだった。そして帰り際、相手に「…男連中よりやるな。」と言わせたら、涼しい顔で「ありがとうございました」と言いながら、心の中でガッツポーズをしていたのだった。

そんな負けん気の強さのおかげか、徐々に歓迎してくれる現場も増え、いつの間にやら20年が経っていた。

この業界に入った頃は、離婚してまだ数年後だったので、時々周りの人から「再婚しないの?」とか、「男だらけの業界なのに、気になる人とかいないの?」など、よく聞かれた。
私としては、仕事に家事に育児にと毎日一杯いっぱいだったので、そんな事考える余裕ないし…という感覚だった。

でも、今となって考えてみたら、男性の目も気にせず対等に働き、男性だろうと女性だろうと変わらない態度で接しながらやってこれたのは、私が「アセクシャル」であったからだと思ったりもする。

「アセクシャル」と言っても「………?」という人はまだまだ多いと思う。
現に、私がアセクシャルという言葉を知ったのも40代半ばを過ぎた頃だった。

たまたま見ていたネットニュースでアセクシャルの方が書いた記事を読み、雷で打たれたような衝撃を受けた。
そこに書かれていた内容は、私の人生そのものだったからだ。

「…え…?…私だけじゃないの…?…私、おかしいわけじゃなかったんだ…!」

異性に対し恋愛感情が持てない、と言うより恋愛感情自体が解らない、私は人としておかしいんじゃないか、欠陥人間なんじゃないか…そんな感覚に、何年も苦しめられてきた。

歌手が歌う恋愛ソング。
詩だから、大袈裟に表現しているだけだと思ってた。
「すごい共感する〜」とか言うのを聞くと、「…????」だった。

周りからは、「まだそう思える相手に出会ってないだけだよ。」と言われ続けてきた。いつかそういう感情が持てるようになるに違いない、そう思い続けて、気が付けば40歳半ばを過ぎていた。

「アセクシャル」恋愛感情や性的欲求を感じない人。細かく分類すれば、恋愛感情はあるが性的欲求は無い、恋愛感情も性的欲求も無い…などなど…アロマンティック、ノンセクシャルなどに分かれるが、友情愛情、結婚など、価値観は人それぞれ違う。

LGBTという言葉が浸透し、LGBTQ+、LGBTQIAなどという表現もされるようになってきた。

また、先天的な場合と後天的な場合とがあり、私は後天的。
20代の頃、仕事関係の事から鬱状態になり、全くの無感情、無表情のロボットのような人間になってしまった。そこから、周りの人達の温かさに触れ、徐々に自分を取り戻していったけど、恋愛感情だけは解らなくなったまま。
真剣に向き合えば、そういう感情が解るようになるかもしれない…そう思って、何度も相手に向き合って来たけど無理だった。
私は欠陥人間なんだ、人としておかしいんだ、ずっとそんな思いに悩まされていた。

でも、アセクシャルという言葉を知り、同じ人がいるんだと思えた時、生きるのがすごく楽になった。
私は私でいいんだって思えるようになったから。

今、私には23歳の娘がいる。
娘は、私がアセクシャルであることも、どうして結婚して娘を産んだのかも、どうして離婚したのかも、全て理解してくれている。
だから、性的マイノリティーに対する理解と認識は深い。偏見も無く、そういう人達も友情愛情はあることも理解して、他人に対しても一般論で語ることもなく理解しようとする。

我が子ながら出来た娘だと思う。
ただの親バカかもしれないが…。

以前ラジオ番組で、ある冒険家が言っていた事が印象的だった。
その方は、世界中を旅しているそうで色んな人、色んな文化に触れてきたと。
そして仰っていたのが、「全ての人がみんな正しい、みんな正解なんです。だって、育った環境も、立場も全て一人ひとり違うんですから、価値観もみんな違って当たり前。だから、みんな正しい、みんな正解なんです。」と。

当たり前かもしれないけど忘れがちな事。
自分の価値観で人を判断してないだろうか。

多くの人がこういう価値観だからこれが一般常識、そこから外れた価値観の人は変わった人、常識が無い人。
無意識に、自分のものさしで人を判断してないだろうか…。
「普通はね…」とか「常識ないんじゃないの?」とか…。

つい、そんな考えになってしまう事は、私はしょっちゅうある。

今、トータルウェルネスアドバイザーとして勉強の毎日だが、同士たちにはホントに様々な人がいる。笑顔の裏に、とてつもない重荷を背負ってる人もいる。
考え方もみんな様々。
だけど、同じ目的を持って前を向いている。
これって凄い事だと思う。
みんな違ってみんな同じ。

ここにいる人たちは、相手を決して否定しない。「あなたのペースで、あなたの向かう方向に。」と、全て受け入れてくれる。

だから頑張れる。

様々な価値観、みんな違ってみんな正解。

この環境を無駄にせず、さあ進もう!

私の一番の理解者であり、師匠でもある娘を見習って。

…頼りない母でごめんね(^_^;)

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