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私がハーバード大学への留学にチャレンジできたわけ〜気持ちの変化と家族への想い〜

私がハーバードへの留学を達成するまでの、気持ちの推移を紹介しようと思います。

私の母校である東京医科歯科大学は元々他の大学に比べて海外志向の強い学生が集まる傾向にあり、大学としても医学英語教育や基礎研究、留学に力を入れていたように思います。当時、大学四年次には医学部の学生80数人のうち20人近くが数ヶ月の研究留学を経験できるカリキュラムがあり、六年次には10名弱がハーバード大学の関連病院で数ヶ月の間病院実習が経験できるプログラムも用意されていました。そんな形で、漠然と留学というものは身近にあり、自分もいつか海外で最先端の研究をしてみたいと思うようになっていましたし、そう思う同級生は一定数いたように思います。

しかし、実際に大学を卒業して初期研修、後期研修を行っていると日々の臨床業務に忙殺され、なかなか留学まで気持ちが回らなかったのが現状です。私も目の前の患者さんをよくしたい、手術の腕を磨きたい、という一心で毎日病院勤務をしていましたし、週に1-2回くる当直業務をこなすので精一杯でした。医師になって7年目には専門医試験があり、受験生のように勉強に打ち込みました。(脳神経外科専門医試験は数多くの専門医資格の中でも合格率が低めに設定されており、皆試験直前は数週間から1ヶ月ほど普段の仕事を休んでひたすら勉強する時間に充てます。)

さらには結婚をしたり子供ができたりと、私生活でも目まぐるしく状況が変化しやすい年齢に差し掛かり、正直留学どころではないと思ったこともありました。

しかし、人生一度きりですし、自分のキャリアの中で数年間、海外の最先端の研究に触れる時間があってもよいのではないか、という考えは常に頭のどこかにあり、留学を諦めたことは一度もありませんでした。

私は留学するなら30代だと思っていたので、周囲より早めに、28歳の時に大学院に進学しました(周りを見ても医師は30代後半から40歳で留学している人が多いように思います)。
さらに外科医は社会人大学院といってひたすら基礎研究をするのではなく、病院に勤務しながら臨床研究をして博士号取得を目指すパターンが多いのですが、留学を見据えてあえて基礎研究に従事することにしました。その4年間の間は一切病棟業務や手術には参加しないのでブランクができてしまうというデメリットはありますが、それは受け入れることにしました。そして、32歳の時に博士号を取得しました。

大学院を卒業した年に、とある学会の若手研究者奨励賞をいただきました。その学会でゲストスピーカーとして米国より招待されて来日していたのが今の研究室の教授になります。受賞後にその先生と話す機会があり、必死に自分をアピールし留学したい気持ちを伝えたのを覚えています。幸い、大型助成金を取ってくれれば受け入れますとのお言葉をいただいたので、翌年1年間は日々の病棟業務や手術の合間の時間を使って助成金の申請書類の作成、申請に注力をしました。
この1年間でもし助成金を獲得できなかったら留学は諦めようと思っていました。先の記事にも書いたように応募できる助成金には全て応募をしました。そして幸い助成金を獲得することができ、今に至っています。

大学の同級生や先輩後輩を見ていても、学生の時には留学を希望する人は多いですが、実際に仕事が始まり結婚し子供ができるといつの間にか今の生活を維持するので精一杯になってしまい、チャレンジしづらくなってしまうように思います。年齢を経るに従って体力も落ちてくるというのも一因だと思います。このような背景から、いつの間にか留学を諦める人が多かったような気がします。正直脳外科医の私としても、手術の腕は落ちる一方ですし、留学の準備のために費やす時間、労力はとてつもないものがあります。留学するメリットは大きいと信じていますが、同時に失うものもあるということは心に留めておかねばなりません。
日本にいれば医師としての収入で生活ができ、貯金もできると思いますが、留学中の収入は多くの場合日本よりも下がります。さらに物価はアメリカの方が日本よりも圧倒的に高いので、貯金を作る余裕は全くなく、多くの人が赤字で過ごしているのではないでしょうか。金銭面も大きなデメリットの一つだと思います。

また、留学するには家族の協力が不可欠です。私の愛する妻は現在育休を取得してくれており、育児と家庭を守ることに専念してくれています。慣れない異国の地で小さな子供2人を育て上げること、食材も日本とだいぶ違う中で毎日美味しい食事を作ってくれること、本当にありがたいです。妻には感謝の気持ちでいっぱいであると共に、かなりの負担をかけていることを申し訳なく思う気持ちもあります。子供も慣れない地での生活に必死に順応しようとしてくれています。

家族にはたくさん負担をかけていますが、家族の支えがなければ留学はできませんでした。
何をするにしても家族ありきです。その上で、家族に負担をかけ、自分も人より余計な時間と労力をかけて留学する意味はなんなのだろうとずっと考えています。ただ、留学が終わって日本に帰国した時に、留学してよかった、と思えるように目の前のことにまずは全力で取り組もうと思っています。

最後になりますが、家族を明るく支えてくれている妻には本当に感謝しかありません。この場を借りてありがとうと言わせてください。山ちゃんありがとう!!

数年後に日本に帰国した際には、留学してみて感じたことをまとめようと思うので、楽しみにお待ちください!

では!

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