タカラトミーの財務分析

タカラトミーの概要

  • 2006年にタカラとトミーの合併により、誕生。

  • トミカ、プラレール、ベイブレード、リカちゃん、チョロQなどの数々のヒット商品を生み出してきた玩具メーカー。

  • 2015年から2017年の二年間、オランダ出身で日本コカ・コーラ副社長、サンスター株式会社執行役員等を務めたハロルド・メイ氏がCEOに就任し、経営改善により業績がV字回復。

  • 海外売上高比率は39.3%(2023時点)

タカラトミーの過去10年間の財務数値

図表1-1
単位(百万円)

売上高の推移と内訳

図表1-2
単位(百万円)

営業利益及び当期純利益の推移

図表1-3

売上原価率と販管費率

図表1-2の営業利益及び当期純利益の推移を見ると、2016年までは多額の減損処理を行ったことで当期純損失を計上しており、厳しい経営状況にあったことがわかります。
しかし、2017年には営業利益が約2.9倍、当期純利益も5,397(百万円)と黒字化に成功しており、2015年からCEOに就任したハロルド・メイ氏による経営改善の効果が現れています。

図表1-3の原価率の推移が減少傾向にあることから、経営改善による効果は売上原価の削減によるものだと考えられるでしょう。
では、どのようにして売上原価を削減できたのか推察していきたいと思います。

ハロルド・メイ氏による経営改善

図表2-1
単位(百万円)

海外セグメントの営業利益と連単倍率の推移

まず、海外セグメントの営業利益が、2016年までマイナスであったことから、全体の足を引っ張っていたのは海外事業だったことがわかります。

2016年から連単倍率が低下しているのは、現地任せにしていた海外事業のオペレーションを本部が行う方針に変更したため、不採算部門の撤退や物流及び購買活動の統合が進んだことで、海外子会社の売上高の減少、内部取引の増加が起きたためでしょう。

図表2-2

固定資産比率と現預金比率の推移

図表2-3

売上高に占める広告宣伝費の推移

図表2-4
単位(日数)

キャッシュコンバージョンサイクルの推移

次に固定資産比率と現預金比率の推移ですが、2015年から固定資産への投資の抑制や不採算部門からの撤退を進めたことで、固定資産は減少しており、それに伴い現預金が増加していることがわかります。
そして、増加したキャッシュを自社通販サイト(タカラトミーモール)の強化や、そこで得られた顧客データを利用した、効率的なマーケティング活動に積極投入したことで、図表2-2の広告宣伝費率が増加しています。

図表2-3の棚卸回転期間が2015年から減少傾向にあり、不採算部門からの撤退、効率的なマーケティングによる効果が現れているのがわかります。
棚卸回転期間が減少し、CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)が短縮したことで、更なるキャッシュを創出し、マーケティングの促進へと繋がっていると考えられます。

一連の流れをまとめると….
不採算部門からの撤退や投資の抑制→キャッシュの増加→顧客データを利用した効率的なマーケティングに投入→棚卸回転期間の短縮→キャッシュの増加→更なるマーケティングへの投資
そしてこの循環が、販売数の増加や余剰在庫の減少、利益率の高い製品に絞った販売を可能にし、売上原価に含まれる物流コストや製品1単位当たりの固定費の抑制につながっているのではないかと考えられます。

まとめ

  • 過去の買収によって拡大してきた海外事業が足を引っ張っていた。

  • 選択と集中による効率的な資源配分が好循環を生み出し、コストの削減と海外事業の立て直しへと繋がっていった。

  • 三代目まで続いた同族経営から脱却し、外部からCEOを招いたことで、「聖域なき改革」を実現できた。

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