鴉が鳴くのは
毎年この時期は、子ガラスの声に悩まされていた。
子ガラスと言っても体は大きく成長しており、餌鳴きの大きさは簡単にこちらの集中を割いてくる。煩いなと思う。
でも、朝の涼しいひとときの窓をこちらも締める訳にはいかない。
ただ、子ガラスも鳴くのが辛いのかも知れない。
いつ戻るか分からない親に居場所を知らせ続けるため。
ありつけるかも分からない餌のため。
自分はまだ遠くへは飛べず、体ばかり大きくて、一人前に腹が空く。
そんな事どうしようもなくても、命の時間は止まってくれない。
たとえ辛くても、鳴くのを止めるわけにはいかない。
ふと声が途絶えればそんな事を思って、今度は心配になる。
いらないのならくれと言っているだけなのに、残飯は硬い檻の中にしかなく、
雨が降ったのにどうしてか、どの庭からもミミズが這い出てこない。
川には釣り人やカモメがおり、ネズミはアーバン狐が持ち去っていく。
スズメや鳩のつついてるものは足しにならない。
カラスが公園のランチを狙う場面が増えたと感じるのは、そういう事なのかもしれない。
毎年煩いと思いながらも、去年鳴いてた子は親に変わっており、新たな子ガラスに餌を運んでいる訳で。10年もここで暮らしていると、煩いという感情が逞しいという印象に変わりつつある。
とはいえ、こちらはまだ引っ越せないので、ここらに餌がないのなら、どこか他所に移ってはくれまいかと考える。
カラスはいつも必死で、人間はどこまでも勝手だなと思う。
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