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作品鑑賞がふっとんだ話

奈良、當麻寺。
携帯電話に残っていたこのメモだけで、訪ねたことがありました。道中で改めて検索し「曼荼羅絵解き」なるものを楽しみに伺いました。曼荼羅ってなんだろう。。。

ちいさな駅にはキャリーを預けるロッカーもなく、途中で見つけた観光案内所で優しい方が快く預かってくださり、無事境内に到着。
受付の女性に早速尋ねると、「ああ~、今日は団体さんがご予約で、一杯なんですよ、、、でも、お一人なら何とかします」と仰り、これまたツイてるなぁ、と開始を待つことに。
「境内は、どこでも自由にご覧いただいて大丈夫ですからね、まだ時間がありますのでどうぞごゆっくり」と言われたので、お庭をぐるりと拝見しているうちに、何やら静かで居心地の良さそうな建物の入り口へ辿りついた。おそるおそる靴を脱いで上がり込むと、そこには、おそらくあの曼荼羅というものが壁に大きくかかっている。あら、ここが会場なんだわ、と安心して待つことにしました。
このお寺に着いた時から他に人っ子一人いないし、団体さんは遅れているのでしょう、とキョロキョロしていると、頭上に立派な絵天井を発見。あらまぁ、綺麗な、、、と上を観ながら一人をいいことに、大胆にも畳の上で寝転んで楽しんでおりました。

すると、かすかに誰かの大きな声が聞こえる、、、。ん?呼び声のようにも聞こえてきたぞ。この寺にいるのは、目下私だけのはずだけれど、と立ち上がり、ガラス窓ごしに庭を覗けば、なんとものすごい速さで飛び石をジャンプして向かってくる、あの受付の女性。手を”戻ってこい”の形に振っている。急いで反対側の玄関へ向かうと、
「お、お客さん、ハアハア、、も、今、絵解きが始まってますよゥ」と本当に息を切らして叫ばれました。
「ええっ!!ここじゃないの。誰もいないし、まだかと」
「こ、ここは、大事なとこで、、、ま、早く、靴はいて、こっちです!早くっ!」と促され、彼女の迫力に押されて転げるように走りました。
一緒に猛ダッシュしているうちに、不謹慎にも口元がゆるんできた頃、
「ここですっ、早く、もう始まってる、お坊さんが話してる、もう、靴脱いでくれればあとはやっとくから、早く~!!!」
という声を背後に、靴を脱ぎ飛ばして前だけを見て廊下を進みました。
(本当の)会場に入ってみれば、なんとまあ福顔のお坊様が、ニコニコして曼荼羅絵の縁のほうを差しながらお話をしている。絵解きが進むにつれ、だんだんと絵の中央に物語は移動していき、最後は極楽へのお導きで終了しました。

おかげさまで、無事わたくしめも極楽を拝むことができました、という思い出話です。しかし立派な曼荼羅よりも、きちんと靴箱に揃えてあった私の靴と、赤い顔をして息をきらし、静かな庭をジャンプ走りしてきたあの女性の姿の方が、印象深く残っております。
當麻曼荼羅絵解き | 當麻寺 中之坊と伽藍堂塔 -奈良県 葛城市- (taimadera.org)





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