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緊急手術(サラリーマン転期3)

手術

手術室は、スポーツスタジアムのように照明が煌々と照らされ、真ん中にある手術台を中心に最新医療機器が揃いる。

手術台の横にはモニターが配置されており、常にスキャンされた私の体内の様子が見えるようになっていた。

「いっせいので」
私は、移動用のベットから手術台に移された。

医者:「右手首に今から麻酔をするので、チクっとしますね」

ただの麻酔注射なんて尿管を通す痛さに比べれば屁のカッパですわ!

その後、少し太い管(カテーテル)の様なものが手首から血管の中に挿入された。

腕から血管を通って体に入っていく感覚があった。

エイリアンが体の中に入ったらこんな感じ?などと想像してしまった。
鳥肌が立った。

造影剤を血管の中に流し込みCTで血管の詰まっている箇所を確認する。

心臓の周りを取り巻く血管に、2箇所の詰まりが確認された。

ドリルの様なアタッチをカテーテルの先に取り付け、また血管の中を通っていく。

画像を見ているとどうやら血管の詰まりをドリルで穴を開けるように削っている様だ。

一箇所目は、30分ほどで通過した。

次は一箇所目よりも血管が細いところが詰まっていた。

1時間ほど施術を行なっていたが、うまくいかなかった。

結局、2箇所目は詰まりが取れないまま手術は終了した。

術後

ICUに戻された。
点滴の針を新たに刺そうと看護師さんが四苦八苦していたが、私の血管がどうやら細いようでなかなか入らない。

痺れを切らして、施術をしてくれた先生に交代したが、先生もうまく針を刺すことが出来なく、何度も刺し直したあげく、イライラがピークに足したのか、看護師さんが渡した注射器が思っていた物と違ったのか床へ投げつける始末。

私:「ここでパワハラはやめてくれ、怒りたいのは針を何回も刺された俺やわ!」と、心の中で呆れながらそう思った。

少し落ち着いたところで先生来て、病気の説明をしてくれた。

病名はやはり急性心筋梗塞で、心臓の周りにある細い血管のうち2箇所が詰まっていたそうだ。しかも、貫通しなかった方の血管は動脈硬化も進んでおり、かなり血栓と血管が固まっているとのことで、もう一度手術をする必要があるそうだ。

私:「仕事はどうなるのかな、俺はこれからどうなるのかな、今まで普通にやっていたことが出来なくなっちゃのかな、酒は飲めなくなるのかな」

そんな不安が頭をよぎる。

少し経って妻がICUに入ってきた。思ったより落ち着いた様子で話しかけてくる。

妻:「大丈夫?子供らは待合室にいる。」

私:「悪いけど、職場へ連絡しといて。」

妻:「わかった。着替えとか取りに帰るけど、また来るわ」

いつもより少し優しく感じた。
私は、病気も悪くないもんだと、そう思った。

もう少し動揺しているかと思ったが、母強しだ。

数時間が経ち、寝たきりは何もしていないのに身体中が痛くなる。

二日ほどここに居なければないないようだ。

看護師さんに「大きい方したくなったらどうするんですか?」と訊ねると、「そこでしてもらうことになるので、我慢せずに行ってくださいね。」と。

絶対嫌だ!ここで、人に見られながらするなんて、流石にそこまで落ちぶれたくない!と、かすかなプライドが私の肛門をキュッと引き締めた。

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