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割烹着のおばちゃん

私の愛犬と出会ってから、2年目になる。

散歩は1日に朝夕1時間ずつ。田舎町の風景はの、田んぼや畑のある場所が特にお気に入りの愛犬。
割烹着やエプロン姿の年配の女性が田んぼや畑にいるのに気付くと立ち止まって見つめるのを辞めない所がある子だ。
女性に近寄ってよく見てから、また歩き出す。

きっと、似た人との良い思い出があるんだろう。
私も割烹着の年配の女性を見て育ったので、自分と似た子だな、と思いながら、愛犬の過去をついつい想像してしまう。

どんな理由で、前の飼い主と離れたんだろう。など‥。遠くに見える割烹着姿のおばちゃんを見つめる愛犬の横顔を見ていると切なくなったりもした。
私からの同情など悟られないよう気をつけながら、愛犬をからかってみたりしながら、やはり、気持ちを大切にしてあげたいなぁ、と。

思えば、この子が来てから私は相当体力がついた。前は、コンクリートの上を走る事はさることながら、ちょっと歩いただけで足を痛めていた。
引っ張る力がもの凄かったこの愛犬に、ガンガン引き摺り回され、足腰を痛めて、何度か動けなくなって回復するのを繰り返して、今は歩くのに慣れた。
行くのを諦めていた都会の方に旅行しても、道ゆく都会の人と同じぐらい歩ける自信もついた。
しかも、30分くらいならジョギングも出来るようになったくらいだ。

祖母が残した畑を一緒にやろうと、親に誘われてからちょっと経つ。
たまに時間が合えば一緒に畑に行くのに、愛犬を連れて行った。
昔祖母を手伝った事もあったが、かれこれ10年以上ぶりだ。

今の農作業の服を探してみると、オシャレなものも沢山あり、目移りしてしまう。

私はなんだか、祖母が残した小さな畑と、愛犬の存在が嬉しかった。

でも敢えて母から借りた割烹着と帽子とモンペ姿に着替えた。
愛犬の前に行くと、まんまるな目をして、キョトンとした表情の愛犬の顔がしばらくジッと私を目で追っている。

私は今風の作業着じゃなく。割烹着を着て農作業したいと思った。

畑の近くに愛犬を繋いで、農作業して、休憩で焼き芋でも愛犬と分け合うのも、自分の居場所に気付いたようで、嬉しいものだ。

私の今の夢は、もっと体力をつける事だ。
畑である程度の野菜を作ったり出来るようになりたい。10年以上前の体力がある程度戻るのは時間がかかると思う。

今私が、消炎鎮痛剤を飲まずに歩き回っていられるのは、愛犬のおかげだ。
私は、愛犬から感謝してもらう事などどうでもいいが、私がやりたいようにやって、愛犬も楽しければ毎日面白いではないか。

私は私で、愛犬へのお礼じゃないけど、おそらく私よりも田舎育ちの愛犬に懐かしい空間をプレゼントしてやろうか、とか、夢が膨らんで来てニヤニヤしてくる。

近所のスーパーで、モンペを物色するのも面白い。

気のせいか、最近、愛犬が田んぼで作業中のおばちゃんをジッと見つめる瞬間が無いように思う。
一緒に過ごす毎日に徐々に前向きになりたい。

若い頃の自分には、想像もつかなかった、今の私。昔の友達からしたら、かなり意外な筈だけど、満足だ。

都会で、洒落たような服を着てオフィスに座っていたこともあったが、根本的なところがイモだから、無理な生活だった。

愛犬と共に、どんどん落ち着くべきところに落ち着いて行くようだ。
愛犬も私も田舎者独特の野生の勘で、できる範囲で伸び伸びと生活しているのが性に合っている。

割烹着を着た近所のおばちゃん同士、方言を使いこなし、トンチの効いたバカを言い合うのも、頭の体操になっていいものだ。

割烹着姿のなせる技だ。

この自由さには若い頃から憧れたものだ。

一年と少し愛犬と過ごし、こんな風にお互い成長した実感を書いてみました。

読んで頂き、ありがとうございます♪。


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