銀河

 UFOキャッチャーにハマっていた時期がある。中にあるアイテムが欲しいのは間違いないのだが、取れそうで取れないあの感覚を純粋に楽しんでいた。
 通勤中に歩く人々とすれ違う。下を向いて黙々と歩く中高年が大半である。中には小さい子ども連れ、にこやかな夫婦も多少いるだろうか。
 私の場合はというと歩くのは苦手で、気付いたら小走りからランニングに変わっていく。基本的にはのんびりタイプだが、心の何処かで自分の力を使い切ってしまいたい、そんな気持ちになるときがある。
 無心で走って限界に近い状態でやりきったときは心地よい。しかし、その後あるいは翌日「急にやりすぎたな…」と後悔することは数え切れない。
 きつくなったときに下を向かないようにしている。前をみるか、いよいよきつくなったらペースダウンして上を向いて一息つく。
 薄明かり、青空、曇り空、夜空。空を眺めながら意味もなく走り続けているのが好きだったようだ。
 先日から地元で「夜ラン」と称してランニングイベントが開催されている。ゆっくり歩く人、走るのと歩くのを繰り返す人、走り続ける人、楽しみ方は様々だ。
 何回も参加しているうちに顔馴染みができた。暗さと灯りが交互にある周回コースを走り終わって、ふと下を向いて歩き続ける人たちを思い出した。あの方たちもちょっとだけ目線を上げて、空を眺めることが出来たらいいなと思うのは自分勝手な私の願いだ。
#創作大賞2024
#オールカテゴリ部門

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?