見出し画像

軽量ホイールの定量詐欺と夢と現実について

『登りはバイクの重量が軽ければ軽い程、登りのアドバンテージになりますが、単に軽ければいい!というものではありません。リム(ホイールの外周部)が軽いことが重要なポイントになります。』
これは、某ラボさんが“このフリーは欠陥”と指摘していた超有名ホイールメーカーのサイトにある表現である。
断言しているが何を根拠にそう主張しているのだろう。
(しかし、ここのシェア激減したな。ここのタイヤの欠陥で死にかけたのに「文句があるなら訴訟すれば」って言われたこともあったっけ。そうなるよな。)

慣性モーメントの夢と現実

慣性モーメント(回転速度の変化に必要な力)が小さいことが登坂の何のメリットになるのだろうか。
一定の等速で登っている場合、当たり前であるが慣性モーメントの影響はゼロである。
そして、慣性モーメントが大きいと斜度がきつくなっても減速しにくく、慣性モーメントが小さいと緩斜面で加速しやすい、それだけのことでどちらが優位ということはない。

確かに加速するシーンで軽量リムはメリットがある。その主張は間違いではない。
だが、ちょっと待って欲しい、リムが前後で200g程度軽くなったとして、全体の慣性に与える影響はどれほどというのだろうか。
慣性モーメントなので1.5倍程度として300g相当の慣性が加わったとする。体重プラス機材の合計は軽量なライダーでも65,000gくらいはある。その比率は300/65,000である。
・・・0.46%の慣性抵抗削減を感じられる人がいるのだろうか。
いや、めちゃくちゃ敏感な人なのかもしれない。そして、それが空気抵抗なのか、慣性抵抗なのかを切り分けて知覚することが可能な人なのかもしれない(←そんなワケはないか)。


PezCyclingNews.
といいながら、コイツはめちゃくちゃよく進んだ

世界はそれを定量詐欺と呼ぶんだぜ

ある蟲で世界を救うらしい投資会社?の主張の問題点を指摘するつぶやきに「・・・問題は定性的には正しいが定量的には間違っている。この種のものはまとめて「定量詐欺」と呼称した方がいい。(RyKawai)」という表現があるが、自転車界はこの「定量詐欺」が蔓延していると思う。
〇〇のフリクションが20%低減します、回転の良さを体感出来るでしょう←もともとの抵抗値って何Watt?という根本的な問いには答えない、など。
自転車機材はヒトという変数が介在するため、検証が難しいことが殆ど。それに乗じて大げさな効果を謳うものがかなり多い。

登坂性能にみる夢と現実

軽いほうが登る。軽量ホイールはヒルクライムに有利
これについて、私も異存はない。自分もヒルクライムするときは超軽量機材を使っている。
しかし、数多のインプレのように多少軽くなったくらいで明確な違いを感じられるほどのものなのだろうか。
私は500gぐらい変わったところで絶対に気付かない自信がある(←誇ることではないよ)。

私が中学校で習った物理でなんとか覚えている範囲で計算してみた。

え!?PWRが5倍で登っているときでさえ500g減っても1.87Wattしか楽にならないの。
今までの「32mmハイトの超軽量リムは羽が生えたような登坂性能を実感できる」ってインプレのテンプレはなんだったのだろう。「55mmハイトなので、流石に淡々とヒルクライムするには重いが、、、」ってインプレ、先入観に支配されてないか?
・・・1.9Wattの勾配抵抗削減を感じられる人がいるのだろうか。
いや、めちゃくちゃ敏感な人なのかもしれない。そして、それが空気抵抗なのか、勾配抵抗なのかを切り分けて知覚することが可能な人なのかもしれない(←そんなワケはないか)。

軽量化の現実は以下に詳しい。あのラルプデュエズであっても軽さの効果は僅か。
https://blog.flocycling.com/aero-wheels/flo-cycling-the-great-debate-aero-vs-weight/

夢を売る人、夢を買う人


前出の呟きには続きがあって「・・・・。それが判らない人向けに夢を売る会社が〇ー〇〇〇なんだろう(原文は社名が顕名)」とある。夢を人に売るのもたいがいだが、実現しない夢を騙って政府助成金をガッツリせしめるのはいかがなものだろう。

おっと、話を自転車に戻すと、軽量ホイールに換装することで、登りが速くなる気がする、そういった気持ちや希望は機材スポーツの醍醐味の一つではある。
また、自転車は認識や心理的部分が大きな割合を占めるため、そういった機材によるプラセボ効果はドーピングより効果的なことあり得るのではないか。
そういった側面からみれば、機材を買うことは夢を買うこと以上の効果があるのかもしれない。

とはいえ。
科学的な視点で機材を検討し、本当に必要なもの、費用対効果が期待できるもの、きちんと選んだほうが良いと思うし、業界はあまり「定量詐欺」を続けていると、いつかしっぺ返しが来ると思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?