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半導体セクターに資金は戻るのか?

今週は
9/25マーケット終了後に実施された
$MU決算にて予想を超える1Q25ガイダンスが好感され
半導体セクターは広範な上昇を見せた。

しかし、
$SMCIの不正会計疑惑
中国での$NVDA製「H20」購入控えお達し報道

上記ネガティブニュースが上昇を阻害し
銘柄によっては
$MUでの上昇の恩恵以上に下げる結果となった。

また、週末に発表されたPCEでは
HeadlineおよびCoreにて予想を下振れる結果となり
足元ではディスインフレが順調に進んでいるとの解釈となった。

本稿では
来週発表される雇用統計に向けて
現状の雇用状況を整理し
$MU決算のHBMにフォーカスし
再び半導体セクターに資金が戻るのか?の点で
個人的な推察を述べたいと思う。





ディスインフレの現況

週末に発表されたPCEでは
Core PCE MoM+0.13%、YoY+2.68%と
年率では先月から反発を見せたものの俯瞰してみれば
ディスインフレは堅調に推移しているの内容であった。

また、
Core PCEにて6ヶ月平均は
MoM+0.197%と年率換算では2.40%になり
9月SEPでのCore PCE 2.6%を下回る水準まで来ている。

したがって、
11月FOMCでは

・10/10 CPI(9月分)
・10/31 PCE(9月分)

上記インフレデータを加味し利下げ幅を検討する訳だが

CLEVELAND連銀の
Inflation Nowcasting9月分を引用すれば

・CoreはYoYで鈍化が予想される
6ヶ月平均で考えるとMoM+0.178%と年率2.15%まで改善

上記切り口で
インフレは問題なく、
雇用を優先すべきとの言い分で
50bps(0.50%)の利下げを正当化する可能性が高い。

PCEおよびFF金利、金利先物予想
(ディインフレは順調に進み、金利織り込みは9月FOMC直前よりも利下げ方向に進行
PCEおよびCore PCE推移試算
(年末、若干の反発が起きる可能性がある)
PCEおよびCore PCE MoM推移試算
(年初のMoMの反発は一転し、直近では落ち着きを見せている)
Core PCE MoM
(年末にはYoYで若干の反発が予想される)


また、PCE発表に併せて
Personal Saving(個人貯蓄)にて大きな見直しが入っている。

Excess Saving(過剰貯蓄)は
当初、3月からマイナス圏であったが
大幅な上方修正を受けて
6月からマイナス圏に入る位置付けとなった。

これにより
個人消費が今後も堅調に推移するとの保証はなく
幾度となく見直しが入っている事も踏まえると
横目に見る程度が良いのかもしれない。

下記データは引き続き見ていくが
実際の消費行動の変化に焦点を当てて判断を行うつもりである

個人貯蓄および過剰貯蓄
(Q2 GDP改訂に併せて個人貯蓄は上方修正され過剰貯蓄は改善を見せた)
個人貯蓄の改訂
(2022以降で大きく見直され、個人貯蓄は横ばいとの位置付けとなった)



雇用の現況

来週末に予定されている雇用統計では
失業率の予想が4.2%(前回4.2%)
非農業部門雇用者数は130K(前回142K)となっている。

現在得られているデータからは
失業率の上振れリスクは低く
むしろ下振れる可能性もあるだろう

Indeed求人は9月に入り上昇を続け
新規失業保険申請件数、継続受給も減少傾向が続いている。
(継続受給は最新データでは若干反発した)

Indeed求人および新規失業保険申請件数
(7月雇用統計にて失業率4.3%となって以降、雇用軟化の加速は見られない)
新規失業保険申請件数および継続受給申請
(8月以降では共に4週平均にて減少傾向が続いており、改善傾向となっている)
労働参加率、失業率(上段)
労働者数、雇用者数、失業者数(下段)
(現在の傾向から、9月の失業率は改善傾向にあり、4.1%も視野に入る)

雇用の状況に関して
直近では不安要素は見当たらないが
引き続き注視すべきデータとなる。


フルタイマー、パート、複数職を掛け持ちしている人々の雇用者数
(昨年末より、フルタイマーが減少していたが、現在は横ばいが続いている)


$MU決算に関して

ここでは決算の細かい数字などは割愛し
生成AIトレンドに関連する
$MUのHBM3Eの状況から
$NVDAへの影響を中心に個人的な推察を行う。
($MUのHBM3Eの出荷増が$NVDA売上増に寄与するため)

Non-GAAP financial data and guidance

はじめに決算Call含めて要点を列挙する。

業界全体のDRAMビット数に占めるHBMの割合は
 2023年の1.5%から2025年には約6%に成長すると予想

2025年にはTAMが250億ドルを超えると予測
 (200億ドルから上方修正された)

・HBMの市場シェアが当社のDRAM市場シェア全体に
 匹敵するようになるのは2025年暦年のいつかだと予想

・HBMの3:1取引比率は全体として業界を逼迫した供給状態に保っている

・当社のデータセンターの売上構成比は
 2024年度に記録的なレベルに達し
 2025年度にはここから大きく成長すると予想

当社のHBMは2024年および2025年暦年では完売しており
 この期間の価格はすでに決定

・HBM3Eは他の製品に比べ ”業界内でもプレミアムがついている

2024年度にHBMから数億ドルの収益を上げるという目標を達成
 (Q&Aで具体的な数値は明言されなかった)

・25会計年度には数十億ドルのHBMの売上を達成できることに期待

・AIエコシステム全体での認定を可能にするため
 主要な業界パートナー($NVDA)に対し
 HBM3E 12層 36GBユニットの出荷を4Q24に開始

2025年初めにHBM3E 12層の出荷を開始し
 2025年を通じて12層の出荷比率を高めていく予定

・2024年通年のDRAM業界のビット需要成長率の見通しを
 10%台後半に上方修正

・前四半期比ではDRAMの売上高は14%増加し
 出荷ビット数は横ばい、価格は10%台半ばで上昇

2025年暦年ではDRAMとNANDの
 両業界のビット需要の伸びは10%台半ばになると予想

・1Q25売上総利益率は主に価格設定と
 ポートフォリオ構成の改善により前四半期比で改善する見通し
 売上高は 87億ドル±2億ドルを見込む
 売上総利益率は 39.5%±1.0%の範囲


さらに絞ると以下となる。

・2024年度会計にHBMから数億ドルの収益を上げ
 2025年度会計は数十億ドルを見込む

4Q24のDRAM出荷ビット数は横ばいで、価格は10%台半ばで上昇
・2025年にはTAMが250億ドルを超え

 HBMが自社DRAM市場シェアに匹敵すると予想
 (2Q24のDRAMシェアで考えると来年後半にHBMシェア20%を見込む)

1Q25売上総利益率は主に価格設定とHBMへの変換で
 売上総利益率は 39.5%±1.0%の範囲を見込む

2Q24 DRAMシェアランキング

これだけではピンと来ないため
数値をグラフで見ると以下となる。

黒字に転換して以降、堅調な成長を見せ

1Q25では
    ”過去最高の売上高が予想されていることが分かる”
    (株価が上昇した主要因と見られている)

FQ1-25 Business Outlook
$MU決算推移(全てGAAP)
(赤字を脱して以降、堅調な成長を見せ、1Q25では過去最高の売上高が予想されている

<HBM3E売上高ポイント>
・3Q24に1億ドルを超えるHBM3Eの売上を計上(フル生産)

・2Q24にHBM3Eを出荷を開始するも
 3ヶ月の決算期間の2ヶ月間しか製作出来ていないため
 2Q24では多く見積もっても、0.6億ドル程度と予想される

・上記予想を踏まえ
 4Q24のHBM3Eの売上高
 2024年度会計実績数億ドルの売上(3億ドル強と予想)から逆算し
 
 ”1.4億ドル前後と思われる
 
 補足事項として
 HBM3Eは前四半期にて既にフル生産をしており
 歩留まり向上とDRAMラインの転換を考慮しても
 この程度が限界と思われる

また
2025年度会計は数十億ドルを見込む(30億ドル以上)との予想は
四半期毎に単純計算で7.5億ドルだが
決算Callでは2025年後半がより伸びるとの説明があり

2025年後半には
   
   ”売上の大半がHBM3E 12層になると予想されている!”

つまり2025年末には
HBM3Eにて13億ドル近くまで伸びる可能性がある。
(2025年末にTAM250億ドルのHBMシェア20%は四半期で12.5億ドル)

私たちが期待しているのは
2025年暦年の前半からこの製品(HBM3E 12層)を大量に販売し
2025年を通して四半期ごとに12層の構成比を高め
2025年暦年の後半には

 ”HBM3E 12層の構成比が非常に大きくなり”

顧客が現在期待しているスケジュールで移行を行ったと仮定すれば

 ”売上の大半をHBM3E 12層が占めることになるはずです”

Micron Technology, Inc. (MU) Q4 2024 Earnings Call Transcript(翻訳)


ここまでの内容をまとめると、

4Q24でのHBM3E 8層の売上が1.4億程度であったのに対し
1Q25以降から数倍に伸び
2025年後半にはHBM3E 12層がHBM売上の大半を占め
2025年末にはHBMの売り上げが
13億ドル程度まで伸びている可能性がある。


$MUは生産キャパ拡張のため工場を建設予定ではあるが
稼働は2027年度以降で進められており
HBM3Eの出荷数量増は限定的との見方が優勢であったため


この様な状況を想像出来ただろうか?
自分は正直驚いた。

これの意味するところは
HBM3Eの歩留まり改善を果たし
(今後のさらなる改善にも見通しが立っている)
HBMへの3:1 trade ratioを加味しても
売上高、利益率(コストも加味する必要あり)の
上昇のストーリーが見えてきている事を意味している。

このアイダホ工場が意味のあるビット供給に貢献するのは
2027年度以降であり、

ニューヨークの建設CapExが最高の供給増に貢献するのは
2028年度以降になると予想される。

Micron Technology, Inc. (MU) Q3 2024 Earnings Call Transcript(翻訳)

この様な決算を見せられると
$MUの評価を見直す必要があり
今後も同社の動向は追わざるを得ない。


さて、前置きが長くなったが
$MUの決算から読み取れた
$NVDA売上高への影響だが

端的に言えば、
$NVDAの売上高は$MUのHBM3Eの供給急増を受けて
2025年末には爆発的な上昇を見せる可能性が高い。

さらに、
2025年にはHBM4およびRubinの話が鮮明になっている事であろう。
期待は大きくなるばかりである。



半導体セクターに資金は戻るのか?


$MU決算を受けて半導体セクターに
再度、投資家たちの関心が高まることを期待しており、
相場の格言には以下のものがある様だ。

強気相場は悲観の中で生まれ、
懐疑の中で育ち、
楽観の中で成熟し、
陶酔の中で消えていく

トウシル

著者のX(旧Twitter)アカウントでは度々取り上げているが
8月の韓国輸出のメモリー(DRAMを含む)では
台湾($TSM)への輸出が急増しており
特筆すべき変化が起きている。

状況的に、SK HynixがHBM3Eを大量に出荷し
$TSMがH200(Blackwellも?)を本格的に作っている可能性があるだろう。

H20は早々に見切りを付け
予約受付を中止したとの報道もあるが
利益率の観点で見れば$NVDAにとっては良い判断とも言える。

まだ、確証は得られていないが
今後、$NVDAの状況は改善することはあっても
悪化する可能性は低いと思われる。
(Samsung製HBM3Eの$NVDAからの認証完了も追い風になる)

相場の格言と照らし合わせれば
$NVDAを始め堅調に成長を果たしている生成AI銘柄は見直され
株価上昇を果たすのではないだろうか。

ただし、
$SMCIなどは状況的には厳しく
以前の様な熱狂感のある上昇は過大な期待となる可能性があるため
銘柄選定には注意が必要だろう。

$SOXX日足チャート
(三尊天井での下落を回避し、直近高値がレジスタンスとして機能している
$NVDA日足チャート
(均衡した三角保ち合いの上限がレジスタンスとして機能している
韓国輸出 H.S code 854232(メモリー)および$TSM月間売上高
8月には韓国から台湾に対して、メモリー輸出が急増している


自身の考えとしては
有望な生成AI銘柄として$NVDA、$TSMを筆頭に
状況を見て$AMATのポジションを再度構築するつもりである。
(現状、指数のみ)


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