酒についての所感

酒を楽しめる側の人間と、そうでない側の人間がいる。私は後者だ。そもそも炭酸が苦手である。酒はちびちび飲むよりも一気にグイっと飲んだ方が美味しいと聞くが、炭酸の容赦ない刺激に耐えうる強靭な喉を持ち合わせていないばかりに買ってきてもちびちび飲む羽目になる。ちなみに一缶飲み干したことはない。それでも暴君ハバネロというお菓子は酒と一緒に喉に流し込むのが一番美味しいから、つい買ってきてしまう。だいたいほろよいかこだわり酒場のレモンサワーがお供になることが多い。
居酒屋で提供されるパインサワーも中々美味しいが、上述した通り炭酸が苦手なため職場の飲み会でアグレッシブ化していく同僚や上司を余所にたった一杯のパインサワーと格闘していたこともある。ちなみに気分は全く変わらなかった。
しかし、普段理性的な姿勢を保とうとする人ですらもあられもない姿をさらけ出してしまうほどの力を秘めた酒、なんなら酒によって酔える人が羨ましいとすらも感じたのである。「酒の力を借りて」なんて言葉はよく恋愛において用いられるが、普段気弱な人ですら変えてしまうその魔力とも言える力を、私も味わってみたかったのだ。
用意した酒は「こだわりレモンサワー 檸檬堂」だ。アルコール5%、そこまで強くもない酒だが、これを一気に喉に流し込むとどうなるのか試してみよう。
タブを開け、グイっと一気に飲む。炭酸の刺激は相変わらず慣れないものだがそれでもレモンの爽やかな風味が口に広がっていく。そしてだんだんと思考に霧がかかっていく感じがする。何か見えない力に勝手に脳の働きを抑えられている感覚がするのだ。麻痺という言葉で一番私にとって身近なのがポケモンのまひ状態なのだがそれが身体ではなく直接頭にきている。ああこんな状態ではポケモンも技を出しにくいだろう。そんなことを考えていると友人から通話したいと連絡があった。私は念のため「今酒を飲んでいる。もしかしたら変な私が出現するかもしれない」と忠告をしておいた。結果2、3分ぐらいは普段の1.5倍ぐらいのテンションで話していたのだがその後酒を飲み続けてもただただ気分が悪くなっていくばかりでやむを得ず飲酒を中断した。ちなみに一気に飲んだと書いたのだが実際は缶の半分も飲んでいなかった。私は炭酸が苦手だから酒が苦手だと思っていたのだが、純粋に酒に弱いということも判明した。これからもし私と居酒屋に行く人が現れてもたった一杯のパインサワーと格闘する私を、暖かい目で見守ってほしいと思う。

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