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『七人の侍』【1954年邦画】

BGMを聴きながらお楽しみ下さい


【感想】

2024年9月7日投稿

日本映画の名作と聞かれたら、迷わず「七人の侍」と答えます。
恥ずかしながら、50代になってからDVDを購入して視聴しました。物心がついたころから、黒澤明監督は世界の黒澤と言われていましたが、今みたいに簡単に作品を観ることが出来ませんでした。

当時私はの日本映画が嫌いでした。無駄にベッドシーンとは言えない暗い濡れ場があって嫌でした。その風潮は角川映画まで続いてました。

七人の侍は衝撃でした。今でも十分通用する笑い、正義への涙、身分差別の学び、ハラハラドキドキ迫力満点の戦闘シーン。これがクロサワかぁーという拘りの連続。「映画は静止画を取らない」風景を撮るにも、雨が降る、風で埃が舞うなど何かしらが動いているという拘り。休憩をはさむ3時間以上の超長編。

三船敏郎さんも良いのですが、志村喬さんの侍演技がカッコよすぎる。テキパキと指示するリーダーぶり、正義感、これぞ侍という雰囲気。この作品を観た後は、「スターウォーズ」のジェダイなんてお芝居に見えてしまう。

今はYouTubeのレンタルでも観れるので、仕事を引退した方で、まだ観てない方は是非ご覧ください。人生の最後に観たい映画です。では、また。

【作品情報】

『七人の侍』、1954年公開の時代劇映画。黒澤明監督、三船敏郎さんと志村喬さん主演。モノクロ、スタンダードサイズ、207分。日本の戦国時代の天正年間(劇中の台詞によると1586年)を舞台とし、野武士の略奪に悩む百姓に雇われた七人の侍が、身分差による軋轢を乗り越えながら協力して野武士の襲撃から村を守るという物語。

当時の通常作品の7倍に匹敵する製作費を投じ、1年近い撮影期間をかけて作られ、興行的にも大きな成功を収めた。
複数カメラや望遠レンズの効果的使用、緻密な編集技法などを駆使して、クライマックスの豪雨の決戦シーンなどのダイナミックなアクションシーンを生み出した。また、アメリカの西部劇(特に黒澤が敬愛するジョン・フォード)の手法を取り入れ、綿密な脚本と時代考証により、旧来のアクション映画と時代劇にはないリアリズムを確立した。

本作は世界で最も有名な日本映画のひとつ1954年の第15回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞受賞。
国内外の多くの映画監督や作品に大きな影響を与えており、1960年にアメリカで西部劇『荒野の七人』としてリメイクされた。最高の映画のリストに何度も選出されており、2018年にBBCが発表した「史上最高の外国語映画ベスト100」では1位に選ばれ、外国語映画基準を超えてハリウッドを含む歴史上、すべての映画の中で最高の映画100選で7位に選ばれた。

【あらすじ】

前半部と後半部の間に5分間の途中休憩を含む上映形式。前半部では主に侍集めと戦の準備、後半部では野武士との本格的な決戦が描かれるが、「侍集め」、「戦闘の準備(侍と百姓の交流)」、「野武士との戦い」が時間的にほぼ均等であり、3部構成とする見方も可能。

前 編

戦国時代末期のとある山間の農村。村人たちは、戦によりあぶれて盗賊と化した野武士たちに始終おびえていた。
春、山に現れた野武士達の話を盗み聞いた者がおり、その年も麦が実ると同時に、40騎の野武士達が村へ略奪に来ることが判明する。これまでの経験から代官は今回も頼りにならないことは明白であり、村人たちは絶望のどん底に叩き落とされていたが、若い百姓の利吉は、野武士と戦うことを主張する。村人たちは怖気づいて反対するが、長老の儀作は戦うことを選択し、「食い詰めて腹を空かせた侍」を雇うことを提案する。

力を貸してくれる侍を求めて宿場町に出た利吉・茂助・万造・与平の4人は木賃宿に滞在しながら、白米を腹いっぱい食わせることを条件として侍らに声をかけるが、ことごとく断られ途方にくれる。そんな中、近隣の農家に盗賊が押し入り、子供を人質にとって立てこもる事件が発生する。周囲の者が手をこまねく中、通りかかった初老の侍が僧に扮して乗り込み、盗賊を斬り捨てて子供を救い出す。侍は勘兵衛と名乗る浪人で、騒ぎを見ていた得体の知れない浪人風の男が絡んだり、若侍の勝四郎が弟子入りを志願したりする中、利吉が野武士退治を頼みこむ。勘兵衛は飯を食わせるだけでは無理だと一蹴、村の概要を聞くに仮に引き受けるとしても、侍が七人は必要だという。しかし、これを聞いていた同宿の人足たちが、これまで利吉ら百姓を馬鹿にしていたにもかかわらず、百姓の苦衷を分かっていながら行動しない勘兵衛をなじる。勘兵衛は翻意して、この困難かつ金や出世とは無縁の依頼を引き受けることを決意する。「この飯、おろそかには食わんぞ」

共に闘う侍を求める勘兵衛の下に、勘兵衛の人柄に惹かれたという五郎兵衛、勘兵衛のかつての相棒七郎次、気さくなふざけ屋の平八、剣術に秀でた久蔵が集う。さらに利吉達の強い願いで、まだ子供だとして数に入っていなかった勝四郎も6人目として迎えられる。7人目をあきらめて村に翌日出立しようとしたところに、例の得体の知れない浪人風の男が泥酔して現れる。男は家系図を手に菊千代と名乗り侍であることを主張するが、勘兵衛らに家系図が他人のものであることを見破られてからかわれる。勘兵衛らは菊千代を相手にしないまま村に向かうが、菊千代は勝手について来る。

一行は村に到着するが、先に帰ってきていた万造が「侍が来たら何をされるかわからない」と、強制的に娘の志乃の髪を切って男装させてしまったこともあって、村人たちは怯えて姿を見せようとしない。一行がとりあえず儀作に面会する中、危急を知らせる板木を打つ音が鳴り響くや、野武士襲来と勘違いした村人は一斉に家を飛び出し侍に助けを求める。これは菊千代の仕業であった。侍たちと村人たちとの顔合わせを成立させたことで、菊千代は侍の七人目として認められる。勘兵衛たちは村の周囲を巡り、村の防御方法を考案し、百姓たちも戦いの為に組分けされ、侍達の指導により戦いの心得を教えられる。一方、勝四郎は男装させられていた志乃と山の中で出会い、互いに惹かれてゆく。そんな折、菊千代が村人らから集めた刀や鎧を侍らの元に持ち込んでくる。それは村人が落ち武者狩りによって入手したものだった。負け戦での辛酸を舐めてきた侍たちはこれを見て気色ばむが、菊千代は「お前たち、百姓を仏様だと思っていたか!百姓ほど悪ズレした生き物はないんだ!でもそうさせたのはお前ら侍だ!」と激昂する。菊千代は、侍にあこがれ村を飛び出した農民だったのだ。彼の出自と農民の事情を察した侍達は怒りを収める。

村人は侍の指導の下で村の防衛線を固めるが、小川の向こう側にある数軒の家はどうしても防衛線の外になってしまう。守りきれない離れ家は引き払って欲しいとの申し出を聞いた茂助は、自分たちの家だけを守ろうと結束を乱す。それに対し勘兵衛は抜刀して追い立て、村人に改めて戦の心構えを説く。

後 編

初夏、麦刈りが行われ、しばしの平和な時も束の間、ついに偵察の野武士が現れる。偵察を捕らえ、山塞のありかを聞き出した侍達は、先手を打つため利吉の案内で野武士の山塞へと赴き、焼き討ちを図る。
侍たちはあぶりだされた野武士数人を切り伏せ、囲われていた女たちを逃すが、その中の美しく着飾ったひとりは、野武士に談合の代償に奪われた利吉の女房だった。
利吉の姿に気づいた彼女は火の中へ再び飛び込む。それを追おうとする利吉を引き留めた平八は野武士の銃弾に倒れる。村に戻り、皆が平八の死を悼む中、菊千代は平八が作り上げた旗を村の中心に高く掲げる。それと同時に野武士達が村へ来襲、戦いの幕が切って落とされる。

築いた柵と堀によって野武士の侵入は防がれたものの、防衛線の外側にある離れ家と長老の水車小屋には次々と火が放たれる。水車小屋から動こうとしない儀作を引き戻そうとした息子夫婦も野武士の手にかかる。唯一助かった赤子を抱き上げる菊千代は「こいつは俺だ」と号泣する。

夜半から朝へと時は流れる中、勘兵衛の地形を生かした作戦が功を奏し、侍と村人は野武士を分断し徐々にその数を減らしていく。しかし、種子島(火縄銃)をひとりで分捕ってきた久蔵を勝四郎が「本当の侍」と称賛したことから、菊千代は対抗意識を燃やして持ち場を離れ、単独で野武士を襲撃する。菊千代は二挺目の種子島を持ち帰って来たものの、不在にしていた持ち場が野武士による襲撃を受け、さらに野武士の騎射兵が村に入り込んだため、与平を含む多くの村人が戦死し、侍のうち五郎兵衛も三挺目の種子島に撃たれて斃れる。

日が暮れ戦いは一時やむ。相次ぐ戦いで村人らは疲弊するが、山塞から焼け出されたうえに数を減らされ、逃亡する者も出始め、追い詰められて焦っている野武士達も明日は死に物狂いで攻めて来るだろうことが予想された。その夜、村人たちは隠していた酒や食料を持ち出して気勢を上げる。その喧騒から離れた勝四郎は志乃に誘われ、悲壮感の中で初めて体を重ねる。その場を見咎めた万造が激高し騒動となるが、妻を喪った利吉が野武士にくれてやったのとは訳が違うと万造に一喝して場を収める。

豪雨が降りしきる中夜が明け、残る13騎の野武士が襲来する。勘兵衛はあえてこれらをすべて村に入れたうえで包囲し、決戦が始まる。野武士らは1騎また1騎と討ち取られ、あるいは逃亡するが、野武士の頭目は村の女子供が隠れていた家に密かに入り込む。大勢が決したころ、小屋に潜んでいた頭目が放った銃弾によって久蔵が斃れる。小屋に駆け付けた菊千代も撃たれるが、菊千代は鬼気迫る迫力で追いつめた頭目を刺し殺し、自らもその場で果て、野武士はついに壊滅する。

野武士を撃退した村には平穏な日常が戻り、晴れ空の下で村人は笛や太鼓で囃しながら田植にいそしむ。活力に満ちて新たな生活を切り拓いていく村人たちとは対照的に、その様子を見つめる生き残った3人の侍の表情は浮かない。侍たちの横を田植に向かう村の娘たちが通り過ぎていく。その中に志乃がおり、勝四郎を見て躊躇うが、何も言わずに振り切って田に駆け込む。そのまま田植歌を口ずさみながら、勝四郎を忘れるかのように志乃は一心に苗を植えていく。勘兵衛は「今度もまた、負け戦だったな」とつぶやき、怪訝な顔をする七郎次に対して「勝ったのはあの百姓たちだ、わしたちではない」と述べた勘兵衛は、新たな土饅頭が増えた墓地の丘を見上げる。その頂上には、墓標代わりに刀が突きたてられた4つの土饅頭があった。

【登場人物】

七人の侍

島田勘兵衛(しまだかんべえ)
演:志村喬(しむらたかし)

百姓に雇われることになった侍を率いる浪人。そろそろ50代に手が届く白髪の目立つ風貌。歴戦の智将だが、合戦は敗戦続きで浪人となる。普段は笑顔が多く、温厚で冷静沈着だが、リーダーとして鋭く叱責することもある。若い頃にあった「一国一城の主」という志も肉体的、年齢的に既に叶わぬ己の身に一抹の憂いを見せる場面がある。剃髪した頭をなでるのが癖。
豪農の子供が盗人の人質になった事件に接し、迷わず髪を剃り落として僧に成りすまし、無報酬で解決したことで利吉達に助けを求められる。当初は「できぬ相談」と拒んでいたが、百姓達の並々ならぬ熱意や人足の言葉に負け、村の防衛を引き受ける。野武士との戦では地形を生かした策を編み出し、戦いを有利に進める。
向かってくる騎馬武者を一刀で叩き斬ったり、最終決戦において村に突入してきた騎馬を、豪雨の中しぶきを飛ばしながら弓で次々に射落すなどの手練れも見せる。衣装は平造・合口拵えの短刀に、打刀拵えの太刀と、戦国時代後期の初老の侍のいでたちをしている。

菊千代 演:三船敏郎

勘兵衛の強さに惹かれ勝手についてきた男。弟子入りしたいが、作法が分からず、勝四郎に先を越されてしまう。長大な刀を肩に担いで浪人のように振舞っているが、侍としてあるまじき言動や、前後不覚の泥酔状態になったことから、勘兵衛には即座に本当の侍ではないと見破られる。
百姓の出自で、戦禍で親を失い孤児として育つ。本名は本人も忘れており不明。「菊千代」という名前は勘兵衛に侍だと思われたいがために、泥酔しながら、盗んだ武家の家系図の上に指し示した元服前の子供の名前を使う。名前は後に仲間として受け入れられた時にそのまま定着する。村で百姓たちに戦備えのための槍の指導をするなどをしており、額当てのように、篭手を頭に巻いている。
孤児となった後も、いくつかの戦禍を見聞きしているような言動がある。その過程で独学にて武具の扱いを体得したらしく、腕っ節は半端な野武士より強い。馬にも乗れるが自己流のようで、与平の農耕馬に乗ってみた挙句、一同の眼前で落馬している。
型破りの乱暴者だが子供好きであるらしく、村の子供たちの前でおどけて見せるシーンも多い。野武士に致命傷を負わされ逃げてきた儀作の嫁から託された赤子を抱きながら「こいつは俺だ、俺もこの通りだったんだ!」と叫び、赤子の将来を慮り号泣する。野武士との戦では東の川沿いの守りを任される。抜け駆けせんと持ち場を離れた結果、五郎兵衛を戦死させてしまった。最後の決戦では、勘兵衛の指示を守りながら爆発的な働きを見せるが、久蔵がみずからの討ち死にと引き換えに示した射手を倒そうとして、野武士の放った銃弾を浴びながらも、野武士の頭目を刺して斃れる。
勘兵衛とダブル主役である。三船のスターバリューもあり、クレジット上では若干、ポスターでは明らかに上位扱いだが、物語の表面上ではヒーローでありリーダーである勘兵衛が前面に出て、若輩のニセ侍である菊千代はコメディリリーフに近いお荷物的扱いで描かれつつ進行する。彼が真の主役として浮上してくる後半はこの映画の機微であり、たとえば『荒野の七人』には全く引き継がれずリーダーのみが主役として描かれている。
盗んだ家系図によると本物の菊千代は天正二年生まれの十三歳との事と年齢計算が数え年である事から、本作が天正十四年という戦国末期を舞台にしている事が確認できる。

岡本勝四郎 演:木村功

育ちがいい裕福な郷士の末子で半人前の浪人。七人の中では最年少で、まだ前髪も下ろしていない。浪人になりたいと親に頼んでも許されないので家を飛び出して旅をしている。勘兵衛の姿に憧れて付いて行こうとするが、勘兵衛に浪人の辛い現実を教えられ一時動揺する。実戦経験はまだなく、すべてが新しい経験ばかりで、事件を若々しい敏感な感情で受け取る。野武士との戦では伝令役を任される。
森の中で百姓の娘の志乃と出会い、互いに惹かれ合う。そのために一時は侍と村人の間に緊張が走るが、野武士にくれてやるのとはわけが違うという利吉の一喝によって逆に結束する。最後の戦いでは必死になって戦うも、仲間が次々と斃れていく姿を目の当たりにする。そして野武士が壊滅したことでそれ以上の働きが出来ず、慟哭してくずおれる。

片山五郎兵衛 演:稲葉義男

勘兵衛が腕試しのために仕掛けた待ち伏せを事前に一目で見抜いた。勘兵衛の人柄に惹かれて助力する浪人。いつでも静かでおだやかだが、その物柔らかさの下に何か人をなだめるような力がある。軍学は相当でき、経験も豊富。野武士との戦では勘兵衛の参謀役を務めるが、最初に攻撃を受けた際には野武士の先鋒を弓矢で射殺した。のちに野武士の銃弾を受けて戦死する。

七郎次 演:加東大介

勘兵衛の最も忠実な股肱。過去の戦で勘兵衛と離れ離れになった後、物売りとして過ごしていた。再会時には勘兵衛の顔付きだけでその求むところを知り、ただちにそれに従って動く。村人の落ち武者狩りを知ったときは真っ先に激昂したが、戦の最中は百姓たちを常に励まし、自分の組に入った万造への気遣いも見せる。野武士との戦では西の入り口の守りを受け持ち、侍たちの中で唯一長槍を振るう。

林田平八 演:千秋実

苦境の中でも深刻にならない上に、柔軟で人懐っこく、愛想の良い明るい浪人。よく冗談を言っている。茶店で茶代代わりに薪割りをしているところを五郎兵衛に誘われる。組織が苦境に陥ったときのムードメーカーとなる素質も五郎兵衛によって見抜かれている。武士としての腕は少し心もとなく、五郎兵衛はその腕を「中の下」と評し、自らも「薪割り流」をたしなむと自己紹介した。頑なな心の利吉を気遣い、結果野武士に狙撃され最初の犠牲者となる。
「戦に何か高く翻げるものがないと寂しい」と、百姓を表す「た」の字と侍を表す○を6つ、菊千代を表す△を1つ描いた旗を作る。

久蔵 演:宮口精二

修行の旅を続ける凄腕の剣客。勘兵衛の誘いを一度は断ったものの、気が変わり一行に加わる。勘兵衛は「己をたたき上げる、ただそれだけに凝り固まった奴」と評し、口数が少なくあまり感情を表さないが、根は優しいという側面を多々見せる。野武士との戦では北の裏山の守りを受け持つ。「肩衣」はつけておらず、合戦時も他の侍と異なり、籠手(こて)や額当(勘兵衛。菊千代は半首)、腹巻(勝四郎)・腹当などの防具は着用していない[注釈 2]。黙々と自分の役目をこなし、危険な仕事も率先して受け持ち確実に成果を挙げる姿に、勝四郎は「素晴らしい人だ」と絶賛した。しかしながら勝四郎の目の前で野武士の銃弾に斃れるも、今際の際に射手の方角を味方に教える。

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