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電車乗務員と花粉症とクスリの話

目に涙
鼻垂れ流し
花粉症

春といえば、気になるのは花より先に、鼻。
そう、花粉症が気になるのがアレルギー持ちの宿命だ。

小さい頃からアレルギー性鼻炎持ちの私にとって、春闘とは花粉症との闘いである。

春の名物、黄色い電車

電車の前面にある、黒塗りデザインをブラックフェイスと言うが、花粉が飛び始めるとその黒い部分に付着して目立ちだし、だんだん電車が黄色く見えてくる。そして前面ガラスにも同じように花粉がベタベタこびりついているのに気づく。
小雨が降ったり、ウォッシャ液を使うと、ガラスを拭き取ったワイパーブレードから黄色い汁が流れ落ちる…想像するだけでも鼻がムズムズしてくる。

花粉症と車掌

私が車掌になった年の花粉シーズンに、耳鼻科へ行くのをサボって、全く対策をしていなかった。正直、それまでも多少の花粉症はあったのだが、あまり気になるような症状ではなかったからだ。

当時は臨海都市部から山間部へと走る路線に乗務していた。乗務員の基地は臨海都市部にあって、乗務が始まり、徐々に山へ近づくに連れて明らかにアレルギー症状が強くなる。猛烈に目はかゆい、鼻は滝のように止まらない、ひたすらくしゃみは出る…今までに無いレベルの症状が現れた。

車掌は毎駅(私の担当路線ではおおむね3分ごと)、乗務員室の落とし窓から顔を出して、到着と発車の監視をするのだが、これがツライ。風を切って走っているところに顔を出すワケで、花粉を顔に浴びている、あるいは吹き付けているようなものだから、一気に症状が出たのだろう。

気休めにマスクもするのだが、メガネが曇るのであまり好きではなかったし、マスクの中もズルズルで気分が良くなかった。ゴーグルは効果があるらしいが、メガネ使用の私には難しい対策だった。

花粉の季節は、乗務中に持ち歩く携行カバンに、箱ティッシュをひと箱常備していて、発車監視が終わると、駅間はひたすら鼻をかんでいた。まだローションティッシュが無かったか、情報に疎くて知らない頃で、鼻周りは赤くなってしまい、休憩詰所で先輩に笑われたり心配されたり…あまりにツライなので、休日にようやく耳鼻科へと向かったのだった。

花粉症と電車運転士

その数年後、運転士になった頃には、毎年キチンと対応薬を処方してもらっていたので、かなり楽になっていたのだが、特徴的なのが、不思議と走行中に鼻水で苦労したことが少ないことだ。緊張から交感神経優位なのだろう。折返し中や休憩中の方がツラかったが、一番ツライのは仮眠のときに症状が悪くなることだった。

乗務員とクスリ

みなさんは花粉症のクスリをどこで手に入れているだろうか。市販薬?それとも処方薬?私は一貫して処方薬を使っている。

理由は2つある。1つは自分に合わせたクスリを使いたいという点だ。もう1つは眠くなる成分が含まれていると仕事中に使えないからである。もちろん、仕事に差し支えるのが最大の理由だが、それを裏付けるような根拠省令がある。

動力車操縦者運転免許に関する省令等で、操縦に影響がある薬物を使用して運転してはならないことになっている。

事故が起きると、当然ながら乗務員は当事者であり、列車の責任者であるから、刑事・民事で責任を問われることになるのは言うまでもないが、仮に信号違反などのミス(これも鉄道では事故の一種として扱う)を起こしても、薬物影響が原因のひとつと判明した場合は、免許の取消や社内処分の対象になっているので、花粉症に限らず、使うクスリには気を使う。

私が処方薬を使っていることは先に述べたとおりで、かかりつけのドクターとは長い付き合いだから、私の仕事内容も体質も理解しているので、適切な処方をしてもらえる。アレルギー薬に限らず、体調の変化で新しく処方されるクスリがあるときは、必ずクスリ辞典を使った説明もあるので、私にとってはドクターにもクスリにも安心と信頼があるのだ。
こうして、自分のアレルギー症状をコントロールしながら仕事に取り組むのも、体調管理のひとつであり、仕事のウチだと思っている。

今回のアトガキ

私の経験してきた電車運転士やドライバーという仕事には、集中力の維持継続が大きな要素として内包されているのだが、そのために生活全体を仕事に向けてコントロールしていることを、今回は季節の話題ということで、花粉症とクスリの話をテーマとして紹介した。

また食事や酒、あるいは睡眠の取り方など、乗務員の生活の話題に触れたいと思う。

(参考省令等)
動力車操縦者運転免許に関する省令
第六条第一項「免許の取消」

動力車操縦者運転免許の取消等の基準
第四条(対象と量定)(3)(8)

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