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映画「Saltburn」のバリー・コーガンを語らせてください

Saltburn観ました。
解説でも考察でもありませんが、主演のバリー・コーガンの「こういう使い方か!!」という最適解を知ったので「ねえ聞いて!!」という書き殴りです。
少しネタバレ。

バリー・コーガンの顔が売れたのがヨルゴス・ランティモスの「聖なる鹿殺し」で謎の少年マーティンを演じたタイミングだったと思います。
まーーたヨルゴス・ランティモスが奇妙な容貌の俳優を見つけてきたなぁという印象でした。

聖なる鹿殺し マーティン


欧米人ぽくない顔のパーツ、猫背で冴えない挙動、全然イケメンじゃない陰キャっぽさ、垢抜けていない感じがするし目がイっちゃってる・・・
一言でいえば「キモい」人物を怪演していました。
この作品もすごく好きですが、あくまでヨルゴス・ランティモス作品として覚えているだけでした。


Saltburnでのバリー・コーガンも、かなりキモい役どころです。
あらすじを読むとスクール・カーストもの?
プロローグを観るとSummer of 85みたいな感じ?
でもこの主人公とイケメン君の縮まらない格差は太陽がいっぱい的な?
と色々「〇〇っぽい」という印象を持つのですが、何しろバリー・コーガンが不気味でキモいので、これエッチな展開ある・・・?とちょっと不安になってきます。

この普通っぽい体型が良い

ちょっとざらっとした画面、いまどき4:3の画角、西洋の城に住まう上流階級・・・と古風な感じがするけど、普通に2006年~という設定のお話。
オープニングタイトルとエンディングの入りは痺れますねえ。

いきなりエンディングの話をしますが、あのラストダンスは映画史に残ると思います。モザイクなしで良いじゃん!
Murder On The Dancefloorという挿入曲、めちゃくちゃ良いので映画書下ろしかと思ったら2001年の曲。
バリー・コーガンて調べたら身長170㎝とやや小柄。そしてめちゃくちゃ鍛えてる感じでもなく、フワッと筋肉もついてるけど普通の若者だよ~という体型ですね。
そこがめちゃくちゃいい。めちゃくちゃ刺さる。
ズームアップされると写る肌の質感もすべすべつやつや~ではなくざらついていて手入れしてない普通の男って感じで、妙な生々しさと妙な色気があります。


この映画、冒頭ではイケメンお金持ちの青年フェリックスがいかに人を惹きつける人物だったかを語ります!(つまりもう生きてないことは示唆している)というテンションで来ますが、彼のイケメンぶりや遊び人ぶりなんて全然頭に入ってきません。多分製作陣もバリー・コーガン演じるオリバー以外さほど人物像を固めていないな。

オリバーという人物の
・自信がない
・長いものに巻かれてしまう
・朱に交わっても赤くなれない
・偽装してでも上流階級に気に入られたい
・言わなくても良いことを言ってしまったり、ボロが出てしまう不器用さ
・いろいろ行動を起こしてみるけど裏目に出る

のような憐れみを向けたくなるイタさが、バリー・コーガンがそこにいるだけで「ああそういう人ね」とすんなり腑に落ちてしまう、すごい陰キャのリアリティを放っています。
まあ上記全部アレなわけですが・・・


これをやったらヤバいぞ、キモいぞ、やめろ、やめとけーー!!
というハラハラする展開を、オリバーもといバリー・コーガンは堂々とやってのけます。
美形の俳優が同じことをしたら「エロい、耽美、禁断の愛」となるであろうことも、バリー・コーガンがやると「やめろ!!」となる不思議。
ただこれがだんだん癖になってきます。
上流階級に圧倒されてキョドって小さくなっていたオリバーが、だんだんと周囲を自分の流れに巻き込み始めると、「あれ、バリー・コーガンてエロくない・・・?」と思えてきます。

「かっこよくない・・・?」とは全然思わないのが彼の特異な資質ですね。
本人画像を漁っても「やっぱり美形じゃない」と思いますが、映像になると途端にフェロモンが出る、と思います。


まあラストを迎えるまでこのオリバーという若者は何がしたいんだ状態で展開していくので、どこに着地するのかよく分からないまますっごい人数死んでる・・・となります。
人工呼吸器を抜き取る場面、その遺体に抱き付き腕を回させる場面、その遺体の側で喫煙する場面、がお気に入りです。



バリー・コーガンの演技の源には狂気が必要なんでしょうね。
Saltburnが自分の中で爆発的に良かったので「聖なる鹿殺し」を観返し、バリー・コーガンがメインキャストの「アメリカン・アニマルズ」も観てみました。

いやあ~~一番いいのはSaltburnでした!!
聖なる鹿殺しの静かな狂気、理不尽な呪いを齎す歪んだ正義感、子供ならではの軽薄さ、というのも持ち味そのものですよね。
アメリカン・アニマルズも面白かったです、普通の陰キャによくはまってて。
昔D.J.クォールズという俳優に嵌っていたのですが、なんか才能を隠していそうだけど見た目は全然冴えない奴、という人相が好きなんだなと解釈しています。


でもなんだろうSaltburnの異次元の変態性。
オリバーがフェリックスを好きだというのは本心・・・なのだと思いますが、過去の回想で美しい思い出に交じって憎しみや情交の記憶も挟まれているところを思うと、フェリックスを友達だと思っていたことは一瞬たりともなかったのだろうな~。

重要な嘘がバレてしまったときの(ここも計算なのだろう)狼狽えて情けない感じとか。
用意された衣装が七五三みたいに浮いてしまうところとか。
そんなにオリバーを貶めなくてもいいじゃん、というエピソードが多すぎて、観終わっての爽快感がすごいです。
私はラストのダンスシーンをプロジェクターで部屋の壁に映して一日中観ていたいと思いました。
これが美形の俳優だったらこのキモさは出せないんだよな。
キモいとエロいの融合の妙だなと感動しました。


不安とは別方向にですがエッチな展開はあります。
これほんと良いエロじゃない・・・?私はすごい大好き。
本当に良い映画をありがとうございました。


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