八月の赤い月 2

りくのメッセージはとても丁寧だった。

「みーちゃんさん、はじめまして。私はりくです。お料理が好きなのですね。私は、食べるほうが好きかなあ。きっとみーちゃんさんのお料理はおいしいのでしょうね。いつか食べられたら私は、うれしいなあ。」

「いえいえ、簡単なものばかりなんですよ。味付けをしたら、放っておける  とか、すぐにできるものとか。なんです。」

「そういうものが本当は、とてもおいしいんですよ。だからみーちゃんさんのお料理は、きっとおいしいはずですよ。」

みどりの母は、小さな食堂をしていた。30年以上続いたから、繁盛しているほうだったのだろう。だからか、みどりの作る料理には、手厳しい。プロ並みのチェックを入れてくる。それが、みどりには苦痛なのだ。素直においしいと言ってくれたらなあ。とよく思う。
りくのメッセージを読みながら、、みどりの心は、ふわあと軽くなった。

うん。うん。そうだよねえ。
だよねえ。シンプルイズベスト。

嬉しくなったみどりは、メッセージを返した。

「ありがとう。そう言っていただけるだけで、とてもうれしいの。いつも母から原価計算までされるから。」

月の美しい夜だった。満月だったよなあ。と外に出てみると、赤い月。煌々と輝いていた。

「月の美しい夜ですよ。」
みどりは、メッセージに書き添えた。

「みーちゃんさんは、素敵な人ですね。一度私と会っていただけませんか。私の名前は、川崎凌空です。携帯は、〇〇〇・・・・・」

りくは、すう~っとみどりの心に飛び込んできた。


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