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オフコース&鈴木康博 アルバム「ワインの匂い」その1 昨日への手紙

オフコースと言えば、結成当初からのオリジナルメンバーである小田さんと鈴木さんです。鈴木さんの存在抜きではオフコースは語れないでしょう。というわけで、3枚目のオリジナルアルバム「ワインの匂い」の鈴木康博作品「昨日への手紙」を鑑賞してみましょう。

昨日への手紙

鈴木さんは男性的な視点の曲というイメージが私にはあるのですが、こういう作品もあるんだという印象です。そもそも私はオフコースの歴史と共に歩んできた筋金入りのファンではありません。オフコースが5人になってからのファン(「愛を止めないで」辺り)で、2人時代は後追いで聴いていました。ですから、この曲は意表を突かれたという感じです。

これはもう、ある女性が彼と初めて一夜をともにした後の朝の情景を歌ったものですね。そういう意味では艶っぽい作品なのですが、エロスを感じさせなくて、むしろ爽やかさを感じさせる稀有な作品です。

小田さんの「愛を止めないで」で「いきなり君を抱きしめよう」という歌詞に過剰反応したファンもいたという話がありますが、いやいや、この作品の方がある意味過激だと思います。でも、それを過激と思わせない鈴木さんの手腕に脱帽です。

さて、「初めて一夜を」と解釈したのは、


昨日あなたの
愛に身をゆだねた 
しあわせな時が 
すべてを満たす

の部分です。この女性は何かについて悩むことがあったけど、思い切って昨夜彼の胸に飛び込んだのでしょう。だから満ち足りているのですよね。そして満ち足りているからこそ、


昨日への別れの言葉が言える

のです。思い切って初めて彼に身をゆだねたからこそ、今までとは異なる明確な違いを彼女は感じたのですね。

昨日という時間区分ですが、彼女の意識としては、彼と初めて一夜をともにする以前ということだと思います。そして、朝が明ける時が明日ということですね。

ベッドの中で彼に抱かれたままの彼女。窓の外が次第に明るくなっていく様子に、彼女は生まれ変わったような新鮮な感覚を抱いている、こんな情景が描けます。

そう、あくまでも新鮮な感覚なんですね。だから


ひとはいつも 生きる中で 
新しい友と愛を求めてゆく

の「新しい友と愛」も文字通りの意味ではなく、友達や彼への愛も新しい出会いのように新鮮な想いで接していこうという解釈になると思います。人は生まれ変われるんだよ、ということだと思いますね。


どれ程 昨日に
すばらしい思い出が 
あふれていようと 
朝がくれば

すばらしい思い出があったとしても、それはもう過去のこと。朝がきて、明日になれば、もっとすばらしい出来事が待っている。

逆も同じ。どんなに悲しい思い出も明日がくれば、もっと素晴らしい出来事が待っている。

穏やかで希望に溢れた鈴木作品ですね。1曲めが小田さんの「雨の降る日に」で悲しい雰囲気だったので2曲めの鈴木さんの「昨日への手紙」でホッとできます。


しかし、この彼女が昨日へ別れを告げたい手紙の内容って、どんなものだったのでしょうか。そこまで考えるのは野暮なのかもしれませんね。


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