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Sへの手紙(12)

~子供達の夢のために~

《六回表》

柳田達のチームは仙台駅の近くにある
カラオケルームに週に一度集まる事にした。
お互いの手に入れた情報の共有の場に
しようとの柳田の提案からだった。

「松田からの話しだと、
 SBプランニングは我社の 
 新規事業部の子会社で、
 武田営業本部長の案件らしい。
 という事は、大道常務がらみ
 と見て間違いない」

「厄介な事になりそうな
 匂いがプンプンですね」

工藤が言う通りに、面倒な事になりそうで
改めて皆を巻き込んだ事を
後悔し始めていた。

「そういえば先輩、あの
 広場の共同名義人の栗山という人、
 北海道の人のようですね」

柳田はその名前が、記憶の
遠い何処かにあるのを感じていた。

「先輩、常務と本部長のマターに僕等が、
 首を突っ込んで大丈夫なんですかね?」

工藤が今更ながら心配になり、柳田に尋ねた。

「その辺りは俺から少し」

総務の松田からの発言だった。

「SBプランニングに元総務の同僚がいる
 って話は知ってるよな?
 そいつからの情報。
 ほれっ!」
松田はA4のコピー用紙を人数分配り始めた。

柳田達は資料を何度も読み返し嘆息した。
松田や今宮の調べでは、
大道常務、武田本部長の子飼いである
本田新規事業開発部長が旗振り役らしい。

仕組みは簡単の様で複雑、
複雑な様で簡単みたいな話ではある。

まず我社、柔角商事の新規事業開発部が、
土地遺産相続の相談にのるという話から
上手く土地を手に入れ、
それをまたSBプランニングは柔角商事が
買った値段より高く買い、
差額の何割かを大道常務や武田本部長に
流れているというのだ。

「松田、これの証拠はあるのかい?」

柳田は余り期待もせずに聞いてみた。

「今はウチがSBに売ってるところまでで……」

力なく松田は首を振る。

" やはりな… "
 
柳田は自分達だけではどうしようも
ないのでは、と思い始めていた。
しかし落合地区の人達との約束がある。

" どうするか…… "

何故か柳田はあのグラウンドの男に
会いに行く気になった。


※この物語はフィクションですが、登場する
人物、団体など一部オマージュのため
使用させて頂いています。

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