ハナノハナシ
うちの前の植え込み、というか塀の下の僅かに土の見える場所なのだが、ここにしばらく前から、薄紫の美しい花がたくさん咲き始めた。
さてなんの花だろうなと、しげしげ見てみたのだがよくわからない。
花弁が五枚で桜型、だが葉っぱの形状はどうみてもクローバーである。
そういえば、クローバーはシロツメクサ。
たしかムラサキツメクサという植物もあったはずだなと、Google先生に聞いてみたが、出てきた写真は明らかに花の形が違う。
ムラサキツメクサの花は、シロツメクサがそのまま紫になったような形状だし、葉っぱにいたっては、少し細長くてクローバーらしくない。
では別の花なのかと、いろいろ検索ワードに工夫を凝らしてみる。
結局「クローバーに似た葉の紫の花」という、ストレートな質問で、ムラサキカタバミという植物の画像が出てきた。
なるほどこれで間違いない。
子供の頃から花の名前に疎かった。
小学校の頃、宿題で花の名前を調べるというのがあって、当時道端にいくらでも咲いていた、白い小さな花を摘んできたのだが、我が家に一冊だけあった貧弱な植物図鑑には、その手の雑草は載っていなかった。
あれがヒメジョオンであるということは、大人になって改めて調べ直して知った。
そういうことは、家族とかコミュニティーに誰か詳しい人間でもいないと、誰も教えてくれない。
オニアザミは(正確にはアメリカオニアザミらしい)、数年前から夏になると、駐車場に生えてきて、棘が痛くてほとほと参ったので、これも調べて覚えた。
あと知っているのはタンポポとヒマワリとツユクサとアサガオ。
ヒルガオとユウガオは同じようなものだと思っていたが、今調べてみるとずいぶん違う。
派手な花は咲かないがオオバコというのもあった。
踏んでも枯れないのだと誰かが教えてくれて、なんとなくシンパシーを感じている。
いずれにせよ、空で出てくる花の名前はその程度のものだ。
そうそう、チューリップとかパンジー、ダリアなんかは、花屋で売っているもので、わたしにとって、あれは別のカテゴリーだ。
もちろんそれだって、たいして知らないのだけれど。
そういえば最近、花屋で売っていそうな外見で、しっかり雑草であるという、ナガミヒナゲシという花がある。
繁殖力が強いとか、他の植物を枯らすとか言われて、ずいぶん悪役扱いの植物だが、実際のところ枯れた花はないし、日本に上陸したのはわたしの生まれる前らしいので、いまさら危険外来種だと煽るのもどうなのと思っている。
うちのそばでも数年前から大繁殖していたのだが、さすがに見なれてきて、最近はすっかり春の風物詩である。
つまりはあれだけ毒々しく思えたセイタカアワダチソウが、いつの間にか日本の風景に馴染んでしまったように、ナガミヒナゲシもわれわれの日常になっていき、その名前を知らずとも、あの「オレンジ色の花」として子供の記憶に残っていったりするのだと思う。
何しろシロツメクサもヒメジョオンも外来植物なのだから。
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