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美しさ

性別としては女なので美容の話題は政治経済よりもすっと頭に入る。
継続し、努力するかは別。
生まれ持った美しさもなく、今現在私の容貌は美しいとは言い難い。が、少しでも美しくなりたい女心だけは持ち合わせているようだ。

前々職の企業栄養士だった頃の話である。
県内で日本酒のイベントが開かれ、時の総理大臣はまだ外務大臣の肩書きだった。
試飲はもちろん、立食パーティ形式で行われ、様々なゲストが来るらしい。
その会場のケータリングを会社が任されたのである。下っ端なので会場裏から駐車場まで追い回される。
裏口でオードブル搬入の準備をしている時だった。
県出身の歌手がマネージャーと共に従業員達に挨拶をしながら出演口に向かう為通りすぎた。
その歌手は四度、紅白歌合戦に出ており、県はもちろん他県にもある程度の知名度はある。
しかしそれは少し前の事で、今をときめいているかといえば少し疑問が残り、ゲストと分かっていても残業のモチベーションにはならなかった。

のに私は息を呑んだ。

立派な会場といえど従業員通路は例外なく狭い。
物も雑多に置かれ、すれ違う時はお互いの距離が近くなる。
コロナ前なので顔が隠されてはいない。テレビでは大きく見える理論は本当で、パワフルに歌い上げる歌もあるのにびっくりするほど華奢だった。
ふんわりと波打たせた髪が揺れる度にいい匂いがする。あまりにもびっくりして白くて細いふくらはぎが見えなくなるまでずっと見てしまった。

歌手にとっては仕事の一環で、服もヘアメイクもプロの方の手によるだろう。
芸能界へ身を置く方と一般人を比べる事自体がおかしな話だがそれを差し引いても周りの美人とは段違いの美しさである。

百恵ちゃん世代の母が百恵ちゃんは歌は上手かったけど最初は足も太くてどこか野暮ったかった。
それが芸能界に身を置きどんどん美しくなっていった。と言っていたのを思い出した。

美が必要とされる世界に身を置き日々研鑽する。
もちろんその扉の前に立てるのは持って生まれた才能や美しさがあればこそ。
スタジオの芸能人を見た後に街頭インタビューで写し出される一般人がどこかくすんで見えるのは歩いている世界の違いだろう。

私も一般人としてそれなりの美しさを目指したいとは思っている。
目ざとさ、耳ざとさはあるもののどの情報も継続できてはいない。
どうやらこのままくすんだ一般人として人生が終わりそうである。




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