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算数の常時活動:「みんなでやるから面白い」と子どもが話す計算ゲーム『Jamaica(ジャマイカ)』

 45分の授業の数分を使い、授業のウォーミングアップなどを行う常時活動

 音楽ならわらべうたをやったり、体育なら簡単な運動をしたりしますよね。リズムだったり、体の感覚だったり、継続することでセンスを磨く意図がある常時活動ですが、算数ではどんなことができるのでしょうか。

 一番先に思いつくのは「100マス計算」の取組です。「100マス計算」は賛否両論ありますが、それはそれで効果があったようにも思います。1年間、週3回取り組み、時間を計測して記録します。それを折れ線グラフにまとめるという活動をしましたが、3分以上かかっていた子が2分を切るぐらいまで伸びました。

 ただ、ここでの効果は「計算が早くなった」「集中力が増した」ということであり(この能力も大切です)、「算数のセンスを磨く」とは少し離れたところにあるように思えるのです。

 「算数のセンスを磨く」という観点では、算数の書籍等で算数の授業にナンバーをつけてその数を素因数分解する活動などがあります。例えば、No.100なら「100=2×2×5×5」のようにです。(2の2乗と5の2乗と表現する場合もあります。)しかし、素因数分解は約数を学ぶ必要があるため、5年生の夏以降の取り組みだと考えられます。もう少し間口が広い活動はないものかと思うのです。

 その結果として、主に4〜6年生で私が常時活動として取り組んでいるものがあります。それが「Jamaica(ジャマイカ)」です。

 今回はこの「ジャマイカ」を使った常時活動の紹介です。

ジャマイカ

①「ジャマイカ」の遊び方

 遊び方は簡単です。以下の通りです。

  1. 手の上でコロコロ転がす。

  2. 白いサイコロ(1〜6)を1回ずつ全てを使い。加減乗除(+、−、×、÷)で黒いサイコロの数字を作る。

 例えば、写真上では白いサイコロ「4・6・1・6・3」を使って、黒いサイコロの数「26」を作ります。「4×6+6÷3×1=26」のようにです。サイコロの目によってはできないものありますし、答えが一通りではなく複数できる場合があります。四則演算(加減乗除)ができればできますので、4年生頃から始めることができます。

②  授業での活用方法

 肝心の活用方法は以下のような授業の流れで取り組んでいます。

  1. 通常の学習

  2. 振り返り(文章を記述することが多い)

  3. 常時活動(ジャマイカ)

 常時活動の多くは授業の導入時に取り組むことが多いです。しかし、算数の授業では交流に時間がかかったりする場合も多いので、「時間が余ったらジャマイカ」のようにゆるやかな常時活動として取り組んでいます。

 授業後に振り返りを書いている間にテレビを準備し、ジャマイカをコロコロします。振り返りを書き終えた子どもたちがジャマイカの準備を(なぜか)始めます。準備といっても、自由帳や算数ノートにジャマイカのページを準備するような漢字です。そして、全員の振り返りが終わり次第、ジャマイカを始めます。(慣れてくるとメモを取らなくなります。頭で式を組み立てられる。これも効果の1つです。)

 ぞろぞろとテレビのそばに集まり、真剣な表情で画面を見つめます。答えは分かっても言わず、「できた!」と公言します。近くの人と相談しても、紙に書いても、暗算してもなんでもOKです。「できた!」の声が増えてきたり、時間(数分)が経つと答え合わせです。できた子が説明を始めます。

 上の写真の場合では「まず4×6で24でしょ。」と言い始めると「だよね!」とか「違うやり方だ!」などとコメントしながら聞き、分からなかった子は「おぉ〜〜!」などと反応しています。1つの解き方以外にもあれば「別解」として聞きます。これを時間の許す限り繰り返すのです。これだけです。

 

③「ジャマイカ」を取り組んだ効果

 申し訳ないのですが、授業の終わりに取り組むことを続けた結果として、「計算が早くなった」とか「計算のセンスが磨かれた」などといった明確の効果はここでお伝えすることができません。そもそも「センス」を測定すること自体が難しいことです。

 ただ、子どもたちの様子に変化が見られます。

 まず、「自分で答えを見出したい」と思い始める子どもたちが増えます。初めのうちは「答え教えてよ〜」などと、私や友達に聞く子が必ずいます。しかし、できた時に喜んだり、別解が出されて驚いたりする周囲の様子を見て、答えを聞く子がいなくなってきます。私の経験則では、大体、2単元ぐらい子どもたちと楽しみ続けるとこのような状態になっていきます。

 次に、「答えを言わないで互いの思考を読み取る会話」をするようになります。

「お前、どうやった?」
「俺は24から攻めた。」
「まじか。俺10を作ったよ。」
「え…(沈黙)。あ!なるほどね!」

 このような会話が聞こえてくるようになります。「自分で考える」ということを互いに尊重し合いつつ、解決の方向性だけをやりとりすることで新しい刺激を受けるのです。こうした関係性は、授業の学びでも非常に大切にしたいスタンスです。授業の中で大切にしたいことが、ジャマイカで増幅され、授業の中で還元されていくようなことが起きるのです。


 ここから先は一部の子の話しです。「別解の数」に魅力を見出し始めます。

 授業後も子どもたちは解ききれなかったジャマイカの話を続けたり、休み時間に一緒にジャマイカで遊ぶようになったりします。そうすると、「その数を作れたか」ではなく、「いくつの方法でその数を作れたか」を話し始めるようになります。それを「答えを言わないで互いの思考を読み取る会話」を通して楽しむのです。

「いくつできた?」
「2つ。あ、でも10を作る方法が2つあれば…。」

 などと、式の数はいくつできたか、1つの方向性でできる式はいくつあるか(例えば、「6×4=24」を作った後に26を作る方法がいくつあるか)のやり取りをひとしきりした後で答え合わせをするのです。途中でも「だったら、この式もできるよね!」と解法が広がっていくのです。



 以上のようにジャマイカを常時活動として継続して取り組むことで、子どもたちの様子に変化が見られます。

 その過程で、嬉しいことに「ジャマイカを買って家でもやっているよ!」と報告してくれる子もいますし、「ジャマイカはみんなでやるから面白いんだよ!」と友達に話している子もいました。

 「ジャマイカ」は、気軽に「創発」を楽しむにはもってこいの常時活動です。




以上が算数で取り組む常時活動の紹介でした。

1〜3年生の常時活動も今後紹介できればと思っています。
ありがとうございました。





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