音速のドラ猫7

 

〜訓練空域Bエリア〜

T4〔TGT pork  Altair.standby position 〕
(こちらTGTポーク、アルタイル位置につけ)

樹〔Altair roger 〕

ここは射撃訓練を行う山形沖180kmに位置する訓練空域、通称B空域だ。
現在、僕らは射撃訓練を行なっている。

T4〔standby……go!〕

訓練標的を曳航中のT-4からスタートの合図だ
僕達は3佐を先頭にデルタ体形で飛行している

祐介〔TGT radar contact…range 20nm speed 400kt alt to 20〕
(標的レーダー探知、高度20000ft 距離20nm 速力400kt)

樹〔roger よっしゃ、行くでッ attack!〕

朋也〔了解 リトル、遅れるなよ。〕

理樹「り、了解ッ」

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥンッ

3佐と岡崎1尉に続き、右旋回し33000ft(9900m)から一気に20000ft(6000m)に急降下する。

理樹「うッ…」

豊〔ぐっ…〕

骨が軋むほどのGだ…高度計に目をやると針が物凄い勢いで回っている。
後席の豊も苦しそうに呻いている。
この苦しみから抜け出したい…僕は無意識に操縦桿を引こうとした。その時…

樹〔今、引くなッ バカッ〕

理樹「は、はいッ」

危ないところだった…3佐の声を聞かずに操縦桿を引いていたらと考えると…寒気がした。
危なかった…

理樹「はぁッ…はぁッ」

豊〔大丈夫か理樹?〕

理樹〔大丈夫…ごめん 豊〕

豊〔気にするな。〕

樹〔理樹、冷静さを欠いたら終わりやで。〕

理樹「はい…すいません班長…」

数秒後には目標高度の20000ftに到達し前方に豆粒ほどの標的が見えてきた。距離にして5000m…4500m...3000m...

ブォォォォォォォォォンッ

3佐が射撃を開始する。鈍い音と共に3佐の放った機銃弾が光の帯を弾きながら標的に命中する。全弾標的に当たっていた…

理樹「流石…班長」

豊〔おいおい感心してる場合じゃねぇぞ。ソードの次は俺らの番だぜ〕

理樹「わ、分かってるよ」

岡崎1尉の射撃も終わる、8割の弾が標的の翼に命中していた。

沙都子〔お見事ですわ!ソード〕

朋也〔次、リトルの番だぞッ〕

理樹「は、はい!」

樹〔そんな緊張すなよ。いつも通りにやればええけんね。〕

3佐が緊張をほぐすためにフォローしてくれる

理樹「よし行くぞッ」カチッ

ピッピッピッピッピッピッ

操縦桿のセレクトを機銃モードに切り替え
僕は正面にあるHUDを覗き込み、標的に照準を合わせる…標的は無人機ではあるが気流や曳航機の動きによってジグザグに動く。
なかなかサークルの中に収まらない…

ピッピッピッピッピッピッピーッ

HUD上のサークルが標的を捉え赤色に点滅する…今だッ

ブォォォォォォォォォンッ ブォォォォォォォォォンッ

僕は2回に分けてトリガーを引いた。

理樹「くそッ…」

結果は半分命中の半分は外れていた。

T-4〔TGT porkよりAltair  帰投せよ〕

標的機を曳航するT-4より連絡が入る。

樹〔Altair reader roger . Altair各機帰投する〕

朋也〔了解〕

理樹「り、了解…」

基地に戻る途中、3佐から無線が入る。

樹〔理樹、最初はこんなもんや気にするな〕

朋也〔そうだよ。俺も最初は全弾外して班長に怒られたことがあるぞw〕

沙都子〔意外ですわ…〕

樹〔いや〜あの時の朋也は、下手くそすぎて怒るよりも呆れてたわw〕

朋也〔ひどいッスよ 班長〕

祐介〔そう朋也を責めないであげて下さい。
先輩、アンタは別ですよ…なにせ野生で育ったんですから…〕

豊〔え、そうなんですか!?〕

理樹「初めて知りました。」

樹〔な、訳あるかッ 祐介、基地に帰ったら覚えとけよ〜お前〕

全員〔wwwwwwww〕

先程までの暗い雰囲気はなくなり和やかな空気となる。三沢の街が見えてきた。
基地に帰投後、高崎1尉が全員にジュースを奢って青ざめていたのは言うまでも無い。
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〜数日後〜

ー官舎ー

明日はいよいよ戦技会当日だ。新田原に移動するため早めに床につこうとした時、沙耶がふと呟いた。

沙耶「理樹くん、出発は明日よね?」

理樹「ん?そうだけど…どうしたの?」

沙耶「はい、コレ」

沙耶は一枚の封筒を渡してきた。
その中には…お守り?

理樹「お守りだ。」

沙耶「理樹くんがお仕事頑張れるようにって」

お守りには…〔学業成就〕

理樹「学業成就…?」

沙耶「あ………」

しばしの無言の時間

理樹「さ、沙耶?」

沙耶「何よッ 間違えたのよッ 滑稽でしょッ 笑えるでしょッ あざ笑うが良いわッ ほら、笑いなさいよッ あーっはっはっはっ!って笑っちゃいなさいよッ!」

沙耶はそっぽを向いてしまった…

理樹「落ち着いて沙耶 咲が起きちゃうから」スッ

僕は沙耶を胸に抱き寄せる。

理樹「ねぇ、沙耶 こっち向いて」

沙耶「え?」

口づけを交わした。

沙耶「んッ…」(////)

理樹「……」(////)

こんなにも彼女を…沙耶を愛おしく思ったのは初めてだった。

理樹「僕も今回初めての戦技会メンバー入りで学ぶことも多いからさ、あながち間違ってないんだよ。」ニッコリ

沙耶「うん…ありがとう。」(////)

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明日から始まる戦技会のために主人は荷物を
準備していた。

樹「これでヨシ!」

佳奈多「樹くん明日、出発だったわね?」

樹「せやで〜」

佳奈多「そう…気をつけてね」

樹「ありがとで。ヒロは?寝てしもた?」

佳奈多「ええ、寝ちゃったわ。」

結婚して数年が経つ。
私たちの間には子供はまだ居ないが、葉留佳と真人(井ノ原)の子供である大翔がウチに泊まりに来ている。

佳奈多「……。」

樹「大丈夫やて、そんな深刻な顔せんといてや 死にに行くわけちゃうんやから…」

佳奈多「そうだけど…樹くん…すぐ無茶するから心配なのよ…」

現に私たちが結婚する時も大変だった。
私の旧姓でもある二木家の邪魔があり、結婚する事さえ危ぶまれた。だが、樹くんとリトルバスターズの面々達が奴らを追い払う事に成功
予定通り結婚することができた。

樹「ありがとで。佳奈多」

佳奈多「いいわよ、私は貴方の妻だもの」

樹「あ〜結婚してよかったぁ〜」

佳奈多「恥ずかしい事…言わないでよ」(////)


普段は仕事が忙しくてストレスが溜まりがちでツンツンした嫌な女だが…
彼の前では私も甘々な女になってしまうのだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌朝

〜三沢基地 駐機場〜

戦技会に向け出発する当日…僕達は整備員や他のパイロット達に見送られ誘導路は向かう。

キィィィィィィィィィィィィィィィィィン

整備員「頑張れよ〜ッ」

パイロット「絶対勝てよ〜ッ」

発令士官「頑張れよお前ら〜」

咲「頑張ってね〜 パパ〜ッ」

翔「お父さんッ いってらっしゃ〜い」


豊〔理樹  沙耶さんと咲ちゃん来てるぜ。
手を振ってやろぜ〕

理樹「そうだね。翔くん達も来てるよ。」

豊〔来てくれたのか…ん? アイツめ…〕

豊は翔くんが持っている何かを見て、泣いていたようだ…いい息子さんだなと僕は思った。


火浦〔TWR. this is Altair01 request runway〕
(タワー こちらアルタイル01  滑走路知らせ)

TWR〔Altair01  runway 16R  cleared for take off wind 220 at 3〕
(アルタイル01 風は220°から3kt 滑走路16Rから離陸せよ)

火浦〔Altair01 roger〕

ゆり〔ドラゴン、final check  clear〕

1番機の火浦2佐と2番機の安村3佐が滑走路に侵入する。

火浦〔OK、Altair各機行くぞッ〕

全員〔了解ッ〕

ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ

樹〔それじゃ行くぜ、祐介〕

祐介〔はい!先輩〕

朋也〔よし、行きますかッ〕

結弦〔take off〕

各機が間隔をあけアフターバーナを焚いて離陸していく。次は僕らの番だ。

理樹「行くよッ 豊」グッ

豊〔OK〕

玄武〔準備は良いか?葉留佳〕

葉留佳〔いつでもOKデスよ〜〕

スロットルレバーの出力を80%で固定しフットブレーキを解除、その瞬間35tある機体は加速を始め大空を舞い上がった。


火浦〔Altair01からAltair各機へ、高度10000mまで上昇後編隊を組む。以後、経由地の浜松まではデルタ編隊のまま飛行する。〕

全員〔了解ッ〕

こうして僕らの戦技会が幕を開けた。


         続く…




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