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音速のドラ猫11




〜戦技会最終日〜

格闘戦競技は隊長や玄武達の活躍のお陰で優勝することができた。そして、MVPは東郷1佐に撃墜判定を下した玄武が取ると言うオマケ付き
何にせよ、飛行教導隊に勝つことが出来た。
それだけで十分だった。

〜Nエリア〜

僕達は現在、射撃競技のためNエリアを飛行している。ここで空中管制機によってコントロールされる標的を撃墜しそのタイムを競う。

管制機〔Altair this is ghostaye standby combatposition〕
(空中管制機ゴーストアイ、アルタイル準備位置に付け)

樹〔Altair roger〕
(アルタイル、了解)

祐介〔いよいよですぜ、先輩〕

樹〔せやな〕

朋也〔準備は良いか?沙都子〕

沙都子〔準備OKですわッをーほっほっほっ〕

理樹「よし、やるぞッ!」

豊〔理樹、頑張ろうなッ〕

理樹「うん!」


昨日、玄武達が優勝旗を獲得してきたのだ負けるわけにはいかない。気合いは十分だった。

管制機〔ready…shoot〕
(標的機発射ッ)


ピッピッピッピッ

標的機が発射されると同時に機体のレーダーが目標を探知する。

豊〔いよいよでっせ…TGT vector160  range25 altitude32 Mach0.9〕
  (方位160° 距離25mi
  高度32000ft  マッハ0.9)

理樹「そこそこ速いな…」

樹〔よし、お前らちょいとゲームをしてやろう管制機でリモコンやってる奴と勝負や〕

祐介〔面白そうですね〕ニヤリ

朋也〔どう動くんです?〕

樹〔一回、レーダーレンジからコイツを外す
ほんだら、敵は俺らが追うん辞めた思って反転するからそこから横滑りで撃墜や。順番は俺、朋也、理樹の順で攻撃する。ええな?〕

朋也〔了解ッス〕

理樹「はいッ!」

樹〔よし、attackッ!〕

ゴォォォォォォォォォォォォォォッ

班長の指示通り、一度レーダーレンジから標的を外し反転させ横滑りの要領で標的に接近

ブォォォォォォォォォンッ

班長の放った20mm機関砲の弾は全て標的に当たり標的は穴だらけになった。


ブォォォォォォォォォンッ ブォォォォォォォォォンッ

岡崎1尉は2回に分けて弾を発射
見事に全弾命中で標的は黒煙を吹き始めた。


そして…最後の仕上げは僕だ。

朋也〔次、理樹の番だぞッ〕

理樹「は、はい!」

樹〔そんな緊張すなよ。訓練通りにやればええけんね。気負いはせんでかまんけん。〕

3佐が緊張をほぐすためにフォローしてくれる

理樹「よし行くぞッ」カチッ

ピッピッピッピッピッピッ

操縦桿のセレクトを機銃モードに切り替え
僕は正面にあるHUDを覗き込み、標的に照準を合わせる…標的は無人機ではあるが操縦者の意志によりジグザグに動く。
なかなかサークルの中に収まらない…

ピッピッピッピッピッピッピーッ

HUD上のサークルが標的を捉え赤色に点滅する…今だッ

ブォォォォォォォォォンッ



ドゴォォォォォォォンッ

トリガーを引いた…見事に全弾命中 標的は
爆発し撃墜となった。

樹〔やったやん理樹〕

沙都子〔お見事ですわ!直枝さん〕

豊〔やるじゃねぇか!理樹!〕

理樹「あ、ありがとう…ははは」

まさか自分でも撃墜出来るとは思わなかった。
でも…嬉しい事に変わりはなかった。

樹〔よし、撃墜もできたし。帰るでッ〕

全員〔了解ッ〕

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〜三沢病院〜

唯湖「理樹くん達の部隊が優勝したそうだ。」

沙耶「ほんとッ!? 痛ッッッ」

唯湖「こらこら、無理をするんじゃない。」

沙耶「ごめんなさい。自分の事のように嬉しくて…つい」

唯湖「気持ちは分からんでもないぞ。私の夫の玄武くんもMVPを獲ったようだしな。」

沙耶「そうなのね。おめでとう唯湖さん」

唯湖「よせ、照れるじゃないか。彼らも明日には帰ってくるらしい。」

理樹くんは明日帰ってくる…それだけで私の胸はドキドキした。会える、4日ぶりに愛する人に会える。

唯湖「うむ、今の沙耶くんは女の顔だな」

沙耶「え、ちょ…やだ私ったら…」

唯湖「はっはっはっはっ、君は可愛いな」

沙耶「揶揄わないでよ…もう」(////)

唯湖「うむ、それでは私は戻るよ」

沙耶「ありがとう。唯湖さん」

唯湖「礼なんか良いさ。仕事をしただけだよ。」

そう言い残すと彼女は病室を出て行った。
その時…  

コンコン

沙紀「ママ〜ッ ただいま〜ッ」

大翔「お邪魔します…」

保育園から大翔くんと一緒に沙紀が帰ってきた。
遅れて佳奈多さんも入室してくる。

佳奈多「2人とも廊下は走っちゃ駄目でしょ?」

2人「ごめんなさ〜い」

沙耶「ふふふ、相変わらずね貴方達は」

佳奈多「沙耶さん具合の方はどう?」

沙耶「今のところ大丈夫よ。お腹の子も異常は無いみたいだわ。」

佳奈多「そう…良かったわ。心配したのよ?急に倒れるから…」

沙耶「ごめんなさい…少し無理しちゃった。」

佳奈多「いいわ、元気そうで安心したわ。それより…もう子供の名前は考えたの?女の子なんでしょう?」

沙耶「実はまだなの…理樹くんと一緒に考えたいなって…」

佳奈多「ふふ、良いじゃない。」

沙耶「ありがとう……痛ッッッッッッ」

また、陣痛が始まった…しかも先日よりも強い痛みだ…私はナースコールのボタンを探した。

咲「ママ……」

大翔「大丈夫…ん沙紀ちゃんのお母さん」

佳奈多「沙耶さんッ  待ってなさいッ」ポチッ

すかさず佳奈多さんがナースコールを押してくれたため数秒後には唯湖さん、藤林さん、小毬さんが来てくれた。

唯湖「沙耶くんッ 小毬くん、椋さん 緊急オペの用意をッ!」

小毬「分かった!」

椋「分かりました!先生ッ」

唯湖さんの的確な指示で沙耶さんは分娩室兼手術室へと運ばれていく。

唯湖「佳奈多くん」

佳奈多「え、はい」

唯湖「すまないが、子供達を頼む。あと、理樹くんに連絡をしてくれ。」

佳奈多「分かったわ!」

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〜新田原基地〜

priririri

僕のスマホにある人物から連絡が来る。
画面には班長の奥さんである佳奈多さんの名前が表示されていた。

理樹「佳奈多さん…?何だろう? 
   はい、もしもし。どうしたの?」pi

佳奈多〔理樹、落ち着いて聞きなさい。沙耶さんの陣痛が始まったわ…〕

僕はそれだけを聞いて全てを理解した…
新しい命が産まれてこようとしている。

理樹「そ、それで…容体は?」

佳奈多〔さっき、緊急オペをする事になって今、手術室に運ばれたわ。〕

理樹「そんな…」

僕は全身の血の気が引くのを覚えた。
どうしよう…どうしよう…

その時…

樹「ん?どったの?理樹、蒼い顔して」

理樹「い、いえ…分かった…」

佳奈多〔そこに、うちの人が居るの?〕

理樹「え、あ、うん…」

僕は動揺してうまく声が出なかった…

樹「何かあったみたいやな…理樹、ちょい待っとれよ。すぐに戻るわ」

そう言い残して班長は走り去った。

佳奈多〔大丈夫?理樹〕

理樹「大丈夫…大丈夫…連絡ありがとう。」

佳奈多〔ええ…こんな事しか出来ないけれど〕

理樹「いいさ。ありがとう」

そう言って僕は電話を切った。
その数分後…

樹「お〜い、理樹ぃッ!」

班長が走ってこちらに向かってきた。

樹「ハァハア…年寄りを走らせるんやないで…」

理樹「班長…自分で走ってましたよ…」

樹「そんな事はええんや、理樹 Gスーツ着て装具身につけてエプロンに来いッ」

理樹「え?」

樹「三沢に帰るでッ」

理樹「え、それって…」

樹「隊長と柊甫からは許可もろとる。俺の後ろに乗れッ 三沢に送っちゃる言うてん。」

班長は僕の電話で何かを察知し、あの数分で
お偉方(隊長、副隊長)に僕を早退させるように許可を取ったのだ。
許可を取るのは難航するかと思われたが、隊長も副隊長もすんなりと快諾してくれたそうだ。

理樹「あ、ありがとうございます!」


         続く…

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