音速のドラ猫29



〜霞ヶ関 外務省〜


カタカタカタカタカタ

朱音「流石は元P.O.Oね。情報収集だけじゃなく戦闘もできる…スカウトして正解だったわ。」

私は彼女から送られてきたデータを元に該当するファイルを開いた。

⁇?「よ、千里さん…じゃなかったな天王寺さん調子はどうだい?」

朱音「あら、室長おはようございます。」

この人は私の勤める外務省外事部特別調査室
通称SgSの室長だ。

室長「何か面白いネタでも入ったかい?」

朱音「ええ、先日入国したと見られるMI6の諜報員ですが都内の"ベイトンホテル大手町"に滞在している模様です。」

室長「あちらさんは羽振りがいいんだな。滞在してるのは高級ホテルばっかりじゃないか。」

我が社に比べて待遇の良さに不満を漏らす室長
現に我々が県外、海外に出張に行った際は古い旅館かもしくはビジネスホテルにしか宿泊することが出来ない。不満が出ても仕方ない

⁇?「仕方ないですよ室長、我々の予算は大蔵省が握ってるんですから。」

室長「宮沢君に諭される日が来るとは…」

謙吾「そんな大袈裟な…」

彼は宮沢 謙吾君 私と同級生で入庁も同期だ。
高校、大学時代は剣道に打ち込んでおり主将も務めていたそうだ。沙耶とも面識がある。

朱音「ふふ、久しぶりに聞きたいわね。素振り中の貴方の"まーんッ!"って掛け声」

謙吾「やめてくれ…アレは結構黒歴史なんだ…」

朱音「奥さんとはうまくやってるの?」

謙吾「ああ、上場だ。家事育児と毎日頑張ってくれている。佐々美には頭が上がらない。」

朱音「確か高校時代の同級生なのよね?女子ソフトボール元日本代表なのよね?」

謙吾「そうだな。インカレでも優勝して国体も出場しているからな。」

朱音「凄いわね…」

謙吾「俺なんかより凄いさ。それはそうと、沙耶から送られてきたデータはどうだったんだ?」

朱音「特にこれと言って…でもMI6だけじゃ無いわね。FBIだけならまだしも…CIAまで入ってきてるわね。」

謙吾「厄介だな…」

室長「ついでに面白い情報がある。陸幕2部とDIHが手を組んだ。」

朱音「自衛隊が遂に殲滅に乗り出しましたか…血で血を洗う戦いになりそうですわね。」

謙吾「日本に入ったCIAはC.O.Oですか?」

室長「そうだね。今のところP.O.Oが入ったと言う情報は無いね。」

謙吾「そうですか。」

俺には室長や天王寺に言えない秘密がある。
外務省のSgSに勤務する傍ら、俺にはもう一つの顔がある。それは… 内閣情報調査室(通称:内調)の情報官の顔…これは妻である佐々美にも秘密にしている。

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〜三沢基地BFR〜

樹「気をつけッ 礼ッ」

全員「おはようございますッ」

柊甫「おはよう。それでは気象BFを始めよう。気象士、よろしく頼む。」

気象士「分かりました。おはようございます。気象BFを始めます。まず、昨日から続いた雨ですが…昼頃には上がり、Dエリア及びGエリアを除く空域で晴れる予報です。」

コツン

僕の後頭部に何かが当たる感触があった。

理樹「ん?何…?」

豊「俺らの訓練空域だけ雨男が居るのかな?」

理樹「どうして?」

豊「天気悪い日に限って俺らだけ空域が荒れてたりするじゃん」

理樹「偶然なだけじゃ…」

玄武「あながち当たってるかもな、お前らの時だけ荒れてるもん」

葉留佳「そうですネ〜」

祐介「こら、お前らちゃんと聞いてないと大事なこと聞き逃すぞ?」

千景「そうよ。自分達には関係ないからって蔑ろにしたら後で痛い目見るわよ?」

4人「は〜い」

祐介「返事だけは良いんだよな…」

高崎1尉が半ば呆れ顔で前を向く。

豊「ところでよ、イビー」

揖斐谷「何です?緑川2尉」

豊「この隊には慣れたかい?」

揖斐谷「まだ着任して1ヶ月しか経ってないので何とも言えません。」

豊「そ、そうか…」

玄武「相変わらず取っ付きにくい奴だなwもっと楽にしていいのに」

理樹「玄武が緩すぎるんだよ…色々と」

玄武「んな事ねぇよ。」

樹「お前らさっきから五月蝿い。そんなに騒ぎたいなら号令調整やるか?」

玄武「げ…勘弁してくださいよ…」

理樹「すみませんでした…」

樹「ふんッ」

こうして気象ブリーフィングが終わり、各自の飛行前ブリーフィングに移る。

コンコン

理樹「失礼します。」

豊「しま〜す。」

玄武「しゃすッ」

葉留佳「失礼しま〜す♪」

揖斐谷「失礼しますッ」

樹「お、来たか。ま、座りまい」

着席するよう副隊長が促す。
全員着席後…

樹「改めて、おはよう。今日の訓練やけど…」

副隊長から本日の訓練メニューが発表される…
今日のメニューは2対3の戦闘訓練だ。

メンバーは

1番機 熊岡3佐

2番機 音無1尉 & 風ちゃん

3番機 僕と豊

4番機 玄武と葉留佳さん

5番機 揖斐谷3尉 & 高崎1尉

メンバー表を見て僕はあることに気がついた

理樹「あれ?副隊長は単独ですか?」

葉留佳「あ、本当ですネ」

玄武「どういうことですか?先輩」

結弦「副隊長が単独の代わりに揖斐谷の後席を祐介さんがやるんですね。」

祐介「そうだ。今回の訓練は2対3の戦闘訓練だがあくまで揖斐谷の練度向上を兼ねている
新入りが相手だからって油断しないように」

理樹「了解」

玄武「分かりました。」

結弦「了解です。」

樹「それじゃ、各チームごとに飛行前ブリーフィングやってくれ。」

全員「了解ッ」


樹「揖斐谷、お前は俺のウィングマンや絶対に俺から離れんなよ?」

揖斐谷「分かりました。」

樹「祐介、揖斐谷のサポートは頼んだで。」

祐介「分かりました。しかし、先輩」

樹「ん?」

祐介「単独ですけど…何で飛ぶんですか?」

樹「そりゃアレよ」

祐介「まさか…」

樹「そう、そのまさかやで」

揖斐谷「何の話です?」

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祐介〔危険すぎますッ〕

隣から高崎1尉の怒鳴り声が聞こえてきた。普段は温厚な高崎さんが声を荒げるのは珍しい…

葉留佳「何かあったんですかネ?」

玄武「さあ?」

結弦「……。」

風子「どうしました?音無さん」

結弦「何でもないよ。さ、俺たちは俺たちの作戦を練ろう。さっきも先輩が言ってたけど相手が新入りだからって油断はできないぜ」

豊「そうですね」

理樹「今回の作戦は…びっくり作戦で」

今日の訓練の編隊長は僕が務める事になった。
右翼に音無先輩(カナデ)、左翼に玄武(ピクシー)が付く。

結弦「ほう?びっくり作戦?」

玄武「レーダーを使って敵を欺く作戦です。」

風子「具体的にはどんな事をするんでしょうか?」

理樹「風ちゃんは機体同士が近づいて飛んだらレーダーにはどう映ると思う?」

風子「レーダー画面上では1つの光点になり映し出されます。性能の良いレーダーなら尚更です」

理樹「当たり、そう言う事だよ。」

結弦「なるほど、3機が密集して飛ぶのか?」

理樹「定石通りならそうする予定でした。」

結弦「でした?何故過去形なんだ?」

理樹「僕なりに新たに作戦を立案しまして…僕とピクシーが最初に密集して飛びます。その間にカナデは少し離れた位置で待機してください」

結弦「ほう、何か考えがあるんだな?」

理樹「はい。びっくり作戦 其の2です。近づいてきた敵機を3機で一気に叩く。カナデには反転してもらって遠ざかって行くフリをしてもらいます。」

結弦「なるほど、任せておけ。」

理樹「お願いします。」

飛行前ブリーフィングを終えた。
ブリーフィング後に高崎1尉に怒鳴った理由を聞いたが…はぐらかされるだけで理由は教えてくれなかった。
しかし、その理由も駐機場(エプロン)に出てから分かった。

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〜病室〜

椋「失礼します。体調はどうです?佳奈多さん」

佳奈多「痛みは今のところ無いですね。」

椋「良かったです。先生もこのまま行けば予定日通りだろうって」

佳奈多「そうですか。」

椋「不安ですか?」

佳奈多「ええ、初産ですし…彼が傍に…」

椋「旦那さんは航空自衛隊のパイロットさんですもんね…不安になりますよね。」

佳奈多「はい…ところで…」

椋「はい?」

小毬「んにゃ?」

鈴「なんだ?」

佳奈多「何故、小毬さんがここに居るの?鈴さんも…」

クド「私も居るのです!わふ〜ッ」

椋「病院では静かにお願いします…」

クド「わふ…すみませんなのです…」

小毬「だいじょ〜ぶ、佳奈ちゃんは1人じゃ無いよッ」

鈴「そうだぞ!あたし達が付いてるッ」

クド「そうなのですよ〜」

佳奈多「小毬さんは兎も角…鈴さん、クドリャフカ 仕事はどうしたのよ」

鈴「あたしは休みだ。園長に行ったら休ませてくれた。」

クド「私もなのです。私は訓練も佳境に入ったので上から休暇を取るように言われて日本に来ました〜 わふぅ」

佳奈多「そうだったの…」

椋「素敵な方々ですね」ニッコリ

佳奈多「ええ、そう思います。ふふ」

その後、彼女達は暫く病室に留まった。

鈴「それじゃ帰るからな 佳奈多」

小毬「佳奈ちゃ〜ん またね〜」

クド「グッバイなのです!佳奈多さん!」

佳奈多「ええ、今日は来てくれてありがとう。気をつけて帰ってね。」

この数時間後… 私の元に訃報が届くとは誰が予想していただろうか…


         続く…






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