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音速のドラ猫08

 音速のドラ猫8

〜新田原基地〜

ここは風光明媚な宮崎県に位置する新田原基地
以前までは…
第301飛行隊 と飛行教導隊(アグレッサー)
が在隊していたが両隊とも転籍となり現在は第23教育飛行隊と百里から転籍してきた305飛行隊が在隊している。

男「今年はどんな派手な機体が来ますかね?」

男2「さぁねぇ 派手な奴が多いんじゃない?」

この人は…305飛行隊副隊長の
池脇 太一3等空佐 TACネーム(ジョニー)
百戦錬磨の鷲乗り(イーグルドライバー)で
以前は那覇の304飛行隊(天狗隊)に勤務

ゴォォォォォォォォォォォォォォッ

微かに聞こえるジェット機の音

太一「お、来たみたいやな。」

男「お、那覇の204だ。」

太一「この距離からよく見えるな、ケンジ」

俺は柳本 ケンジ 2等空尉TACネーム(ケン)
普段は眼鏡をかけているが、視力は5.0ある。
先祖はマサイ族では無い…

ケンジ「え、普通じゃ無いんですか?」

男「普通じゃねぇよ。俺の知り合いで飛行機オタクはケンジともう1人居たな…」

ケンジ「吉ングじゃん。どったの?」

春彦「吉ング言うなッ」

彼は吉野 春彦 2等空尉 TACネーム(キング)
孤高のナルシ…ゔっふん…孤高のウルフを自負している痛い奴、だが腕は確かだ。
俺と同期で今回の戦技会メンバーだ。

ケンジ「だって、キングって呼ぶの何か嫌だもん。それで、さっき言ってた例の飛行機オタクって誰なんだ?」

春彦「航学の時に緑川って居たろ?」

ケンジ「あぁ、一期下に居たね。確か、入校式に間違えてマッパ(素っ裸)で来た奴だよな?」

春彦「そうだな。ヘルスも覚えてるだろ?」

佐貫「それは空の上だけにして下さいよ…」

ヘルスと呼ばれた彼は…

佐貫 慎太郎 3等空尉 TACネーム(ヘルス)
高校時代に自称「地獄を見てきた男」として鳴らしていたらしいが、同じ高校出身の緑川に実際の事を聞いたところhells(地獄)と health(ヘルス)を間違えた事からこのTACネームとなった…www 戦技会メンバーには入っていない。

春彦「はっはっはっ、ヘルスはヘルスだ。」

佐貫「酷いッスよ!吉ングさん!」

春彦「だから、俺はキングだッ!」

太一「相変わらず仲良いなコイツら」

ケンジ「ですね〜」

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥン

204飛行隊のF-15Jが上空をフライパスする。

太一「お〜、勇ましいな胴体に鷲の横顔、尾翼にゃコブラを捕まえた鷲か。」

ケンジ「カッコいいですねぇ」

春彦「俺たちの機体も負けちゃいねぇな」ニヤリ

吉野が腕を組み不敵な笑みを浮かべる。
俺は後ろにある機体を見た。

胴体や主翼部分は至って普通の塗装だが、尾翼だけは違った。なぜなら…
勇ましい侍のシルエットが描かれておりその下には「打倒毒蛇」と書かれていたからだ。

太一「分かってると思うが…俺たちは強い
1位以外は負けだと思え。いいな?」

3人「はいッ」

昨年の戦技会優勝部隊である305飛行隊
〔常勝梅組〕は伊達じゃない。

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〜日向沖 上空〜

DEP〔Altair 01 this is HYUGA DEP 〕
(アルタイル01 こちら日向DEP)

火浦〔this is Altair01 〕
  (アルタイル01だ。)

DEP〔De  cleare direct with iron〕
(ironに向かって進路を取って下さい。)

火浦〔roger〕

隊長と日向DEPが無線交信する。
進路をiron(宮崎沖)に向かうように取る。
その後の交信で僕らの滑走路侵入はshiro
(304飛行隊)の後となった。

火浦〔Altair各機、shiro着陸後に滑走路に侵入する。遅れるなよッ〕

全員〔了解ッ〕

豊〔新田原は久しぶりだなぁ〕

理樹「そうだね。僕も教育飛行隊以来だよ。」

玄武〔あれ?理樹って元はF-15だったん?〕

葉留佳〔意外ですネ〕

理樹「そうだけど…玄武達は?」

玄武〔俺と葉留佳は元RF-4J乗りだからねぇ〕

RF-4Jとは米空軍の偵察型F-4を日本の航空自衛隊向けに改良した機体で第501飛行隊にて運用されていた。普通のF-4EJと違って迷彩塗装を施した機体だ。

樹〔F-4の訓練は百里だからなぁ〜〕

祐介〔そうですね〜〕

玄武〔そういえば、熊岡3佐達も元は妖怪乗り
 (ファントムライダー)でしたね。〕

葉留佳〔基地の集合写真に載ってましたネ〜〕

樹〔おうよ。〕

柊甫〔こーら、お前ら着陸体勢に入るから。真面目にやれよ〜〕

3人〔うぃ〜す〕

そして、僕らは新田原の地へ降り立った。


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〜新田原基地 駐機場〜

樹「おいっす太一」

太一「久しぶりやなぁ樹。お前、114飛行隊に居ったんか。意外やな」 

樹「せやねん、302飛行隊がファントムの運用辞める言うから転属したんじゃ」

太一「なーる。」

春彦「お知り合いですか?副隊長」

太一「お、吉ングか」

春彦「吉ング、言わないでくださいッ」  

ケンジ「あれ?この流れさっきも見たよな?」

佐貫「ですねぇ」

樹「お宅の機体も中々勇ましいスペマやなぁ」

太一「去年の覇者じゃけぇな。お前のとこやって猫に髑髏咥えさせるとか…まるっきりアグレスに対する挑発やんけw」

樹「まぁなw 柊甫の案やけんなw」

太一「やっぱアイツの仕業か、にしてもちょっと背が伸びたんちゃうか?理樹、豊」

理樹「お久しぶりです。池脇教官」

豊「お久しぶりです!」

太一「よせやい。俺はもう教官じゃねぇよ」

池脇3佐は僕達が教育飛行隊に在籍していた頃の訓練教官でその頃のあだ名が〔鬼の池脇〕で
学生内では安村3佐の次に恐れられていた。

理樹「いえ、教官はどこまでいっても僕らの教官ですよ。ね、豊?」

豊「そうですよ!あの頃の教官は…鬼の…やっぱ何でもないです…」

太一「?」

佐貫「あの頃は地獄見てたもんな…」

理樹「うん…」

豊「うん…」

その時…

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥン    ゴォォォォォォォォ

轟音と共に、緑、黒、茶、青、灰、水色の各機体が降りてくる。僕たちに緊張感が走る…

太一「来たかコブラ…」

樹「ワクワクするなぁ」

今回の格闘戦競技で仮想敵機役を務める飛行教導隊…通称 アグレッサー 彼らは各飛行隊から選出された選りすぐりの腕利きばかりだ。

ケンジ「そういや、アイツも今はアグレス所属だったよな…」

理樹「アイツ?誰の事ですか?」

春彦「お前達は知らないのか?津田の事」

理樹「津田……津田1尉の事ですか?」

豊「津田1尉って元306じゃ無かったっけ?」

理樹「確か、空自最年少の飛行教導隊のメンバーだって聞いたことがあります。」

ケンジ「そ、その津田が今回来てるのさ」

噂に聞いたことがある…
津田タカトシ1等空尉 TACネーム(アルス)
306飛行隊勤務時にアグレッサーを圧倒しその年に部隊を優勝に導いた。その後、アグレッサーにスカウトされ各部隊からは天空の覇者として恐れられている。

理樹「手強い相手ですね…」

豊「やっぱりおっかない人なんですか?」

ケンジ「いやいや、そんな事ないよ」

春彦「確か、アイツは酒に弱かったよな?同期会の時だって…1人だけ」

ケンジ「あぁw ベロンベロンに酔ってて最終的にカエデさんに迎えに来てもらってたなw」

3人「えぇ……」

なんだか仕事中とプライベートでのギャップが凄そうな人だと僕は思った…多分、ここにいる豊や佐貫くん達も同じことを考えてるのだろう

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〜三沢基地 官舎〜

沙紀「ねぇ、ママ」

沙耶「どうしたの?沙紀」

沙紀「パパはいつ帰ってくるの?」

沙耶「今週末には帰ってくるわよ〜 あ、痛たたたたッ…」

沙紀「ママ、大丈夫?」

沙耶「大丈夫よ…大丈夫…」

日に日に陣痛の周期が短くなってきている。
もうすぐかしらね…私はカレンダーを見ながら予定日を確認した。予定日は来月だ…産まれるにはまだ早い…

沙紀「痛いの痛いの飛んでけ〜」

沙耶「…」

沙紀「大丈夫…? ママ?」

少しだけ痛みが和らいだ様な気がした。

沙耶「ふふっ…大丈夫よ。少しだけ楽になったわ。ありがとう」ニッコリ

沙紀「うん!どーいたしまして!」

私は精一杯の笑顔で愛する愛娘に微笑えんだ。

ガチャ

小毬「さっちゃん、大丈夫ッ!?」

鈴「大丈夫か!?沙耶ッ」

沙紀「小毬お姉ちゃん、鈴お姉ちゃん!」

沙耶「小毬さん…鈴ちゃん…来てくれたのね…ありがとう…私は大丈夫よ…痛ッ」

鈴「沙耶ッ、と、とりあえずベッドへ」

小毬「そ、そうだねッ」

沙紀「ママ…」

その後、鈴ちゃんと小毬さんの迅速な救護により私は事なきを得た。
もうすぐ…新たな命が産まれる。



         続く…

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