音速のドラ猫10
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
千歳基地の201飛行隊が離陸していく。
胴体には熊の引っ掻いた爪、尾翼には吼える熊
勇ましい…
樹「お、Bear fightersが行ったか。」
理樹「班長、なんですかそれ?」
豊「べあふぁいたーず?」
樹「そっか、理樹達は知らんやったな。米軍内の飛行隊では俗称があるの知ってる?」
理樹「いまいち分かりません…」
豊「もしかして、こういう事ですか?」スッ
豊がスマホの画面を僕達に見せる…
そこには見覚えのある米海軍飛行隊の髑髏のエンブレムにVF-84〔Jolly Rogers〕と記載されている。
樹「そうそう、こういう事やで。つまりそれぞれの部隊の俗称って事やな。」
理樹「あ、なるほど。」
豊「なるほど。それじゃ俺達は…」
理樹「Cats Fighter?」
豊「何かダセェな…」
樹「いや、Tomcatersだ。」
2人「トムキャッターズ…?」
樹「つまりドラ猫飛行隊って事やな」
理樹「なるほど…ドラ猫」
何となく分かった…僕達が使用している機体は
F-14DJ戦闘機 通称(トムキャット)だ。
そこから命名されたのだろう。
樹「さ、俺らもそろそろ準備しよや」
2人「は〜い」
現在201飛行隊が競技中だ。その次に小松のドラゴンこと303飛行隊そして……僕らは3番目にアグレスと闘う事になっている。
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ー 三沢病院 ー
沙耶「んッ…」
沙紀「ママぁ…」
あたしが目を覚ますと泣きそうな目で沙紀が私の事を見ていた。
沙耶「沙紀…ここは…」
小毬「私が勤めてる病院だよ〜」
沙耶「小毬さん…ッ」
小毬「まだ、無理しちゃ駄目だよ。」
ガラララ
女性「体調はいかがかな?沙耶くん」
女性医師が入ってくる。黒髪の綺麗な女医だ
私は彼女を知っている…なぜなら、理樹くん達と同じリトルバスターズに所属していた。
松原(来々谷 )唯湖さんだったからだ。
沙耶「唯…さん。」
唯湖「うむ、顔色は良さそうだ。小毬くん達が居なければ危ないところだったぞ」
沙耶「子供は…お腹の中の赤ちゃんはッ」
小毬「沙耶ちゃん、だいじょ〜ぶ。お腹の子も命に別状は無いって」
沙耶「そう…良かった。理樹くんには…」
唯湖「まだ伝えていない。彼は昨日から戦技会とやらに参加しているそうじゃ無いか」
沙耶「何故…それを?」
唯湖「私の夫も航空自衛官なものでな…理樹くん達と同じ部隊なのだよ。」
沙耶「そう…だったわね。」
唯湖「とにかく、しばらくは安静にしたまえ
沙紀くんについては私と小毬くん、鈴くんで面倒を見よう。君は養生に専念する事だ…」
そう言い残して唯湖さんは病室を出て行った。
入れ替わるように1人の看護師がカートを押しながら入ってきた。
女性「おはよう御座います。今日から直枝さんのお世話をさせて頂く 藤林です。よ、よろしくお願いしますね」ニッコリ
恥ずかしそうに挨拶をするその看護師は…
藤林 椋と名乗った。ショートヘアでお淑やかな女性だった。
沙耶「よろしくお願いします。藤林さん」
椋「はい!よろしくお願いしますッ」
こうして、私の入院生活が始まった。
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〜太平洋上空〜
文人「く、クソッ」
僕は今…青迷彩を施したアグレッサーを追っている。確か…副隊長の園田2佐か
園田〔さぁ付いてきなさい…〕
大西〔エデン、貴方は相変わらずですね…
優しそうに見えて、やっている事は鬼〕
園田〔鬼とは心外ですね。アビス私は相手に敬意を持って接してるんですよ。〕
大西〔ははは…相変わらず食えない人だ。今も我々に噛みつこうとする鴨が1匹〕
園田〔いいでしょう。相手してあげます〕
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舞斗〔アダム、深追いするなッ〕
文人「し、しかしッ副隊長!今追えばッ」
咲夜〔落ち着きなさい、アダム 今追うと敵の
思う壺ですよッ!〕
文人「分かってますよ!だけど、僕だって…僕だって男だ!ここで諦めるわけにはッ」
その時…隊長から通信が入る。
神田〔オリバー01からオリバー各機へ 6SQのF-2が全機撃墜された。繰り返す、援護目標が全て撃墜された…〕
文人「そんな…」
大志〔すみません隊長…〕
悟〔すみません…自分が居ながら…〕
A班のメンバーは意気消沈していた。
神田〔気にするな、これが今の俺たちの実力
次に向けて一から訓練積み直しだ。オリバー各機 基地へ帰投する。〕
全員〔了解ッ〕
僕達は基地に向けて進路を取った。
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ー114飛行隊ー
火浦「よし、やるか。」
樹「ですね。」
柊甫「全員集合ッ」
豊「ん?何やるんすか?」
玄武「さあ?」
葉留佳「何ナニ〜何が始まるんデスか〜?」
沙都子「何をやるんですの?朋也さん」
朋也「まぁ、見てなって」
僕たちは離陸前に、集合して喝を入れた。
火浦「今日は優勝できなくとも、全力を尽くして頑張ろう!」
柊甫「我々も例の如くアレをやりますか?」
火浦「もちろん!」
結弦「久しぶりだな。こうやって喝入れるの」
理樹「そうなんですか?」
祐介「いつも、こんな感じで喝入れするのさ」
樹「まぁ、ええ機会やから覚えときんさい。」
火浦「俺たちは〜ッ!」
一同「強いッ!」
僕達は呆気に取られていた…だが、遅れをとるまいと次の掛け声から一緒に出した。
火浦「俺たちのモットーは何だッ!?」
一同「やる時は〜ッ やるッ!」
火浦「今日の晩飯は〜何だッ!?」
一同「回らない高級お寿司〜ッ!
火浦隊長の奢り〜ッ!」
火浦「そうだ〜ッ! っておいッ!
勝ったら奢ってやる。各自搭乗ッ!」
一同「了解ッ!」
会場「wwwwwwwwww」
会場に笑いが起きる。これが我ら114「Tomcaters」(ドラ猫)なのだ。
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〜太平洋上空〜
俺達は現在、太平洋上空の訓練空域である
(通称Nエリア)で競技をしている。
葉留佳〔jingle request TGT position〕
(ジングル、敵位置を知らせ。)
葉留佳が地上の迎撃管制官と連絡を取る。
jingle〔TGT vector090 range40
altitude30 at2 Mach1.0〕
(敵2機 方位090 距離40mi 30000ft マッハ1.0〕
葉留佳〔roger〕
玄武「葉留佳、jingleは何て言うてた?」
葉留佳〔敵2 マッハ1.0 距離がそこそこ近いネ…距離40miです。〕
樹〔う〜む、40か…〕
祐介〔意外と近いですね…〕
火浦〔まぁいいさ。Altair各機、ミーティング通りに動け!悟られるなよ!〕
全員〔了解ッ〕
jingle〔Argō take off vector180 range25〕
(アルゴ離陸 方位180 距離25mi)
Argō:築城基地第6飛行隊のF-2
火浦〔よし、ジャック、ソード付いて来い〕
柊甫〔了解ッ 用意はいいか?日向〕
日向〔いつでもどうぞッ〕
朋也〔了解ッ 行くぞッ沙都子〕
沙都子〔はい!ですわッ〕
隊長がジャックとソードを連れてF-2の護衛に向かう。
樹〔よっしゃ、俺たちもやるでッ〕グツ
祐介〔了解、先輩ッ〕
結弦〔いつでも行けますよッ〕グツ
風子〔風子参上ッ!〕
玄武〔行くぜッ 葉留佳〕
葉留佳〔はいヨ〜ッ〕
班長率いる俺たちは敵機方向へ機首を向けた。
jingle〔TGT vector160 at2 time1240 〕
(敵2機 方位160 会敵予想時刻1240)
俺は腕時計を見る…現在1238…と45秒
会敵まで後1分足らずか…
こちらの作戦を悟られなければ良いが…
jingle〔TGT vector 160 at 2
range15 Mach1.2 〕
(敵2機 方位160距離15mi 速力マッハ1.2)
徐々に近づく、目視圏内ギリギリまで近づいて反転し護衛部隊の援護に向かう。
この作戦がアグレスに通用するか…
樹〔7.5…7.0……6.0 よし今だッ!〕
班長の声と共に俺たちは反転し全速力で護衛隊の方に向かう。
タカトシ〔なっ…反転した!?ゼウス、ゴジラ そっちに敵が向かった!繰り返すそちらに…〕
美森〔アルスまずは、落ち着きなさい。
こちらも敵を追うわよ。〕
タカトシ〔了解ッ〕
アグレッサーの機体が瞬時に反応し、俺たちを追いかけてくる。俺は編隊の最後尾のため必然的に囮になりそうだ…
玄武「チッ、俺らが囮か…うまく逃げて下さいよ。班長、先輩…」
葉留佳〔玄武くんッ 背後に敵機ッ〕
玄武「分かってるッ もう少しだッ」
長谷川〔チッ…やられた。〕
タカトシ〔逃がしませんよ…〕
美森〔ゼロ、アルス 追いなさいッ〕
タカトシ〔了解〕
長谷川〔分かってるッ アルス お前は右から
俺は左から追い込むッ〕
タカトシ〔了解ッ〕
うまい具合に作戦通りにアグレッサーを焚きつけて引きつける事に成功した。
今頃、援護班の方でも隊長と副隊長が大暴れしてるんだろうな…
樹〔よっしゃ、二段構えの反転ッ!〕
結弦〔了解!〕
玄武「り、了解ッ」
俺たちはまた反転し、先ほどの敵機へ向かう。
cobra〔TGT 反転 そちらへ向かいます。〕
タカトシ〔何だと…〕
長谷川〔チッ…熊岡さんめ…ちょこまかと…〕
美森〔舐めた真似をしてくれたものね…〕
鷹島〔cobra 反転してくる 敵は何機だ?〕
cobra〔TGT at2〕
(敵は2機)
美森〔ゼロ 、アルス一気に叩くわよ!〕
長谷川〔了解!〕
タカトシ〔了解ッ〕
樹〔よし…ええ感じに引っかけれたな。〕
結弦〔我々も油断せず行きましょう…〕
風子〔敵機レーダー探知 3機ですッ〕
玄武「しかし、これだけ引っ付いて飛べば…」
葉留佳〔レーダーには映りずらいですネ〕
樹〔奴らのレーダーにゃ俺たちは2機にしか見えてない筈や。目視圏内に入り次第ブレイクする!結弦は左 玄武は右側面から追い込めッ〕
結弦〔了解、風子 目視圏内までは?〕
風子〔後3miです!〕
15秒後…
玄武「TGT tallyho!!」
(TGT 視認ッ)
樹〔ブレイク now!〕
俺たちは散開し班長の指示通りに俺は右から
アグレスに突撃した。
この時、俺は1機の白黒迷彩のアグレスに追われることとなった。 東郷1佐だ…彼女は空自パイロットの中でも最強の存在だろう…
東郷 美森1等空佐 TACネーム(シェイミ)
航空自衛隊初の女性戦闘機パイロットで最年少の1等空佐だ。操縦の腕前も確かであり
306SQ→201SQ→飛行教導隊副隊長→隊長
そして…超絶美人だ。
美森〔あれは…松原君ね…良いわ…相手に不足はないわねッ!〕
玄武「チッ…よりによって東郷さんかよ」
俺たちのドッグファイトが始まった。
〜援護サイド〜
ゆり〔追われてますッ。チャフ発射〕ポチッ
バッバッバッバッバッ
赤外線探知の空対空ミサイルを撹乱するためのチャフがばら撒かれる。
火浦〔ブレイク!ブレイク!〕
築城のF-2は5機の内、1機が撃墜された。
朋也〔残るは4機か…手強いな。〕
逃げ場がない、しかもあの茶色のアグレス…1機だけオーラが違うように感じる…
松井〔ソード、お前の相手は俺だ!〕
朋也〔やっぱ、お前かゴジラ…〕
沙都子〔追われてますわッ〕
柊甫〔ソード!〕
日向〔ジャック、ソードが追われてますッ〕
柊甫〔分かってるッ 隊長と逃げた魚を追うぞ〕
日向〔り、了解ッ〕
松井〔逃すかよッ ソード〕
朋也〔チッ…相変わらずしつこい野郎だッ〕
1機を岡崎に任せて、俺と隊長は別の1機を2人で挟み撃ちにする作戦に出た。
〜妨害サイド〜
長谷川〔どうした?音無よそんなもんか?〕
しつこく1機のアグレスが追いかけてくる。
俺はタイミングを見計らう…
結弦〔チッ…風子 今だッ〕
風子〔はいッ!〕ポチッ
バッバッバッバッバッ
長谷川〔なろッ!逃すかッ〕
一瞬だが相手の動きが怯んだ 俺はその瞬間を
見逃さなかった…
結弦〔行くぞッ〕グッ
すぐさま機体を反転させアグレスの背後を取る
そして…
ピッピッピッピッピーッ
結弦〔TGT KILL〕
(目標撃墜)
風子〔やりましたねッ〕
長谷川〔クソッ…03より隊長へ撃墜されました。帰投します。〕
美森〔了解、ご苦労様〕
長谷川〔隊長こそ、ご武運を…〕
美森〔ありがとう〕
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥン
俺が撃墜した1機は反転して基地の方へと進路を取った。
玄武「くそッ」
葉留佳〔まだ付いて来てますッ!〕
俺は追い込まれていた。この人には生半可な技は通用しない…ならばアレをやるしかないか…
樹〔フォックス2〕
祐介〔了解、チャフ発射!〕ポチッ
バッバッバッバッバッ
タカトシ〔チッ…チャフか!〕
美森〔アルスッ!ここは一旦引くわよッ〕
タカトシ〔隊長!こんな所で引けるわけ無いでしょうッ!〕
美森〔アルスーッ!〕
樹〔かかった! グッバイ…〕ピピピピピーッ
班長がアグレスをロックオンした。1機撃墜
タカトシ〔クソッ 冷静さを欠いてしまった…〕
祐介〔TGT KILL〕
(目標撃墜)
美森アルスがやられた…か〕
鷹島〔ヤバいですね。追い込まれてます〕
玄武「行けるッ!」
葉留佳〔これなら…勝てるッ〕
美森〔そうは問屋が卸さないわよ。〕
ロックオンしようとした瞬間に避けられてしまった…なんて挙動だ…そして、背後を取られそうになる。俺は必死で追いかける。
東郷1佐は急降下を始めた
ゴォォォォォォォォォォォォォォッ
玄武「逃がしませんよ…東郷さん。」
葉留佳〔うッ…うぇッ…凄いG〕
鷹島〔ふんッ…良いだろついて来い!〕
美森〔ホーク、後ろをよく見ててちょうだい〕
鷹島〔了解ッ〕
玄武「まだ逃げるか…クッ…」
俺は逃げる東郷1佐を追いかける。空戦下限高度は10000ft(約3000m)だ…現在5600m まだ降下する…ギリギリでやるつもりか。
美森〔ついて来なさい…〕ビリビリビリ
玄武「どこまで逃げるつもりだ…ッ」
葉留佳〔ウッ…グッ…〕
凄いGだ、並の人間なら気絶してるだろうな。
僅かに敵が減速した、俺はそれを見逃さなかった。すかさず減速し引き起こしに入る。
敵も同じタイミングで水平飛行に入った。
操縦桿を機銃モードに切り替える。
俺は機体を左右に振りながらロックオンを避けていた。
東郷1佐は、俺の背後に付こうとしている。
玄武「今だッ!」
東郷1佐がロックオンしようとした瞬間、俺はシザー運動(マニューバ)を使い、敵機の背後を取る。
美森〔なッ…嘘…〕
鷹島〔何!? バカな…〕ピロロロロロロロロロ
玄武「ロックオンです。TGT KILL」
(目標撃墜)
俺は東郷1佐を撃墜した。
タカトシ〔嘘だろ…あの隊長が!?〕
樹〔よーやったな!玄武ッ!〕
俺が東郷1佐を撃墜したと同時刻
jingle〔築城6SQのF2が某国軍艦撃沈、
繰り返す某国軍艦を撃沈。〕
結弦〔結局、3機堕とされてしまったか…〕
柊甫〔こちらの被害状況は?〕
朋也〔俺がキルされました…すいません。〕
祐介〔謝るな。あの状況下では仕方ない〕
朋也〔あぁ…ありがとう祐介〕
祐介〔どーって事ねぇよ。〕
火浦〔しかし、残数5機は上出来だ。約束通り今夜は回らない寿司だ!〕
一同〔いぇ〜い〕ピユーピユー
俺はまだ東郷1佐を撃墜できた実感が湧いていなかった。手が震えている。
葉留佳〔大丈夫デスか?玄武くん〕
玄武「大丈夫だ…何でもない…」
火浦〔よし、お前ら帰るぞッ〕
一同〔了解ッ!〕
俺たちは基地に向けて進路をとった。
続く…
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